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心理的瑕疵物件 r+3738

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これは、ある不動産会社で働いていた元同僚から聞いた話だ。

彼は二十代のほとんどを「心理的瑕疵物件」に住みながら過ごしていたという。理由は資格取得のため、会社が用意した社員寮に住むことになったからだ。ただ、その寮というのが少々特殊で、家賃が会社持ちな代わりに、住む物件は過去に人が亡くなったような心理的瑕疵のある場所ばかりだった。

心理的瑕疵物件――事故死や自殺など、不幸な出来事のあった部屋。これらは次の入居者が一年以上住むことで「報告義務」が消える。彼はその「一年目」を担うことになったのだ。

まず最初に住んだのは東京・豊島区の集合住宅。独身中年の男性が自殺した部屋だった。電気関係の異常が主だったと聞いている。
夜中の1時から3時にかけて、照明が不規則に明滅したり、テレビやラジオが雑音にまみれたりすることが頻発。スイッチを切ったはずの電化製品が突然動き出し、家全体が薄い不安定な膜に包まれたようだった。

念入りに調査を依頼し、電力会社や行政の電波取締車両まで出動したが、原因は掴めなかったという。
最終的には「御祓い」の力を借りて静寂を取り戻したが、物理的な異常の説明はついに得られなかった。

次に住んだのは埼玉県M市の古びた分譲団地。ここは一人暮らしの老人が孤独死した部屋だった。
深夜、何の前触れもなくシャワーが全開になり、蛇口を閉めたはずの水がポタポタと滴り続ける。玄関やベランダに、明らかな外的要因がないのに水たまりが広がる。水廻りだけでなく、布団の上に何かが乗ったような重さを感じ、寝息のような音が耳元で囁かれることもあった。
「フゥゥゥフゥゥゥゥ」というその音の低さは、実際の耳で聞くというよりも脳に直接響いてくるようだったという。
御祓いを二度依頼してやっと落ち着いたが、彼の中で奇妙な違和感は残り続けた。

最後の物件は埼玉県S市の小さな一戸建て。ここが彼の中で「最悪」だったという。十ヶ月前にまたしても孤独死があったらしいが、電気や水道といった目に見えるトラブルはなかった。代わりに、「見えてはいけないもの」が終始姿を現したのだ。

朝、洗面台で顔を洗い、髭を剃ろうと鏡を見ると、自分の顔のすぐ横に老人の顔が映っている。
昼間の静かな時間、読書や勉強をしていると、家中のあちこちで「コツコツ」という足音がする。
夜、眠りに落ちかけた頃、枕元にふとした圧迫感を覚え目を開けると、白髪交じりの老人がじっと覗き込んでいる。

四度もの御祓いでやっと気配は薄れたが、彼はこの部屋だけは最後まで「慣れる」ことができなかったそうだ。

その後、彼は別の部署に異動になり、心理的瑕疵物件から解放された。それでもふとした時に、あの鏡越しの目や枕元の気配を思い出すという。

彼は、今も言う。「なんとか生き延びたけど、安い家賃には理由があるんだってことは、身をもって学んだよ」と。

[出典:562 :本当にあった怖い名無し:2005/08/14(日) 16:44:24 ID:B0+L6X1q0]

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