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廃村に響く鬼の記憶:変生(へんじょう)r+5794

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これは、東北の山奥にある今は廃村となった集落での話だ。

村には古くから「野火送り」と呼ばれる火葬の風習があった。

山の火葬場で薪を積み上げ、遺体を野に送りながら炎で清める。

人々は火が舞う山肌を仰ぎ、故人の魂が浄化されると信じていた。

その村に住んでいた独り身の老女は、村人たちから忌み嫌われていた。

強欲で、自分の利益のためには平気で他人を裏切り、時に暴力まで振るう。

老人や子供も彼女の怒声に怯えていたという。

その老女がある冬の夜、ついに冷たい床の上で息絶えた。

彼女の死を知った村人たちは、誰も悲しむ様子を見せなかった。

それどころか、「やっと厄介者が消えた」と安堵の声すら漏れた。

葬儀の準備も簡素そのもので、火葬場に遺体を運び、古いむしろで覆うだけの粗末なものだった。

火を放つと、乾いた薪が勢いよく燃え上がった。

黒煙が山の闇へ吸い込まれるように立ち昇り、炎の中でむしろが徐々に崩れ始めた。

その時だった――遺体の頭部を覆っていたむしろが、不気味にふくらんだのだ。

村人たちは息を飲んで見つめた。

炭化した頭部があらわになると、そこには見慣れぬものが――硬く鋭い、二本のツノが浮かび上がっていた。

骨が焦げる音がする中、誰かが震える声で「鬼だ……」とつぶやいた。

恐怖に駆られた村人たちは、慌てて寺から僧を呼び寄せた。

僧は経を唱え続け、炎が夜を通して燃え続けた。翌朝、遺骨は粉々に砕け、何一つ形を残さなかった。

後に、村人の一人がぽつりと語った。

「あの婆さんは酷い生き方しとったからな……鬼になってまっとったんだべ。鬼だ鬼だって笑い話にしてたが、ほんまもんの鬼やとは思わなんだ。」

村が廃れる前、年に一度だけ村人たちが集まる日があった。

その度にこの話が語られた。燃え残らなかった骨の代わりに、忌まわしい記憶だけが村の闇に根付いている。

(了)

[出典:112 :あなたのうしろに名無しさんが:04/05/17 22:12 ID:kbcifIWC]

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