ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 洒落にならない怖い話

女が招く場所 r+5366

更新日:

Sponsord Link

2002年9月、俺と茂雄と清治は町に飲みに出た。

焼肉屋から始まり、スナックでカラオケ、締めはラーメン屋。ラーメン屋を出たのは深夜1時半を回った頃だった。
俺はアルコールを飲まないので運転手を任されていた。清治はすっかり酔いつぶれ、後部座席で泥のように眠り込んでいた。

国道を抜けて県道に入ったところで、助手席の茂雄が急に俺の腕を叩き、「さっきの交差点に女がおったやろ」と言った。
辺りは山に囲まれた暗闇で、こんな深夜に人影があるはずがない。俺は「酔っ払いの見間違いだ」と軽く流そうとしたが、茂雄は「若い娘で可愛かった」としつこく言う。仕方なく車をUターンさせた。

交差点に戻ると、茂雄の言う通り、道端の草むらに若い女がしゃがみ込んでいた。ライトに照らされて背中が浮かび上がる。車を停めると、茂雄が窓を開けて声をかけた。
「おーい、何してんや、こんなとこで」
振り向いた女の顔を見た瞬間、全身が凍りついた。白い肌、整った顔立ち。その顔が、目を見開き口を大きく開けたまま固まっている。まるで絵に描いたような恐怖の表情だった。

茂雄が「吐いてたんちゃうか」と言う。見ると、女の口元はよだれか何かで濡れている。気味が悪かったが、このまま放置するわけにもいかない。俺は「家まで乗せていく」と声をかけた。女は一瞬、何か意味不明な言葉を発した後、普通の声で「……乗せてって」と答えた。

後部座席の清治を起こさず、女を隣に座らせた。車を走らせながら話しかけたが、女の話は要領を得ない。「捨てられた男を探している」とだけ言う。指示された通りに進むと道はだんだん狭くなり、舗装もなくなった。俺の背中に冷たい汗が流れる。明らかに人里から離れた山の奥だった。

女が「そこ、左」と指示した先には林道の終点があった。車を停めると、女は車を降り、薄笑いを浮かべながら山道に消えようとする。慌てて追いかけようとした俺の肩を、茂雄が掴んだ。「お前……行くんか?」と弱々しく聞く。結局、俺たちは女の後を追うことにした。

山道を抜けると大きな池に出た。そこは、以前消防団で迷子を捜索した時に来た場所だった。女は池のほとりで立ち止まり、突然、池に向かって叫び始めた。
「アホー!何してるんや!死ね!」
声はまるで山全体に響くようだった。その後、こちらを振り向いた女は再び口を大きく開け、何かを吐き出しながら「帰れ!殺すぞ!」と喚き、こちらに手を伸ばしてきた。俺と茂雄は恐怖に駆られ、必死で車まで走った。

車に戻ると、清治はまだ眠っていた。エンジンをかけて一気に林道を抜け、街に戻った。だが、茂雄が最後に呟いた言葉が恐ろしかった。
「俺たち……五人乗っとったよな?」

確かに、俺たちは三人で出かけ、女を乗せて四人だったはずだ。しかし、女を乗せた時、後部座席にはもう一人、男が座っていたのだ。顔も姿も思い出せないのに、その存在だけは確かに覚えている。そのことを思うと、今でも背筋が寒くなる。

(了)

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 洒落にならない怖い話

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2025 All Rights Reserved.