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誰も話していない怪談 rw+5,517

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小学生のころの話だ。

俺は東北出身で、当時通っていた小学校のミニバスはそこそこ強く、土日や長期休みは練習や試合、合宿ばかりだった。

ある夏休み、近隣の学校との合同合宿があり、隣町のセミナーハウスに泊まることになった。

現地に着いた瞬間、みんな言葉を失った。

「なんだべ、こったらこぎたねぇセミナーハウス……」

木造の建物が点在し、ぼろいスーパーが一軒あるだけ。コンビニもなく、周囲は山ばかり。俺たちの住んでいる地区より、さらに奥まった場所だった。

セミナーハウスの裏手には、すぐ杉林が広がっていた。昼間でも薄暗く、風が吹くたびに枝が擦れる音がして、妙に落ち着かなかった。

誰かの母親が言っていた話では、昔は労働者の宿舎として使われていたらしい。

その時は、泊まりのイベントに浮かれていて、誰も深く考えなかった。

練習と紅白戦を終え、夜になった。夕食後、大部屋に戻った俺たちは、流行っていたUNOを広げて遊び始めた。

消灯時間が近づいても盛り上がっていたが、部屋の隅に一人だけ座っている奴がいた。仮に黒滝とする。

黒滝は、特殊学級に通っている生徒だった。部活には普通に参加していたが、正直、俺たちは距離を置いていた。

その様子を見た監督が見回りに来て怒鳴った。

「チームワークも大事にできねぇお前らが、勝てるわけねぇべ」

渋々、黒滝も交えて何かやることになり、誰かが言った。

「こえぇ話、しようぜ」

UNOよりはマシだと思い、俺も黙って輪に入った。

何人かが知っている怪談を話したが、どれもテレビで聞いたような話ばかりだった。その中で、八木橋が口を開いた。

「『そうぶんぜ』って知ってるか」

誰も知らなかった。部屋の空気が一気に重くなった。

八木橋は、目を閉じて行う遊びだと言った。暗い坑道の中を歩き、分かれ道で指示通りに進む。途中で声をかけられても返事をしてはいけない。最後に立っている人物に会えれば終わりだが、途中で目を開けたり喋ったりしたら、魂を取られる。

俺たちは半信半疑だったが、言われた通り目を閉じた。

しばらくして、黒滝が小さく声を出した。

最初は、うめき声のように聞こえた。次第に、はっきりとした発声になったが、言葉が分からない。日本語ではない気がした。

「おい、喋ってるべ……」

誰かが囁いた。

その瞬間、八木橋が笑った。

「アハハ、騙されたな。『そうぶんぜ』って逆さから読んでみろ」

「ぜんぶうそ」

俺たちは一斉に息を吐き、文句を言い合った。

だが、黒滝だけが反応しなかった。

目を閉じたまま、意味の分からない言葉を途切れ途切れに発し続けていた。

肩を揺すった瞬間、黒滝の体が崩れ落ちた。

それからのことは早かった。大人を呼び、救急車が来て、合宿は中止になった。

黒滝は意識を失ったまま運ばれ、その後、夏休みの間、部活に戻ってくることはなかった。

二学期の始業式で、黒滝が転校したと聞いた。

それきりだ。

後年、同窓会でこの話が出たとき、八木橋は首をかしげた。

「俺、そんな話してねぇぞ。普通の怪談だったはずだ」

誰が何を話したのか、はっきり覚えている者はいなかった。ただ、炭鉱の話だけは、全員の記憶に残っていた。

あの夜、黒滝が何を喋っていたのか。
あれが誰の言葉だったのか。

今でも、誰も分からないままだ。

[出典:225 :本当にあった怖い名無し:2012/01/30(月) 01:04:00.00 ID:8x3Fma9k0]

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