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会話が終わった場所 rw+4,922

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俺の嫁が学生時代に体験した話だ。

嫁が所属していたオカルト研究サークルに、郁子という友人がいた。ある日その郁子が、東北の山奥にある心霊スポットの噂を持ち込んできた。
山中に、注連縄で囲われた廃神社があり、そこを一人でまたぐと二度と戻れなくなるという。

半ば冗談半ば好奇心で、サークルの男子学生、貫太が単独で現地へ向かった。
それきり、連絡が取れなくなった。

冗談では済まなくなり、サークルのメンバー全員で様子を見に行くことになった。嫁には多少の霊感があったが、対処の知識は乏しい。そのため、霊感が強いと噂されている先輩に同行を頼んだ。

郁子の言っていた場所に着くと、噂通りの廃神社があった。
朽ちた鳥居と、周囲をぐるりと囲む注連縄。人の手が入っていないのに、縄だけは異様に新しく見えた。

それを見た瞬間、先輩は顔色を変え、「ここには入りたくない」と言った。

だが、貫太を放置するわけにはいかない。
仲間が注連縄を越えようとしたとき、先輩が強く制止した。

「中に入るなら条件がある。
見つけた相手を連れて、注連縄を越えるまで、絶対に会話を切らすな。
黙った瞬間、引き留められる。
人数が多いと、誰かが黙る。二人で行け」

最年長だった嫁と郁子が、ペアに選ばれた。

二人は注連縄を越え、話し続けながら進んだ。
趣味の話、最近食べたスイーツ、どうでもいい服の話。意味のない会話を、意味があるかのように繋ぎ続けた。

だが、進むほどに頭が重くなり、言葉を選ぶのが苦痛になっていく。
会話が目的ではなく、会話そのものを要求されているような感覚だった。

鳥居をくぐり、拝殿に辿り着いた。
扉を開けると、薄暗い中で貫太が背中を向けて座っていた。

その周囲には、古びた日本人形が、コの字に並べられていた。
どれも目を伏せているのに、視線だけが集まっている気がした。

嫁と郁子が声をかけると、貫太はゆっくり立ち上がり、言葉もなく外へ向かい始めた。

戻る途中、会話が途切れそうになった。
焦った郁子が貫太の腕を掴み、走り出す。嫁も必死で言葉を繋ぎながら後を追った。

息が切れ、頭が割れるように痛む中、ようやく注連縄と仲間の姿が見えた。

郁子が先に縄を越えた瞬間、大きく息を吐いた。
その一瞬、会話が止まった。

嫁は、まだ縄の内側にいた。

次の瞬間、耳元で、複数の声が一斉に重なった。
怒鳴り声なのか、囁きなのか判別できない。ただ、意味がそのまま流れ込んできた。

頭痛で視界が揺れ、膝が折れかけたところで、先輩が手を伸ばし、強引に縄の外へ引きずり出した。

その途端、音は消えた。

周囲を見渡すと、仲間たちは無言で立ち尽くしていた。
誰も、何も聞いていない顔をしていた。

車に戻る途中、嫁は何度も「今、何て言われた?」と自分に問いかけた。
確かに理解できた。はっきりと分かった。
なのに、内容だけが、どうしても思い出せなかった。

貫太は車内で徐々に意識を取り戻したが、覚えていたのは、注連縄を越えた瞬間の耳鳴りと激しい頭痛だけだった。

後日、貫太は御祓いを受け、夏休みの間、寺で過ごしたという。

嫁は今でも言う。
あのとき聞こえた声は、意味が分からないのではない。
「分かっていたはずなのに、思い出せない」こと自体が、いちばんおかしいのだと。

(了)

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