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満員電車の空席 r+3914

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高校一年生のとき、電車で「ヤバそうなもの」に出くわした話

高校に入学したばかりの俺は、片道二時間の遠距離通学をしていた。通学時間のほとんどを電車の中で過ごす毎日。朝早い電車はいつも混んでいて、座れたらラッキー、立ちっぱなしなら地獄みたいな状態だった。

高校生とはいえ、二時間立ちっぱなしは辛い。だから、俺は必死で座れる席を探していた。空いている席を見つけるのはもちろん、座っている人が降りる気配を感じ取ることに神経を集中させたりもした。今思えば滑稽な話だが、当時の俺にとっては、通学中に座れるかどうかが死活問題だった。

座れれば、読書もゲームも、さらには試験直前の勉強までこなせる。そのため、席を確保することには並々ならぬ熱意を注いでいた。

そんな俺が気付いたのは、ある特定の席がいつも空いているという事実だった。詳細を話すと特定されそうだから控えるが、それは朝六時半ごろの私鉄の電車。三号車の前にあるボックスシートの一角だ。そのボックスシートの右下に位置する席だけが、なぜかいつも誰も座らない。奇妙なくらい、空いたままだった。

俺は「ラッキー」と思い、それからというもの、その席を自分専用の特等席のように使い始めた。他の乗客が席を争っているのを横目に、悠々とそこに座って読書を楽しんだりしていた。

しかし、そんな快適な日々はある日突然終わりを告げることになる。

七月の中旬、その日も俺は特等席に座っていた。期末テストも終わり、今日はのんびりと漫画でも読もうと、「鋼の錬金術師」の単行本を手に取った。もしかすると、これが間違いだったのかもしれない。

席に座ってしばらくすると、背後から何かが聞こえ始めた。ボソボソと何かを呟くような音。最初は、他の車両から漏れてきた音か、ただの空耳だと思った。しかし、それは間違いだった。

その音は徐々に大きくなり、次第に生温かい空気が首筋を撫でるように感じられるようになった。夏の通勤電車のエアコンが効いているはずの中で、生温かい風なんてあるはずがない。それでも、俺は空調の不調か何かだと思い込もうとした。

だが、次の瞬間、首筋に爪で引っ掻かれるような鋭い痛みを感じた。それと同時に、背後からのボソボソ声が一気に近づいてきた。振り返るのが恐ろしかった。だが、俺は目の前の現実から目を背けることができなかった。

背もたれのすぐ後ろにいたのは、「人のような何か」だった。そいつには目も口もなく、真っ白でつるつるの顔。まるで髪のないタマゴのようだった。マネキンのように見えるが、それよりも圧倒的に異質で、不気味だった。

さらに驚くべきことに、そいつは口がないはずなのにボソボソと何かを呟き続けていた。そして、そいつの手が俺の肩に伸びようとしていた。真っ白な指先。その中で唯一、人差し指だけが血のように赤く染まっていた。

その瞬間、全身が凍りついた。怖さで息をするのも忘れるほどだった。全身が汗でぐっしょりと濡れ、もしかしたら漏らしていたかもしれない。だが、とにかく逃げなければと思い、俺は叫び声を上げながら席から飛び出した。

リュックを掴み、周囲の乗客を押しのけながら、俺はひたすら別の車両へと駆け込んだ。七号車、八号車と逃げ続け、やっと次の駅で電車を降りた。振り返る勇気はなかった。そいつが追いかけてきているような気がして、振り向けなかった。

その日は親に仮病を使って早退した。帰宅後、俺が座っていた制服の背中部分を見て、言葉を失った。席に触れていた部分が、どす黒い血のようなもので濡れていたからだ。

それ以来、俺はその電車に乗るのをやめた。

そして、満員電車の中で空いている席を見つけても座ることができなくなった。

今でも、あれは一体何だったのかと思う。家族も友人も誰も信じてくれず、むしろ俺が何かやらかしたのではないかと疑われた。だが、後年になって霊感のある知り合いに話したところ、そいつは言った。

「ヤバいもののたまりやすい場所というのは、どこにでもあるものだ」

そして、霊感の薄い俺のような人間は、そういう場所に近づいても気配を感じ取れないのだと。ただ、普通の人なら何となく嫌な感じを覚え、自然と避ける場所に、俺は気づかずに入り込んでしまったのだろうと。

以来、電車で空いている席を見つけても、座る前に一瞬立ち止まってしまう。あの光景が、未だに頭から離れないからだ。

(了)

[出典:180 :本当にあった怖い名無し:2015/07/14(火) 08:02:27.36 ID:T5EfJPrt0.net]

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