小学校時代からの友人の話。
彼は少し奇妙な人物で、例えば普段から人と違う行動を取ったり、不思議なことを考えたりすることが多かった。中学に進学してから、共通の趣味を持つことがきっかけで次第に親しくなっていった。
ある日、その友人が「幻想郷のような異世界に行く方法を知りたくないか?」と切り出した。興味本位で聞いてみると、彼は「紙を4等分し、それぞれに血で星の印を描き、その中央に血で『世界』と書き、その下に行きたい世界の名前を書く。そしてそれをドアの四隅に貼るんだ」と言った。
その後、夏休みに入り、特に変わったこともなく過ごしていた。しかし夏休みが明けると、友人は学校に来なかった。もともと不登校気味だったこともあり、「またか」と思っていただけだったが、一週間経っても連絡はなかった。最終的に彼の家を訪ねることにした。
家に行くと彼の母親が出迎えてくれ、友人も普通に家にいた。しかし彼の雰囲気はまるで別人だった。以前の彼は落ち着きがなく、少し乱暴なところがあったが、今は穏やかで礼儀正しい態度を見せていた。さらに、話し方も以前の砕けた口調から、驚くほど丁寧で慎重なものに変わっていた。違和感を覚えた私は部屋の中を観察してみたところ、離れの倉庫の扉に4枚の紙が貼られているのを見つけた。その紙には『世界 無間地獄』と記されていた。
友人はもともと自殺願望があり、親からの虐待を受けていると打ち明けたことがあった。彼は、日常的なストレスや孤独感を抱えており、それが彼の精神的な不安定さに繋がっていたようだった。無間地獄という場所から帰ってこれるはずがないと私は思った。その後、学校に来るようになった「彼」は、まるで別人のようだった。本当の彼は今も無間地獄で苦しんでいるのではないか、と私は考えている。というのも、彼の性格や人格がまったく変わってしまっていたからだ。
しばらくして、友人の変化について何か手がかりがないかとネットを探していると、掲示板で似たような体験談を見つけた。
投稿者によれば、彼の中学でも似たような事件が起こったという。夏休み明けに5人ほどの生徒が突然不登校になり、その出来事について投稿されていた。詳細を尋ねると、投稿者は当時の状況を次のように説明した。
彼のクラスにはリーダー格のA君と、その周りにB、C、D、そして投稿者自身がいた。夏休み前、Bが「近くの廃校に肝試しに行って、その動画をアップしよう」と提案し、Aが「じゃあこの5人で行こう」と話をまとめた。しかし投稿者は塾の夏期講習があり、参加できなかった。
代わりにEというクラスメイトが参加することになった。Eは学校で唯一の神職の子で、少し陰気な性格だった。4人は「もし何かヤバいことが起きたらEに祈祷してもらおう」と冗談半分で言っていたが、投稿者はEと4人が親しいとは思っていなかったため、当時はそのことが不思議だった。
肝試し当日の夜、グループのLINEで「めっちゃ面白かったぞ、お前は行けなくて残念だったな」と送られてきて、投稿者は羨ましく思った。しかし、それが最後のメッセージとなり、それ以降は誰も既読をつけなくなった。
夏休みが明けると、A、B、C、Dの4人が不登校になっていた。投稿者は唯一の手がかりとしてEを問い詰めたが、一週間後にEも不登校になってしまった。Eのクラスメイトによると、EはA、B、Cにパシリにされていたため、それが理由で学校を休んでいるのではないかと言われていた。
その後、学校内のいろいろな場所で、4等分された紙が見つかったという。それには記号のようなものが描かれており、投稿者は当時はただ不思議に思っていただけだったが、今ではそれが「地獄に落とす儀式」だったのかもしれないと感じている。
私の友人のケースと、この掲示板での体験談が重なるようで、まるで共通の「異世界に行く儀式」が存在するかのように感じざるを得なかった。特に、紙を4等分して血で記号を書くという具体的な行為や、行方不明者が戻ってきた後に性格が変わるといった点が、どちらのケースでも一致していたためである。異世界に行くというのは、単なる願望に過ぎないのか、それとも何かもっと恐ろしい力が働いているのか。私には分からない。ただ確かなのは、「彼」はもう私が知っていた友人ではなかったということだ。
[出典:70 :本当にあった怖い名無し:2021/08/04(水) 17:53:54.23 ID:/vvQh2LC0.net 2BP(1000)]