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強制労働宿舎跡(そうぶんぜ)r+4723

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小学生のころの話だ。会話文は方言を使って雰囲気を出すために書いている。

俺は東北出身で、通っていた小学校のミニバスはなかなか強くて、土日や長期休みは練習や試合、合宿ばかりだった。

ある夏休み、近隣の学校との合同合宿があり、隣町のセミナーハウスに泊まることになった。

現地に着くと、みんな呆然としていた。

「なんだべ、こったらこぎたねぇセミナーハウス……」

というのがみんなの率直な感想だった。

木造の家が点在していて、ぼろいスーパーが一軒だけでコンビニもない、あとは山ばかり。

俺らの住んでる地区よりもさらに田舎だった。

セミナーハウスの裏手にはすぐに杉の木が生い茂る鬱蒼とした山々が広がっていて、雰囲気もどこか不気味だった。

そのセミナーハウスについて、誰かの母親が言っていた話によると、昔は強制労働のために使われていた宿舎だとか。

その時は泊まりのイベントで興奮していたから、そんな話はあまり気にしなかった。

練習や紅白戦をして、あっという間に夜が来た。

夕食を済ませ、大部屋に戻った俺たちは、当時流行っていたUNOを取り出してUNO大会を始めた。

消灯時間が近づいてきても、UNOに夢中だったけれど、後ろでぽつんと一人だけハブられている奴がいた。

その奴を仮に黒滝と呼ぶ。

小学校や中学校には、特殊学級に振り分けられる生徒がいるけれど、黒滝もその一人だった。

でも、部活には普通に参加していて、ミニバス部にも入っていた。

今思うと、かなり可哀想な状況だった。黒滝の家を見たことがあるけれど、まるで現代史の教科書に出てくるようなバラック小屋に住んでいて、父親らしき人物を見たことがなかった。

おそらく、母子家庭で、さらにハンデを持っていたのだろう。

そんな黒滝だから、俺ら小学生にとってはただのウザい存在で、結局ハブられることになった。

ところが、消灯前の見回りに来た監督が俺たちを怒鳴った。

「チームワークも大事にできねぇお前らが勝てるわけねぇべ!」

その言葉に渋々、黒滝を仲間に入れて何かをしようという話になった。

そのとき、仲間の一人が「こえぇ話しようぜ」と言い出した。

正直、怖い話はあまり好きじゃなかったし、怖い話もあまり知らなかったけど、黒滝がUNOをできるわけもなく、仕方なく了承した。

何人かが怖い話をしたけど、テレビで見たことのある話ばかりで、そこまで怖くはなかった。しかし、八木橋が話し始めた。

「『そうぶんぜ』って知ってるか?」

俺はその時、全く知らなかったし、周りの連中も誰も知らないらしく、みんなかなりビビっていた。

今更言うまでもないが、実際に「そうぶんぜ」にはいくつかのバージョンがある。

俺らが聞いた話はうろ覚えだけど、こんな内容だった。

「目を閉じると、あなたは炭鉱の中のトンネルを歩いている。道が複雑に分かれていて、分かれ道に来たら言われた順番で進む。最初は右、次に…(中略)
最後の行き止まりには警察官のような人がいるから、その人に会えば大丈夫。でも途中で死んだ霊魂が話しかけてくるけれど、絶対に返事をしてはいけない。途中で目を開けてもダメ。決まりを破ったら、魂を奪われる」

こんな感じだった。

後で知ったけれど、調べた限りでは、ネットで見かけた話とは微妙に内容が違っていた。

ガチでビビった俺たちは、言われた通りにやったけれど、黒滝はさっき言ったようにハンデを持っていたから、怖くてテンパっていたのか、目を閉じながら喋り出してしまった。

その言葉が、確かに聞いたこともないような言葉、少なくとも日本語ではないように聞こえた。

俺たち「おい、これヤバくねぇか? 喋ってるぞ!」

八木橋「アハハ、お前らマジでうけるー!『そうぶんぜ』って逆さ読みしてみろ!」

俺たち「え?『ぜ・・・んぶ・・・う・・・そ』って! んなー、頭来るなぁ、嘘だぁ!マジビビったでばー!」

一件落着かと思ったが、黒滝はそのまま状態が変わらず、目を覚まさなかった。

俺たち「おい、黒滝!いい加減にしてくれよ!全部嘘だって言ってんだろ!」

黒滝「くぁwせdrftgyふじこlp;」←聞き取れなかった。

俺たち「おい、やめろって言ってんだろ!おいっ!」

黒滝の肩を掴んだ瞬間、まるで糸が切れたようにガクリと崩れ落ち、目を覚まさなかった。

これはヤバいと思い、急いで監督を呼びに行った。

保護者たちも集まってきて、騒ぎになったが、しばらく様子を見ても目を覚まさなかった。

結局、救急車を呼び、黒滝は病院に運ばれ、合宿は中止。翌日、説明と説教を受けた後、解散となった。

その後、黒滝は夏休み中ずっと入院していて、ミニバスの練習には姿を見せなかった。

二学期の始業式で、担任から黒滝が引っ越すことを聞いた。本当かどうかは分からないが、噂では精神科のある大きな病院に転院したらしい。

黒滝の家もずっと人の気配がなく、結局、黒滝とその家族は姿を消した。

その後、何年か経ち、中学の研究発表会で郷土史を調べて愕然とした。

あのセミナーハウスがある町は、太平洋戦争末期に外国人労働者が炭鉱で強制労働を強いられ、蜂起が起こり、その際に多くの犠牲者が出た土地だと知った。

誰かの母親が言っていた「強制労働で使っていた宿舎」という話も、どうやら嘘ではなかった。

さらに、ミニバスの同窓会で黒滝の話題が出た。黒滝は中学二年の時に目を覚まし、その後無事に退院したが、さらに数年後に行方不明になったという。

また、八木橋の知っていた「そうぶんぜ」の話は、ネットで見かけたものと似ていたが、内容が少し異なり、炭鉱や警察官が出てくる話ではなかったらしい。

しかし、八木橋自身は記憶が違っていたのか、実際に語ったのは普通の怖い話だったと後で気づいた。

その時、俺たちが実際に聞いた話と食い違っていたことや、セミナーハウスが過去に起こった陰惨な出来事と照らし合わせて考えると、今では黒滝が喋った言葉が、過去にそこで殺された外国人の言葉だったのではないかと思えてならない。

少なくとも、言えるのは、架空の恐怖話でも、環境や状況が合わさると、本物のように感じられてしまうということだ。

[出典:225 :本当にあった怖い名無し:2012/01/30(月) 01:04:00.00 ID:8x3Fma9k0]

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