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中編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

禁句

更新日:

私はある俳句の会に入ってるのですが、そこで体験した実際にあった話です。

2012/02/02(木) 22:59:36.84 ID:LmP+DcSK0

私は中学校の国語の教諭です。

部活動は担当していないので土日は時間があります。

それで人に勧められたこともあって地域の俳句の会に入りました。

まわりは仕事を引退したおじいちゃんがほとんどで、女性会員は数人しかおらずずいぶんかわいがっていただきました。

月二回集まって互選の句会をし、年に二回吟行(ぎんこう)の会がありました。

吟行といっても師範役の大学の講師の先生が大型バンを運転してくださり、日曜日に日帰りできる近場に行くだけです。

その吟行は五月の連休の一日で、朝から晴れていてとても気持ちのいい陽気でした。

その回の出席者は九人だったと思います。

私は車の中で水筒のお茶を飲んだりしながら朝の集合時に言われた席題(せきだい)を考えていました。

席題は「立夏」で、これで一句、それから五月の自由題で一句俳句を作って昼食をとり、今日行く神社の集会所を借りて句会をする予定でした。

神社は自分たちの住む町から車で二時間くらいのところで、御社名は秘しますが、主な御祭神は菊理媛命(くくりひめのみこと)です。

大きな神社の駐車場で車を降り社殿までの道すがら皆で歩きながら、ときどき立ち止まって野草の名前を教えていただいたりしました。

そしてメモを出して俳句を考え始めましたが、「立夏」は難しい題ではなくどうにかなりそうでした。

神社の神域に入って手水をとりお参りしようとしたとき、突然空が暗くなり西のほうにものすごく太い稲光が走りました。

そのとき近くにいた句会のメンバーの新沼さんが「うお」と大声を上げたかと思うと鼻と口から黒っぽい血を噴き出し目をむいて硬直したようになって真後ろに倒れました。

「ドーン」という雷の音がして、その瞬間に参道の脇にある小さなお社の観音開きの戸がすべて開きました。

その直後に大粒の雨がものすごい勢いで降ってきました。

師範の先生がこちらを見て駆け寄ってきました。

そして私ともう一人の方と三人で、新沼さんを社務所の中に運び込みました。

新沼さんの様子をみてすぐに救急車が呼ばれ、一緒に来ていた奥さんが一緒に乗り込んで病院に向かいました。

その後師範は社務所の神官の方と話していましたが、雨の中から新沼さんの手帳を拾って戻ってきました。

その手帳を神官に見せると、神官はあっと驚いた顔に変わりました。

その後は皆で昼食を食べ、句会は取りやめしにて帰りました。

神社から離れると雨はあがり元の初夏の空になりました。

師範は携帯で新沼さんの奥さんと連絡をとっていましたが、新沼さんはそのままお亡くなりになったそうです。

次の句会で師範から驚くべき話を無理に聞きかせていただきました。

あの神社にはとても古くから伝わる忌み言葉があり、それは特別まがまがしい意味ではないのですが、日常的にはまず使われることのない古語で、神域の中でその言葉を発したり書いたりすると、たちどころにその者には神罰がくだるのだそうです。

新沼さんが倒れたことと天候の急変でふとこの言い伝えに思い当たった神官が、新沼さんの俳句手帳を見ると、そこには作りかけの俳句とともに、はっきりとその言葉が記されていたのだそうです。

私はこの話について当時は真偽は半信半疑でしたが、国語を教えるものとして言霊というものはあると考えておりましたので、今ではこのお話を信じかけています。

(了)

 

笑う裂傷女 [ 黒史郎 ]

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