今年の三月の終わりごろだったかな。俺はいつもの様に、更新を楽しみにしながら洒落怖まとめサイトを見ていた。
その時、オカルト好きの伯父さんが家に遊びに来てて、一緒になって「へぇ~こんな面白い話がたくさんあるんだ」と楽しく見ていた。
丁度、投票ランキングを見ていた時。
2006/05/12(金) 15:13:55 ID:J5L31GUs0
「ちょっと、とめて」
画面を下にスクロールさせる俺に、伯父さんが言った。
「この、リョウメンスクナっての開いてくれる?」
俺は言われるがまま、カーソルを持って行き、クリックした。
「あぁ、これね。去年ちょっとは話題に上った話で、最後なんかちょっとスレがパロディ化して……」
「ちょっと黙ってて」
いつもは優しい伯父さんが、珍しく険しい表情で言った。
黙って真剣な表情で、リョウメンスクナの話を読んでいる。
十~十五分は経っただろうか。伯父さんがようやく口を開いた。
「似てる……」
「えっ、何と??」
「今日は孝明(俺の親父で伯父さんの弟)と良子さん(母)は、旅行で帰ってこないんだろ?」
「うん、まぁ」
「じゃあ、酒でも飲んで何かつまみながら話すか。あの二人がいたら、『また変な話(オカルト系)ばっかりして』ってうるさいからな」
そう言うと伯父さんは、瓶ビールとチーズを勝手に冷蔵庫を開けて持ってきて、話し始めた。
「俺の実家が神社なのは知ってるだろう?(出雲大社系)それでな、地鎮祭とか時々頼まれるわけじゃない?その時の俺ん家の(神社の)決まり事としてな、その土地に骨や死体があった場合の、地鎮祭のやり方があるわけね。他の神社もやってるかどうかは知らないよ?まぁ詳細は省くけど、とにかく慎重に対処せにゃいかんわけよ。
割と近代の骨や死体なら、まだ良いんだよ。いや、良くはないんだが、問題なのは、古すぎる骨とか即身仏の類ね。遺跡などの多い地域は、古代の骨は結構出るし、即身仏もごくごくたま~に出たりする。
完全な保存状態のはまずないけどね。そこで俺の親父の話なんだけど、終戦からちょっと経ったくらいの頃ね、とある豪商から、『土地を整地してたら変なもんが出てきて、気持ち悪いから来てくれ』って言われたのね。
それで行ってみると、その豪商の家の大きな蔵に通された。丁度、棺桶サイズの木箱が置いてあって、蓋が開いてたんだって。『こんなもんが出てきてなぁ。気色悪いったらありゃせん』豪商の言葉を耳にしながら、親父は木箱の中を覗いたんだ。
『アシュラさんやないか!!』
親父は叫んだらしい。中に横たわっていたものは、まさしく阿修羅像の様な、干からびたミイラだったらしい。まず、通常の人間のミイラを思い浮かべて欲しい。その顔の左右両脇に、別の人間の切断した首二つを縫い付ける。そして左右の脇腹に、これまた切断された別の人間の右腕二本、左腕二本を縫い付けてある。そんなおぞましい(造られた)ミイラだったらしいんだ」
「『まだあったんか……こんな腐れ外法が……』親父は真っ青になりながらも、急いで木箱の蓋を閉めたんだ。そして、『見世物にしたらどうか?』と言う豪商の提案を激怒しながら一喝し、強欲な豪商がどうしても譲らないと言い張るので、『俺が金払ってでも引き取る』と言い、結局大枚はたいて買い上げたんだ。そして、『あの*******がっ!!』と叫んだらしい」
「??……どう言う事??」
あまりに恐ろしく現実離れした話に聞き入っていた俺は、ようやく質問する事ができた。
もう瓶のビールは、あと四分の一ほどしか残っておらず、俺は代わりを冷蔵庫から持ってきた。
「ん、ありがとう……そうそう、それでな、さっきのリョウメンスクナって話に、物部天獄って出てきたろ?時代的にも違う人物とは思うが、親父の生きてた時代に、金成羅って在日朝鮮人がいたらしいんだ。
天魁教ってカルト教団作って、細々と活動してたらしい。こいつがとんでもないヤツで、『教団の教え』とか偽って信者たちとしたり、大金巻き上げたりするわで、まぁ小物っちゃ小物だったらしけどね。それでも、こいつの先代か先々代の教祖が本物だったらしく、色んな呪法のかけ方とか書いて残してた、経典があったらしい。
その中に、『人工的に即身仏を作り出し、呪いの道具とする』方法みたいのがあって、それがさっきのアシュラさんってわけなんだ。
親父が何でそんなに詳しいかと言うと、親父の妹がこのカルト教に感化されてしまって、連れ戻すのに苦労した時期があったらしいんだ。それで金成羅ともゴタゴタがあったわけね」
「う~ん、でも、そんな教団も教祖も聞いた事ないよなぁ」
「そうだろう。でも、本当に小さなチンケな教団だったらしいよ。信者もほとんどが、在日朝鮮人とか中国人だったらしい。そのくせ、やってる呪法とかが危険な物ばかりだったと。大体ね、どの宗教や邪教の秘術とか呪いを見てもね、リョウメンスクナやアシュラさんみたいな、生命を冒涜するような呪法・呪物ってのはないんだよね。
悪魔教でさ、赤子とかを捧げるのはあるらしいけど、それは一応太古や中世からの伝統であって、このスクナとかアシュラの類は、完全に個人で勝手に考えた思いつきの様な気がするんだよね。狂ってると言うか。逆にそういう素人考えが、凄まじい怨念を発する、危険なものを造り上げたんだろうね」
「うーん……それで、そのアシュラさんはどうなったの?」
「親父もホント頑固で昔気質な所があってさ、アシュラさん引き取った後、『朝鮮近海の海に捨ててやる!!』とか言い出したらしくてさ。
その頃、金成羅は消息不明だったらしく、ほとんど腹いせだよね。朝鮮半島に持ち込むにしても、検問や入管でそんなミイラ通るわけないし、それで少しでも近くの海に……って。
今思えば、親父もちょっと狂ってたのかもなぁ。それで、知り合いの漁師に頼んで船出してもらったらしいんだけど、そのアシュラさん積んだ船が、今のK州の西方沖で沈んだらしいんだ。あぁ、もちろん親父は船には乗ってなかったよ。それが今から約五十年ほど前かなぁ」
「で、分からずじまいと……他にもどこかに、そんなミイラがある可能性ってあるの?」
「分からんねぇ親父もアシュラさんの件以来、そういう情報には神経を尖らせていたらしかったけど、とうとう新たな、そういう造られたミイラの情報は入ってこなかったらしいよ」
「で、これは完全に俺の推測か妄想かもしれないけど、去年春ごろ、K州西方沖で大地震があって、F県始めK州各地に被害出たろ?」
「あれ怖かったなあ…CDラックとか滅茶苦茶になって」
「あと最近、K州発の韓国行きの高速船や、K州西方沖を走る高速船に、『クジラのような生物がぶつかる』ニュース多いだろ?怪我人も多数出て」
「あったねぇ。あまりにもぶつかる数が多すぎるよね」
「アシュラさんが沈んでるK州西方沖と、何か関係があるのかな…なんてな」
「まさか。ハハハ」
「まさか、ね。あと日本神話にも、天津神、国津神ってのが出てきてさ、天津神が朝鮮半島か中国大陸からやってきた騎馬民族で、国津神が日本列島の先住民。戦に天津神が勝利して、朝廷が出来た(あくまで一説)と言う神話もあるし、7世紀に起きた白村江の戦いや、秀吉の朝鮮出兵、さらに近年に起きた戦争と、日本と朝鮮の怨恨みたいなものは、深くて根強くあるのかもしれないね」
(了)