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俺は、調査関係の仕事をしている。

四年前、ある会社で起きた労災事故の調査を担当した。道路工事用のローラー車に女性従業員が巻き込まれ、死亡した事故だ。保険支給に必要な事実確認と、遺族の意向聴取が主な目的だった。

遺族は関西の海沿いの小さな漁村に住んでいた。潮の匂いが強く、古い家が密集し、道は細く入り組んでいる。一方通行も多く、ナビは役に立たなかった。車を空き地に停め、徒歩で向かうことにした。

だが、何度角を曲がっても目的の家に辿り着けない。十五分ほど彷徨い、元の場所に戻ってきてしまった。近くを歩いていた女性に道を尋ねようと声をかけた。

彼女は洗面器を手にしていた。振り向いた瞬間、全身が硬直した。顔が異様に歪んでいた。唇はめくれ、歯が欠け、右目だけが異常に大きく見開かれている。左目はほとんど閉じ、頬はこけ、顎が前に突き出ていた。人の顔ではあるが、どこか組み立てを間違えたような印象だった。

声が喉に引っかかりながらも、住所を告げると、彼女は短く、苦しそうな声で方向だけを教えた。それ以上は何も言わず、こちらを見たまま立っていた。

教えられた通り進むと、目的の家に着いた。遺族の母親は静かな人だった。金銭の話にはほとんど触れず、「嫁にも行かずに死んでしまった」と同じ言葉を何度も繰り返した。焼香を済ませ、遺影を見た。整った、穏やかな顔立ちだった。事故を起こした同僚が、娘のように可愛がっていたという話も聞いた。その同僚は事故後、自殺未遂を起こし、今も仕事には戻れていないらしい。

報告書に遺族の意向を書き留め、家を出た。来る途中で会った女のことを思い出し、無意識に周囲を警戒したが、姿は見当たらなかった。

車に戻り、ドアを開けようとして手が止まった。白いボディに、茶色く濁った手形がいくつも付いていた。濡れたように生々しい跡だった。ウエットシートで拭き取ると、跡はすぐ消えたが、指先に妙な感触だけが残った。

後日、社内で正式な事故報告書を確認する機会があった。現場写真を順に見ていくうち、一枚の写真で視線が止まった。血に染まったコンクリートブロックに、手形が残っていた。色も形も、あの車に付いていたものと同じだった。

さらにページをめくる。事故直後に撮影された被害者の写真があった。潰れ、歪み、崩れた顔。見覚えがあった。道で洗面器を持って立っていた、あの女の顔だった。

その写真の次が、最後の一枚だった。

被害者の手元を写した写真だ。血と油にまみれた手が、地面に伸びている。その指先には、割れた洗面器の縁が写り込んでいた。

[出典:506 本当にあった怖い名無し 2012/06/07(木) 09:58:14.36 ID:6R/OCGUJ0]

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