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中編

パチンコ依存症夫婦の穢事件簿

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暑かった夏も終わり、朝夕は肌寒さを感じるようになって来たその頃

2009/07/28(火) 23:52:28 ID:+52GQ5JS

パチンコ店の駐車場警備員のアルバイトをしていた私は、遅番の勤務に入った。

時刻は午後四時、これから夜十一時までの勤務である。

同じく遅番勤務のホールスタッフたちと挨拶をしながら誘導棒を振っていた。

そのとき警備員詰め所(小さなプレハブ小屋)から、岩山さんと何となく顔を覚えているお客さんが大慌てで走ってきた。

自衛隊上がりの岩山さんはあまり慌てているところを見たことがない。

「大変だ!駐車場で子供の泣き声がするんだって!」

岩山さんはそう怒鳴ると、ちょうど遅番勤務で入店しようとしていた霊感があるホールスタッフに、その事を店長かマネージャーに伝えるように続けて言った。

お客さんの話によると、二階のどこかの車から子供の泣き声がしているらしい。

「二階だって」とホールスタッフに伝えると、すぐに二階に向かった。

二階に上がると、平日とはいえ新装開店初日であることも関係してか、駐車スペースは大部分が埋まっていた。

西日が差し込み、結構まぶしい。

しかしその時は子供の泣き声は聞こえなかった。

一台一台、中を覗き込む。

岩山さんは奥から調べていたので、手前左から見ていくことにした。

知らせてくれたお客さんも「多分聞こえたと思う」と言いながら車を順番に見てくれていた。

「この車だ!この車!」

岩山さんが黒いステップワゴンを覗きこんで怒鳴った。

いや、その車はさっき見たはず……

駆けつけると、座席ではなくその下にもぐりこむ様に子供がいた。

保育園か幼稚園くらいの男の子。

何で座席下に?と思ったとき、岩山さんが「日光を避けたんだよ!だから下にいる!」と怒鳴った。

窓をたたく。反応がない。勿論ドアも開かない。

下からマネージャーと先ほどのホールスタッフが駆け込んできた。

「子供、いる。反応ないですわ!」と岩山さんがマネージャーに言う。

子供は牛乳みたいな泡を口の周りに噴出しながら、そして無反応だった。

「クソっ!大変じゃー!」

マネージャが怒鳴りながら、ステップワゴンの車体を揺らす。

やはりどのドアも全部開かない。

車体は揺れ、大声で子供に呼びかけるがやはり無反応。

「すぐ放送かける、黒のステップワゴンでナンバーは……」

マネージャーがホールスタッフに伝える。

ホールスタッフは走って行った。

「ガラス……割りますか?」

岩山さんがマネージャーに聞く。

「ちょっと待って」とマネージャーが答える。

だがそんな猶予はない様に見える。

とその時、下から上がってきた車が止まり、男性二人連れが「どうしたの?」とのんびり声をかけて来た。

「いや、車の中で子供が泡吹いてる」

と答えるや否や、二人は車から飛び出してきた。

そして子供の姿を見ると「早く救急車!」と怒鳴り、もう一人が自分達の車からハンマーを持ち出してきた。

……割るつもりらしい。

マネージャーが

「ちょっと待ってください。今呼び出してるんで」

と止めると、

「わしら、警察官!警察官!」

と叫ぶ。

もう一人は携帯電話でどこかに電話していた。

「マズイ……」

マネージャーが小さくつぶやく。

ハンマーをガラスに押し当てた。

意外なほどあっけなく運転席のガラスが割れた。

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スライドドアを開けて、もぐりこむように倒れていた男の子を助け出した。

……子供は息をしていた。

「ポカリかアクエリ多めに買って来い」

年配の方が子供を助け出しながら若い方に言った。

そして私達に向かって「何かでこの子あおいで下さい」と言う。

車内にあったうちわと警備員帽子であおぐ。

ホールスタッフが走って戻ってきた。

呼び出したが反応がないこと、本社会議の店長に連絡取ったことを告げる。

ポカリがくるとそのうち一本をあけ、子供に飲ませようとする。そして残りは子供のわきの下や内股に押し当てる。

救急車の音が近づいてきた。

「ヤマト警察の鬼熊ですわ」

と降りてきた救急隊員に告げると、救急隊員は

「息どうですか?こちらで引き継ぎます」

そう言って手早く救急車の中に子供を乗せた。

その時、パトカーのサイレンの音も近づいてきた。

「小僧ら、わしの車に何しとるんじゃ~!」

若いカップルが金髪と香水の匂いを撒き散らしながら走り近づいてきた。

ホールスタッフがその二人の姿を見て「ぐっ!」だか「ウグッ!」だかうめく。

「あんたら、この車の持ち主か?」

女の方が突然悲鳴をあげた。

「清助、死んだんか?」

子供の名前を叫ぶと、救急車の方へ駆け寄った。

聞くと二人は食事休憩を取っていたらしい。

そして休憩が終わっていったん車の方に戻ってきて、この惨状に気づいたらしい。

女は泣き叫んでいた。男は何故か少し冷静だった。

救急隊員が「お父さん、お母さん、どちらか一緒に乗ってください」と言う。

「もう、出ますんで」という隊員の言葉にかぶせるように男が言った。

「俺、まだ確変残してるから、末子、お前行けや」

それを聞いて年配の警察官がぶちきれた。

「なめるなぁ!貴様!」

胸倉をつかむ。

男が「お前、何じゃーー!?」と言い返す。

「ヤマト警察の鬼熊じゃ!」

男はそれを聞いてものすごくひるんだ。シュンとなった。ひざを付いた。

結局母親が救急車に乗り、父親はパトカーに乗せられて連れられていった。

マネージャーも自分の車で警察に行った。

パチンコを遊びに来ていたであろう警察官二人はパトカーの制服警察官に挨拶をして、そのまま帰っていった。

「さすがに今日はよう遊べんわ」と言いながら……

後日、子供は後遺症もなく助かった……と聞いた。

何日かして、そのホールスタッフと現場にいた私達は早番終了後、事務所にて警察に簡単な事情徴収を受けた。

その後休憩室で缶コーヒーを飲みながら、そのホールスタッフと話をした。

生霊の一件といい今回といい、お互い大変だなあ……と。

ひとつ気になることがあった。

あの子供を車に残してパチンコしていたあほ達が帰ってきたとき、そのホールスタッフは奇妙な声をあげた。

……何で?

「あいつら帰って来た時、あいつらの後ろにすごいモンが見えたんですよ」

「すごいって?また幽霊か生霊なの?」

そう聞くと、彼は近いけど少し違うと言う。

「この季節良く見るんです。そういうモンに憑かれている人たち」

詳しく教えて欲しかったが、彼はそれ以上教えてくれなかった。

ただ「もうすぐツキも変わるし多分見るのも少なくなると思います」

そうつぶやいただけだった。

最後に私は聞いた。

「季節で多くなったり少なくなったりあるの?」と。

彼は笑いながら言った。

「めちゃ変わりますよ季節で……でもパチンコ屋では、いつも良く見ますわ」

何週間かして、岩山さんが私を見るなり言ってきた。

「この前の子供殺しかけたにぃちゃん、川向こうのパチンコ屋にいたぞ。確変になってうれしそうにボタン連打してたわ」

(了)

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