短編 怪談

水辺のヤクザ【ゆっくり朗読】4000

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お久しぶりっす。

304 名前:ノブオ ◆x.v8new4BM [sage] :04/10/01 19:58:18 ID:pUeNCmB3

今日は、知り合いのコウさんに聞いた話をカキコしようと思います。

コウさんっていうオッさんは、俺とは会社が違うんですけど、

下請け同士で同じ現場になることがちょくちょくあるんです。

四十五才くらいで、嫁一人子供二人愛人一.五人を養う大黒柱。

真冬にランニング一丁で臭い汗流しながら仕事するワイルドなガイですが、

嫁には全く頭が上がりません。

それはもう、見てて気の毒になるくらい見事に。

そのコウさんが待ち時間に近寄ってきて

「おまえ怖い話聞きたがってるらしいな?」

俺が頷くと

「それやったら、ワシ十五年くらい前に気色の悪いモン見たことあるわ」

おお!ありがとうコウさん!今度飲みに行きましょか?

「いや、帰り遅なったら怒られるから」

・・・そうっすか。

十五年前、コウさんは山中の谷で砂防ダムの工事をしていました。

真夏だったので七時頃に現場事務所へ戻って、そこから車で真っ直ぐ帰宅。

・・のはずでしたが、車に乗り込む前に重大な事実に気付きました。

昼間乗っていたバックホウの中に弁当箱を忘れてる!

そのまま帰れば、嫁にアホ呼ばわりされて怒られて翌日は弁当抜きの上に、

二日越しのクッサイ弁当箱を洗わされるはめに・・・

慌てて車で工事現場にまで戻ることにしました。

現場に着いた頃には既に真っ暗でした。

バックホウの影が砂防ダムの向こう側に見えています。

ダムの方へ歩き出したコウさんの耳に妙な音が届きました。

バシャッ バシャッ バシャッ

手の平で水を叩くような音。

どうやらダムの上流側から聞こえてきます。

素面の時は人並み以上にチキンなコウさんは、この時点でバック寸前。

しかし、嫁の恐怖を原動力に恐る恐る先に進みました。

ダムの上流側には、工事中に水を堰き止めるために土のうが積んであって、

その向こうは水が溜まって池みたいになっています。

その土のうの上に、人みたいなモノが居ました。

ツルリと毛のない全身に模様があって、スキンヘッド。

そして(たぶん)全裸。

そいつは、土のうの上に動き回って棒きれで水面を叩いています。

(や・・ヤクザや!)

なぜかコウさんはそう思い込みました。

(ヤクザが魚採ってる!)

邪魔をしたら怒られると思って、ソロリソロリとバックホウの方へ。

(せやけど、あれでどうやって魚採るんやろ?)

コウさんの頭の中には、好奇心がむくむくと湧いてきました。

で、結局バックホウまであともう少しというところで、

どうしても気になって恐る恐る音の方を見てしまったんです。

真っ黒な水面一杯に、猿や鹿など獣の死体が浮いていました。

謎のヤクザは、その死体を棒で叩きまくっています。

時折、その棒を舐めているようにも見えました。

「うわああああ!」

コウさんが思わず声を上げると、謎のヤクザは動きを止めてこっちを見ました。

棒を捨てて、土のうの上をこちらへ向かってピョンピョン跳ねてきます。

「なああああ!なああああああああああああああ!!」

奇声を上げて手を振り回し、コウさんは自分の車に向かって猛ダッシュ!

その勢いに気圧されたのか、謎ヤクザの動きが止まりました。

「んきゃああああああああああああああああ!!」

狂乱の態で車まで戻ると、コウさんはスゴイ勢いで来た道をバックしました。

国道に出てもバックで爆走し、そのまま現場事務所の駐車場へ。

残っていた監督に訳の分からない説明をしたあと、一目散に家まで帰りました。

で、その後は?

「そらエライことになったがな。弁当箱持って帰らんかったから嫁に叱られてやな・・」

いや・・その動物の死体とか、次の日どうなってたん?

「知らんがな、あんな気色の悪いトコ二度と行けるかい」

え?じゃあその現場は・・・

「やめたやめた、会社ごと辞めたった」

はな、結末わからへんの?

「結末ってなんやねん?ドラマとかちゃうねんぞ」

そらそうやけど・・何か中途半端やなぁ。

「アホか。何が中途半端やねん。ホンマ大変やってんぞ。

新しい弁当箱買うてもらわれへんかって、しばらくタッパやってんぞ」

えーっとこれで終わりなんですけど・・・

やっぱり怖くないっすね・・・

スマソ・・・

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