短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

花嫁が十三の時に亡くなった父からの手紙【ゆっくり朗読】2700

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式では、出席できなかった親族の手紙を代読することがあります。

719 名前:名無しさん@お腹いっぱい。投稿日:2016/08/18(木) 22:41:31.04

そのときに依頼されたのは、花嫁さんが十三歳の時に亡くなられたお父様の手紙。

『結婚が決まったときに渡して欲しい』とお母様に託されていたのだそうです。

初顔合わせの時にその手紙をお母様からお預かりし、結婚式当日まで目を通すことがなかった花嫁さん。

こちらとしても責任重大です。

おごそかに、娘を思う父親の気分になって読み上げました。

「久しぶりだね、手紙からだけど話しかけることができてうれしい。

結婚式には父がいなくて申し訳ない、一緒にバージンロードを歩きたかった。

(中略)

これから健吾君と幸せになってくれ、父の分まで人生を楽しみなさい」

感動で涙を拭う花嫁さん、ひときわ大きく起こる拍手。

「精一杯がんばります」と宣言する新郎さん。

読み終わった私は何気なく、手紙を開いたまま、花嫁さんの前に置きました。

花嫁さんは、なつかしそうにお父様の筆跡を目で追っています。

ところが、途中で花嫁さんの視線が凍り付きました。

それから挙動不審の花嫁さん。

はた目で見てもぎこちなく式は進行し、やがておひらきに。

私は不思議に思い、ひかえ室に退出された花嫁さんに理由を聞きました。

花嫁さんが新郎さんとお付き合いを始められたのは二年前。

近所の幼なじみではなく、地元の佐賀県から遠く離れた北海道の大学で知り合われたそうです。

ちなみに十三歳の頃、同級生には健吾君はいなかったし、お付き合いされている男性もいなかったそうです。

つまり亡くなったお父様は、新郎さんの事を知りえたはずがないのです。

けれどその手紙には、確かにお父上の直筆で、新郎さんの名前が書かれていたのでした……

(了)

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