子供の頃、よく秘密基地を作った。
俺も例に漏れず、友達とそんな場所をいくつも持っていた。
埼玉での小4の冬のこと。寒い日だったが、友達と一緒に夏に作った秘密基地に行くことにした。秘密基地は、林の中にある小さなホコラの裏手にあった。行ってみると、ホコラの隣にあった古い小さな神社が妙に綺麗になっていて、俺たちは「秘密基地、無くなっちゃったね」なんて言っていた。
そのとき、神社から神主さんが出てきて、「このおもちゃは君たちのかい?ここは神様の家だから、勝手に入ってはいけないよ」と言って、秘密基地に置いてあったおもちゃを返してくれた。親切だなと思いながら確認すると、ビー玉とオハジキだけが無い。
ビー玉は、ラムネの中のビー玉を集めたものだったから、少し残念に思った。でもその時、神主さんの後ろにいた4歳くらいの子供が、綿入れを着て俺たちをじっと見ていた。その子が巾着袋に入ったビー玉とオハジキを持っていて、「これだけは、この子がどうしても気に入っちゃってね、もらえないかな?」と神主さんに頼まれた。まあ、いいかと思って渡したんだ。
それから、俺たちはおもちゃを神社の賽銭箱の上に置いて、境内で鬼ごっこやかくれんぼをしたり、雪だるまを作ったりして遊んだ。その日はよく雪が積もっていて、40センチはあったと思う。そして気がついたら、雪が降り出していたんだけど、それはただの雪じゃなくてダイヤモンドダストだった。俺たちはその美しさに声を上げて喜んでいた。でも冬の日は短く、すぐに暗くなってしまったので、そのまま解散した。
後になってから、俺たちは神社におもちゃを置き忘れたことに気付いた。次の日、またみんなで集まって神社に行ってみた。でも、そこには神社なんてなかった。あの綺麗な神社は消え失せ、ただ元のホコラがあるだけだった。
「あれ?」と思いつつ、みんなで「秘密基地もまだあるんじゃない?」と裏を見に行くことにした。秘密基地はホコラの裏の小さな洞穴で、子供がしゃがんで入れるくらいの小さな穴だった。その中に入ると、おもちゃはあったけど、ビー玉はなかった。みんなで探したけど、どこにも見当たらなかった。
その後、大人になってから同窓会で集まった時、地主の息子だった元担任が話してくれた。「あそこは狐様の社で、ホコラは拝殿。本当の社は裏の洞の中なんだ」と。つまり、俺たちは本殿を秘密基地にしていたらしい。
同窓会の次の日、懐かしい顔ぶれで再びその洞を覗きに行った。LEDライトを手にして、洞に潜り込むと、奥のほうに少しせり上がった段があり、そこには小さな狐の彫り物が置かれていた。子供の頃には暗くて奥まで見えなかった場所だった。
その彫り物の周りには、俺たちが無くしたビー玉とオハジキが散らばっていた。よく見ると、巾着袋は狐の座布団代わりになっていた。俺たちは何故か妙に納得して、元に戻して帰った。そして、子供の頃のお宝だったジャンケンゲームの金コインを、お供え物として置いてきたんだ。