短編 洒落にならない怖い話

満員電車の空席【ゆっくり朗読】3600

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高校一年生のときに、電車でヤバそうなものに出くわした話

180 :本当にあった怖い名無し:2015/07/14(火) 08:02:27.36 ID:T5EfJPrt0.net

当時ピカピカの新高校生だった俺はやたら遠距離通学してて、二時間ある通学時間のうちほとんどは電車に乗って過ごしてたんだよ。

もちろん二時間立ちっぱなしというのは高校生といえど中々キツい話で、おまけに朝だから電車も混む。

つまり必死こいて空いてる席を探したり、すぐ降りそうな奴の前に陣取って相手が降りるのを祈ったり願ったり、とにかく席に座ることを考えてた。

今思い返せば中々アホらしいことではあるんだが、当時の俺には席に座れるかどうかは中々の死活問題だったよ。

本も読めるし携帯もいじりやすい、家から持ち出せばゲームだってできる。

テスト当日まで勉強してなくても、朝の二時間でどうにかなることも多かった。

だから俺は、それはもう本気になって席に座ろうとしてた。

しかし俺は入学してから少し経って、満員電車の中でなぜかいつも空いてる席があることに気が付いていた。

詳しく話すと特定されそうだからやめとくんが、大体朝六時半の電車で、神奈川の私鉄。
朝は通勤通学用にロングシートの3ドアしか走ってないけど、車両の一番前と一番後ろにはボックスシートがあるやつ。

もちろん同じ路線でも走ってる電車には色々種類があるから、ボックスシートがないやつもあった。

だけど俺がいつもその空いてる席を見かけるのは、三号車の前にあるボックスシートだった。

平日六時半にその電車に乗って三号車に行くと、そのシートの右下にある席だけ、なぜか誰もいっつも座ってない。

しめたもんだと思いながら、気付いた後の俺はいつもその席を使ってたよ。もう特等席気分。

他のおっさんとか、汗臭そうな運動部らしい連中が、必死こいて席に座ろうとしてる最中、俺だけ悠々と着席するわけ。

んで、ちょっと気取って「羊たちの沈黙」とか読んじゃうわけよ。気分がいいったらありゃしない。

そんな感じで半年が経って七月の十五日くらいになった。

いつも通り俺は特等席に座って、期末テストも終わったし今日は漫画でも読むかなーと、当時はまってたハガレンの単行本を取り出した。

もしかしたら、それがいけなかったのかもしれない……

席に座ってから程なくして、後ろから何かボソボソした音が聞こえてきた。

最初は聞き間違いか、隣の車両に頭がおかしい奴がいるのかと思ってたが、どうやらそうじゃない。

首の後ろあたりから、何やら生温かい空気と一緒に、そのボソボソした音が響いてくるんだ。

エアコンついてる夏場の電車に乗ったことがあるならわかると思うが、まず通勤電車だろうがクーラーってガンガンかかってて、そんな生温かい風なんて送られるはずがない。

それでも俺は、まだ空調か配管みたいなものの不良か何かと思ってた。

そしたら、首の後ろが突然痛くなった。爪で引っ掻かれたみたいな感じ。それと同時に、後ろから聞こえるボソボソした音が急に大きくなった。

というより音じゃなかった、あれはボソボソ声だった。間違いなく誰かがボソボソボソボソ呟いてるんだ、何言ってるかは分からないんだけど。俺のシートの背もたれで。誰もいないはずなのに。

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それで振り向いたら、件の「ヤバそうなもの」を見てしまった。

もしかしたら、そいつは睨んでたのかもしれない。

とにかく、そいつは俺のことを見つめていた。

見つめていた、って書いても、やっぱり変かもしれない。

俺にはそうとしか思えなかったけど。

そいつは人の形をしていたけれど、目がなかった。口もなかった。

頭はタマゴみたいに髪の毛も何もなくて、真っ白で、ワレモノみたいなつるっつるの肌をしてた。

服屋のマネキンみたいな感じ。でもマネキンよりずっと怖かった。

だって鼻すらない。真っ白でつるつるの人のような何かが、俺と背もたれの間から浮き上がってた。

それでボソボソボソボソ言ってくるんだ。口もないのに。

何言ってるか分かんないけど、とにかく俺に話しかけてきて、しかも俺の肩に手を乗せようとしてた。

顔と同じつるつるの白い指先は、その人差し指だけ赤かった。

それで、合点が行った。

正直、ものすごくビビった。漏らしそうだった。

全身汗でぐっしょり濡れてたし、もしかしたらションベンもちびってたかもしれない。

叫びながら席から飛び上がって、膝の上にあるリュックサックも鷲掴みにして、一目散に他の車両へ逃げたよ。

立ってるおっさんとかみんな突き飛ばしてた。

七号車か八号車あたりまで逃げたところで、丁度次の駅についたらしくて、俺は縋るような思いでドアから飛び出した。

振り向くとか無理だった。そいつが追いかけてきているとしか思えなかった。

遅刻確定だったけれど、あんなのと同じ電車に乗るのはもうごめんだった。

結局その日は親に頭が痛くなったって電話して早退した。

別にその後何があったというわけでもなく(家に帰る時は訝しむ親に頼んで背中に塩を投げてもらったけど)、次の日は普通に学校へ行った。

けど、その日に着てた制服はしばらく使えなかった。

席に接してた部分が全部、俺のものじゃないどす黒い血で濡れきってたから。

以来、俺は朝六時半に出るその電車には乗っていない

満員電車の中で空いてる席を見ても座れなくなった。

あれは一体なんだったんだろうと今でも思う。

親に話しても信じてくれないし(むしろ俺がヤバいことしたんじゃないかって疑ってきた)、当時の友達に話しても茶化されるだけだった。

ただ大人になってから、「それなりに見える人」みたいな知り合いができた。

そいつに話してみると、曰く「『ヤバいもの』のたまりやすい場所」というのは、本当にどこにでもあるらしいんだと。

んで、俺は霊感が薄いタイプの部類だから、そういうところに近づいても何も感じない。

けれど普通くらいの霊感があると、そういうところでは何となく「嫌な気配」っていうのを覚えるらしい。

だから、普通の人はそういう席を避けて座らない。ヤバいやつと出くわしたくないって、なんとなく思うから。だけど俺みたい霊感の薄い奴には、そういうことがわからない。

そして時々、そういうところには「本当にヤバいやつ」がふらりと立ち寄ったりもするらしい、とのこと。

満員電車の空席には気をつけた方がいい……

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1435237510/109-208]

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