短編 ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間 ほんとにあった怖い話

変な隣人【ゆっくり朗読】6700

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前住んでたアパートの話。

派遣だけど、少し給料がいい所見つかったから働く事になったんだ。

実家からは結構距離あって朝は毎日6時に起きてた、でも朝は苦手だし、仕事は終わるの遅いし、早起きが結構苦になって会社と実家の中間位の所にアパート借りる事にした。

その借りたアパートの隣に変な奴がいたんだよね、そいつがとにかく変だったんだよ。

何て言うかな、自殺願望あるくせに怖くて最後の一線を越えれない感じの奴。

アパート借りた初日に管理人さんが俺に言いに来る位の奴でさ、本当良く追い出されないでいたよなって思う、管理人さんが良い人だったからかな。

結構自殺騒ぎにも迷惑したし、救急車を呼んだ事もある。

とりあえず、どんな感じかを順をおって説明する。

  • 日曜の真昼間にいきなり「いてーーっっ」と大声を上げる、見に行ったら剃刀で左手首の薄皮切ってた。
  • 夜中にアパートの裏から物凄い音がする、破材置き場のトタン屋根の上で悶えていた。
  • 多分首吊りしようとしてたんだろな天井の一部を抜かす、管理人ブチ切れる。

まだあるけど、とりあえずこの位で、正直迷惑でしかなかったし、嫌だったんだけど、本当に死なれたら死なれたで お隣りさんという事もあって後味悪いなって思ったんだ。

で、ある日仕事が早めに終わってアパートに帰ったら丁度そいつも帰って来たみたいで鉢合わせたんだよね。

最初軽く頭下げるだけだったんだけど、思い切って気になる事聞いたんだ。

「何でそんなに死にたいんですか?」

今でも結構ストレートだったなって自分で逆の意味で感心する、本人からしたら無神経な言葉だし、そしたらそいつ物凄い落ち込んで泣き出したから逆に俺がオロオロして、俺ん家に上げたんだ。

で、身の上話をされたんだよね。

初めてちゃんと話す相手にする内容じゃないと事だと思うけど、簡単に言えば親が離婚して母親に引き取られた、その後母親が再婚したけど、その再婚相手から虐待されて今も生活に必要な金以外は全部取られてるらしい。

通りで時々怖面のおにいさんが来てると思った。

でも正直に言うと非現実的な感じがして、普通にこんな事言ったんだ。

「なら逃げればいいんじゃない?金払うと思えば遠くへ行けるし」

そう言ったらまた泣き出す。

再婚相手は母親にも暴力振るうらしくて金を払わなかったら母親に八つ当たりするらしい、確かにそれは可哀相だが、自殺する事と比べたらどうだろうかと思う。

で、この後言った一言が不用意だったんだよね、今更だけど。

「俺だって死にたくなる事あるけど、頑張ればどうにかなるよ」

そう言った瞬間そいつパーッと明るくなってさ、凄い笑顔で見てくるんだよ。

多分仲間がいたとか思ったんだろうか。

で、その時は元気になったと思ったからそのまま帰したんだけど、次の日から怒涛の押しが始まった。

まるで見張ってんの?って言いたくなる位に鉢合わせる。

まあ普通に会って軽く話す分はいいんだけど、何かいつもニヤニヤしながら話しかけて来るから、正直気味悪かった。

で、初めて話した日から一週間位した時かな

また鉢合わせて、軽く話してたら「日曜に家にきませんか?貰い物のお菓子があるから」って言われて。

予定は無いし、しかも聞いたら好きなお菓子だったから了解したんだよね、

で、日曜に初めて部屋に上がったんだけど、綺麗というか見事に物が無い。

家具すらほとんど無くて食器も台所にタオル引いて逆さにした分だけ。

あったのは炊飯器と冷蔵庫と扇風機と布団と折りたたみ机がある位だった。

でも巻き上げらる話聞いてたし、気にしない事にしてお菓子を頂いたんだが、何か様子がおかしいんだよね。

挙動不信というか、余りに変だったから「どうかした?」って聞いたら、いきなり訳分からん事を言い始めた。

「いや、三島さんはどんな風に死にたいのかなと思って」

何言ってんだ、コイツと思って

「死にたいって何?俺そんな事言ってないよ?」

て言ったら、涙目でキチガイになったみたいに叫び出した。

「死にたくなるって言ったじゃないか」みたいな事ずっと叫んでた。

で、その瞬間

「何かヤバイな」と思ったから素早く玄関に走ったけど、用意周到にチェーンみたいなのを付けてたから開けるのが遅れたんだ。

ガチャガチャしてやっと開いたと思って外に飛び出す時にふとそいつ見たら充血した目で凄い睨んでた。

左手は見えなかったけど、何か持ってた感じだった。

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本当に怖かったのはその後なんだけどね。

で、家に帰ってしっかり鍵閉めて気を張ってたんだけど何事も無かった。

まだまだ気は張ってたんだけど、戸締まりは万全だったから布団に入ってたら、いつの間にか寝てたんだよね。

で、夜中に「ゴッ」て音で目を覚ました。

その時はまた隣かなって思ったけど、今回は気にしないようにしようって思ってまた寝たんだ。

そしたら朝方、玄関のドアをノックする音で目を覚ました。

恐る恐る玄関に近付いたら警官だった。

警官は真っ先に俺が大丈夫かを聞いて来たが何がなんだかわからなかった。

で、ドア開けたら新聞配達の人もいて、事情を聞いたら、その前に見た方が早いと言われて玄関を見たら包丁が深々と刺さってた。

鍵穴もぐちゃぐちゃになってた。

新聞配達の人は強盗か空き巣と思って警察に連絡したらしい。

警官から色々質問されて、心当たりは無いか聞かれたから真っ先に隣の奴を上げた。

十中八九間違い無いし、隣にそんなんがいるのに安心して暮らせないし、金が無いから引っ越しも出来ないから。

で、警官が状況検分とか色々言って刺さったままの包丁と鍵穴の写真を撮ったりしてた。

俺の証言じゃ完全な証拠が無いと捕まえたり出来ないらしいから、とりあえず毎日パトロールってなった。

で、そんな事あっても仕事は休めないし、でも怖かったから朝と夕方警官に迎えというか待機してもらってた。

田舎だからか結構親身になってくれたんだよね。

まぁそんな感じで一ヶ月位経って、鉢合わせも無いし、何の行動も無いし、俺も警官も大丈夫だろってなったんだよね。

それでもパトロールはしてくれるみたいだけど、朝、夕方の待機は止めたんだ。

でも油断してた時が一番危ないって本当なんだよね。

待機を止めて三日後くらいだったかな、その日は残業でかなり遅くに帰ってたんだ。

家に帰り着いて玄関の鍵開けた瞬間に、隣のドアが開いて凄い勢いで走って来たんだよ。

「ヒッ」って声出してバタバタ入ろうとしたけど、隙間に右足入れられて、思い切り包丁突き付けられた。

閉めるのを諦めて、部屋の奥に逃げた、したら鍵とチェーンみたいなのしっかり閉めて、包丁向けたままこっちに来たのね。

人間って本当に死に直面したらガタガタ震えるのを初めて知ったよ。

充血して血走った目を向けながらブツブツ言ってんの。

部屋真っ暗で月明かりだけだったから本当にホラーだったよ。

もう無我夢中で色んな物投げたよ、食玩とか本とか。

投げた中で一番重かった目覚まし時計が目にヒットして奴がうずくまった隙に窓からダイブ、今度はトタン屋根で俺が悶えてた。

その音で他の住人が出て来て、巡回中の警官がやって来て、奴は敢え無く御用となった。

懲役望んだんだけど、精神鑑定の結果で精神病院行きが決まった。

これで平穏な日々が帰って来ると思ったけど、そうはうまくいかなかった。

三ヶ月位して、そいつ病院抜け出して会社に押しかけてんの。

丁度、営業出てた時だから良かったけど、本当怖かった。

そいつ格好が格好だったから受付に不審に思われて、またも御用となった。

その後は重病者の部屋に移ったらしい。

多分拘束着を着せられるのかな。

でも俺はそれがいけなかったようでクビでは無いけど、遠回しに会社を辞めさせられる事になった。

で、今は実家で就職活動中。

アパートの管理人さんとは今も仲良くて、たまに飯食い行くけど、その時聞いた話によると、食事時に舌噛んで死んだらしいと噂。

精神病院の情報が他人に漏れるとは思わんが、本当だったら俺は自殺志願者を本当の自殺者にしてしまったのかもしれん。

今回得た教訓は、下手な好意は人によっては逆効果って事だった。

(了)

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