中編 ほんとにあった怖い話

無気味な201号室の住人【ゆっくり朗読】2300

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昨日体験したほんのり怖い話。しかも、現在進行形かもしれない……

2003/02/11 03:53  
ことの起こりは昨日の午前中。十一時半頃、玄関チャイムが鳴った。

セールスだったりするとウザイので、こっそりと覗き窓から覗く。

いかつい感じのおじさん三人がいた。

「あ、202じゃなくて201ですよ」

「お、間違った!隣か……」

そして間違えたおじさんは、すみやかに201号室のチャイムを鳴らす。

その様子をじっと眺めてた私は、三人のおじさん達がおそろいの紺のジャンパーを着てるのに気がついた。

しかも、一人はなんかドラマで見たことがあるような帽子も着用。

ん?このおじさん達は、もしや警察……?

なんか不安になった私は、遅れ馳せながらコソっとドアを開けて、まだ外にいた帽子を被ったおじさんに尋ねた。

「あのぉ……何かあったんですか?」

「あ、失礼しました。私、山越警察の鑑識です。いや、お隣に泥棒が入ったらしいんですよ」

「ド、ドロボウですか……」

ちなみに隣は四〇~五〇代くらいの労働者風のおじさん。

ちらっとしか見たことないので、はっきり分からないけど、たぶん一人暮しだと思う。

それから約三十分後、またドアチャイム。

なんとなく予想した通り、刑事さんが警察手帳を差し出して立っていた。

「ちょっとお聞きしたいんですけど」

「はぁ……」

「昨日の夜の八時頃、叫び声とか助けを求める声とか聞こえませんでしたか?」

刑事さんのこの質問に、ちょっと違和感を覚えた私。

え?叫び声?助けを求める声?え……?

隣に入ったのは泥棒でしょ?強盗じゃないんでしょ?

『ドロボウ=空き巣』と勝手に認識してた私は、その質問にちょっとビビリながら、声は何も聞こえなかったと答えた。

その後の刑事さんの質問が、またなんか私をビビらせる。

「普段隣から、わめき声とか叫び声とか聞いたことないですか?」

「いえ、ないです……」

なんか変。この質問。

昨日ドロボウが入った(らしい)のに、普段のわめき声って何?

なんか違和感溢れる刑事さんの質問に、ほんのり恐怖した。

実はドロボウなんかじゃなくて、もっと恐ろしいことが隣に起こってるんじゃ?という疑念が湧く。

そして私は三時間後。

それからほどなくして、十数人ほどいた警察の方達はすみやかに撤収。

それでちょっと安心した。

もし凶悪な事件なら、そんなに早く撤収することもないだろうから。

やっぱ、隣は単にドロボウに入られただけなんだろうと……

で、安堵と共になんか身近にあったこの出来事に、私は妙に興奮して友達に電話しまくり。

ひとしきり自慢げに報告し終わってまったりした頃、その電話はかかってきました。

『もしもし、アケミですけどぉ。ちょー、あんたとこのマンション、今朝警察来とったやろ?』

それは、仲良くしてもらってる近所のクリーニング屋のお姉さんからだった。

私は「そうやねん……」と、今朝あったことのあらましをそのお姉さんに話した。

私の話を『ふんふん』と聞き終えたお姉さんは、『それがなぁ……』と話してくれた事は……

今回の被害者であるらしい201号室のおじさんは、そのクリーニング屋のお客さんだった。

表札が無かったので私は名前を知らなかったが、高橋さん(仮名)というらしい。

にも関わらず、時々鈴木という名でクリーニングを出すこともあったらしい。

最近右腕を骨折していたらしく、ギブスをはめていた。

どうしたのかと聞くと、「転んだ」と答えたらしい。

でも……今日、刑事さんに伴われて、何故かそのクリーニング屋にやってきたおじさんは、普段の感じからは想像もつかないくらいイカレてたらしい。

クリーニング屋にやってきた意図は、イマイチ判然としなかったらしいけど、そのクリーニング屋のお預かり伝票を出して、

『自分の預けてあるモノは、他の人が取りに来ても絶対わたすな』

とか、スーパーマーケットのレシートを取り出して、

『ここに電話してくれ。ワシは手が震えてかけられへん』

とか、とにかく言うこともすることも支離滅裂で、しかもおじさんの右手の薬指と小指が無かった……らしい。

そして『高橋』だか『鈴木』だかなはずのそのおじさんを、そこにいた刑事さんは何故だか『小島のアニキ』と呼んでたらしい。

「小島のアニキ、もうええやろ。迷惑やからやめとけ!」と……

お姉さん曰く、まるで「ヤク中か、もしくは少し精神を病んだ人」みたいだったと。

そして、その刑事さんがお姉さんにポロリと言ったことは、

「本人は『えらい大金盗まれた、犯人はマンションの上か下の奴や!』とか言うとるけど、どうもドロボウが入ったというのは狂言臭いんやなぁ……」

そして、そのおじさんは刑事さんに伴われて去って行った。

別に逮捕され訳ではなさそうだけど、もしかしたら任意同行なのかも?

最後にお姉が言った。

『なんやようわからへんけど、なんかあのおじさん変やったから、あんたくれぐれも気ぃ付けやぁ。今頃警察で尿検査とかされてるかもしれへん。なんかあって逮捕されたら話は早いけど、薬物でなく変なんやったら、そのまんまお隣さんかもしれへんからなぁ』

「ぅ……ん……分かった……アリガト……キヲツケルネ……」

まぁ結局、真相はまだ闇の中なんですが。

てか、永遠に闇の中なのかもしれないけど。

布団干しっぱなしだし、どうも隣の住人は警察に行ったまままだ帰ってきてないようです。

どっちかというと、私的にはこのまま帰ってきてくれないほうが、なんかちょっと、その……

じゃないと私のほんのり怖い日々が、この後も続きそうじゃないですか……

真相がわからないので、果たしてこの話を他の人が聞いてほんのりでも怖いことなのかどうか自信は無いですが、日頃至極平凡に日々を送ってる私にとっては、かなり刺激の強い出来事でした。

まだ終わってないかもしれないし。怖いです……

(了)

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