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造形師と眷属の夜 r++475

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造形、特にミニチュアフィギュアを作るのが趣味な自分は、気分が乗ると徹夜で作業に没頭することがよくある。

あの日もそんな感じだった――忘れもしない3月5日。

その日はとにかく調子が良く、気づけば朝日が昇るまで集中していた。造形が一段落したところで、乾燥がてら一息つこうと目をやった先に、ジャンクパーツを入れた箱が目に入った。何気なく覗き込むと、妙に気になるモデルが一つ紛れている。

形状は、まるでお寺にある阿吽像のような鎧を纏い、頭部が猿のようなもの。ただし、肩から袈裟懸けに切られたように割れており、噛み合わせも酷くガタついている。見覚えがあるようでないような、不思議な感覚。あまり考えず、「前に落として壊したやつか?まぁ、今ノってるし直すか」とそのまま作業に取りかかった。


修復を始めると、どんどん違和感が増していく。素材が妙なのだ。樹脂でもホワイトメタルでもなく、グレイスカルピーに近い感触。自分で作った記憶もなければ、同好の士から譲り受けた覚えもない。それにしても、信じられないほどディティールが細かい。甲冑の細工や表面の質感は職人技そのものだ。

「まぁ、あるものはあるんだし」と深く考えずに作業に没頭し、なんとか割れや欠けを修復。乾燥させるため固定し、布団に入る頃には昼が近かった。

どれくらい眠ったのか、ふと騒がしい音で目を覚ました。床を見ると、猿だ。モデルの姿そのままの猿がドタバタと暴れている。
「これ夢だよな?」と思いつつ眺めていると、猿がこちらに気づいた。腰のあたりを指さし、目で何か訴えてくる。よく見ると、腹から脇にかけて丸太にぐるぐる巻きにされている。どうやらそれを外してほしいらしい。

寝る前に固定したモデルと同じ状態だ。「まぁ夢だしな」と軽い気持ちで、鋏を手に巻きを切って解放した。「これでいいだろ」と布団に戻ろうとしたところ、袖を引っ張られる。「まだ何かあるのか?」と振り返ると、肩の袈裟切りの部分を手でさすりながら、何度も頭を下げている。

土下座に近い勢いで感謝の意を示すその姿に、さすがに妙な気分になった。「直って良かったねぇ」と軽く話しかけ、今度こそ布団に入った。


次に目を覚ましたのは夜だった。時計を見ると、9時を過ぎている。「夢だよな、あんなの」と苦笑しながら、乾燥中のモデルを確認しようと作業机に向かう。だが、モデルは消えていた。固定に使った棒と鋏が、作業机から離れた場所に落ちているのを見て、言葉を失った。

「いやいや、そんなわけないだろ……」混乱しつつも、深く考えても仕方がないと無理やり納得。珍しい体験として片付けることにした。


数日後、東北大震災が発生した。自分は関東に住んでいるが、激しい揺れに驚きつつ、避難後は職場の復旧作業に追われた。その夜、両親の田舎である福島が震源地に近いと知り、家族一同テンパリながら親戚に連絡を試みたが、当然つながらない。

幸い、二日後には全員の無事が確認できたが、最後に連絡が取れた伯母から、奇妙な話を聞かされた。

 

地震直前、伯母は炬燵に引きずり込まれたらしい。そして目の前には猿の姿。外に出ようとしても離してくれず怖かったが、直後に地震が発生。気づけば猿は消え、炬燵に隠れていたおかげで瓦礫やガラスから逃れられたという。さらに、「肩から斜めに毛が禿げた猿だった」と聞き、自分の体験が脳裏をよぎった。


後日、親戚の片付けを手伝いに行った際、地元のお坊さんが自分を見るなり驚き、そそくさと逃げたこともあった。理由を尋ねる間もなく去られてしまったが、「猿がまだ後ろにいたのか?」と少しモヤモヤしている。

そして、奇妙な体験を経て、まさかの縁談が持ち上がる。幼い頃に親しくしていた家族の長女と再会し、祖母が「猿のおかげで助けられた」と話す夢を見たことで、お互いの距離が急接近。現在は結婚を前提にしたお付き合いに至っている。

[出典:522 :本当にあった怖い名無し:2011/06/01(水) 03:59:01.21 ID:oKS+UyF/0]

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