僕が小学六年生だった頃の話だ。ずいぶん昔のことで、今でも忘れられない奇妙な出来事。
当時、僕が住んでいた街は西と東で地区が分かれていた。西側ではゲームが大流行していたが、僕はゲームを持っていなかった。西側の友達と遊ぶと迷惑がかかる気がして、自然と東側の友達と遊ぶようになった。
ある日、公園で鬼ごっこをしていた時のことだ。一人の子が「なぁ、寺に行こうぜ」と言い出した。しかし、この地域に寺はない。神社ならあるが、それは東側から遠く離れている。僕は「おかしいな……」と思った。
今思えば、この『寺』と呼ばれる場所に興味を持ったのがすべての始まりだった。僕はその子に『寺』について詳しく尋ねた。彼の説明によると、寺は次のような特徴を持つ場所だという。
- 現在遊んでいる公園から少し南に進み、山道を歩いた先にある。
- 寺には「和尚さん」と名乗るニット帽にジャージ姿の男性と、数人の女性たちがいる。
- 子供たちが訪れると、お菓子をくれる。
聞けば聞くほど不思議で仕方なかった。さらにその寺には「絶対に入ってはいけない洞窟」があるらしい。興味津々の僕と仲間たちは(乗り気ではない一部を除いて)、さっそくその場所を目指すことにした。
山道は短く、寺までは意外とすぐにたどり着いた。そこは浅い小川を越えた先にあり、周囲には木材が雑然と置かれていた。寺と呼ばれる施設はどう見てもボロボロの空き家で、人の気配はなかった。その日は周辺を調べるだけにして帰った。
翌日、双眼鏡を持って再訪した。施設の中に人影が見えたので覗いてみると、例の和尚さんや女性たちがいた。彼らが立ち去った後、施設に近づいてみた。仏像らしきものの奥には、ハングル文字と漢字で何かが書かれていた。
洞窟にも近づいてみたが、そこに漂う不気味な空気に圧倒され、恐ろしくなって逃げ帰った。その施設のある町の名前が、在日朝鮮人にとって特別な意味を持つ滝と同じだと知ったのはその後のことだ。仏像の文字や雰囲気から、この施設が彼らの信仰に関わる場所だと理解した。
一度親にすべて話し、一件落着かと思った。しかし、中学一年生になった頃、再びあの施設に行きたくなった。山道は封鎖されていたが、抜け道を見つけて進んだ。人影はなく、木材も片付けられていた。ただ、洞窟から放たれる不穏な空気は以前よりも強まっていた。僕は後悔しながらも、怖くてすぐに家に帰った。
帰る途中、後ろから何かが這い寄ってくるような気配がした。何とか振り切って家にたどり着いたが、それ以降、異変が起こり始めた。最初は窓の外から何かの気配を感じる程度だったが、次第に症状が進んでいった。
- 夜中に突然寒気が走る。
- 暗闇で何かの存在を感じる。
- 飼い猫が何もない場所を凝視する。
- 窓に外側から指で引っ掻いたような跡が現れる。
- 一人なのに物音がする。
その何かの姿を直接見たことはない。それでも、その気配が身の回りに漂っているのを感じる。中学二年生になった今でも、それは時折現れる。
どうすればいいのだろうか。このままではなく、やはりどこかでお祓いを受けるべきなのだろうか。答えの見えないまま、この話は僕の中で終わらないままでいる。
(了)
[出典:69: 本当にあった怖い名無し 2015/08/20(木) 18:24:55.58 ID:mkV2fVq20.net]