短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間

ストーカー女の執念【ゆっくり朗読】6330

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1998年一月、都内に住む角田さん(仮名)が会社から帰宅すると、彼のアパートの部屋の前に一人の女性が立っていた。

彼女は角田さんが以前に少しだけつきあったことのある雅子(仮名)という女性で、半年前に角田さんから別れをきりだし、もう会うことはないはずだった。

ところが女性の方は角田さんを忘れることができず、毎日のようにアパートを訪れるようになっていた。

あまりにしつこく毎日のように姿を見せる女性を気味悪く思った角田さんは、ネットで調べた『別れさせ屋』相談に訪れた。

最初は『別れさせ屋』も、悪質なものではないだろうということで、様子を見るようにと角田さんにアドバイスをしたという。

ところが一ヶ月後、角田さんが家に戻ると部屋の前には彼女の姿がなかった。

安心してドアを開けて部屋に入った角田さんだったが、彼はそこで息をのむ。

彼女は部屋の中で待っていたのだった。

管理人にドアを開けてもらったという彼女に角田さんは、自分にはもう彼女ができたので、いい加減彼女面をするなと思わず怒鳴ってしまった。

すると彼女は突然立ち上がり、片手に持っていた剃刀をゆっくりと持ち上げ、何故か微笑みながら自分の手首におろした。

驚いた角田さんは彼女を病院に運び、一命を取り留めた雅子はそのまま入院することになった。

彼女のこの異常な行為が恐ろしくなった角田さんは、彼女が入院している間に東京での仕事を辞めて実家のある長野県に引っ越した。

 

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ところが引っ越してから三ヶ月後、彼は想像を絶する恐怖に襲われることになる。

仕事から戻って家族のくつろぐ居間に行くと、なんとそこにはストーカーの彼女が楽しげに家族と話していたのだ。

驚きのあまり声の出ない角田さんに、母親は「あなたのお姉さんになるのよ」と言った。
雅子は立ち上がり、「はじめまして。雅子です。よろしくね、弘さん」と言った。

彼女は、角田さんの兄と結婚することになっていたのだ。

ストーカーが自分の兄と結婚するという、信じられないような結末。

彼女はその後、本当に結婚して子供までもうけたという。

これで二人は一生付き合い続けなけらばならないのだ……

(了)

 

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