これは中学時代、地元で囁かれていた話だ。
私の生まれ育った町の神社には、奇妙な神が祀られている。その名前は《カラコロシ》。他では聞いたことのない、不気味な響きの名前だ。
この《カラコロシ》、地元にだけ伝わる言い伝えに基づいているらしい。そのため、地元民以外がその名を知ることはほとんどない。祀られるようになった経緯には、忌まわしい事件と神秘的な出来事が関わっている。
話は鎌倉時代まで遡る。当時、この地には村人たちに激しく嫌われる若者がいた。昼夜を問わず、自分の自慢話を繰り返し、誰彼かまわず話しかける。彼の言葉のほとんどは虚言だったとされるが、聞かされ続けた村人たちの苛立ちは頂点に達した。
ある夜、村の男たちは一斉に若者の家に押しかけた。彼を引きずり出し、殴り、刺し、さらには性器を切り取るという凄惨な暴力の末に、若者は息絶えた。それまでの喧騒が嘘のように静まり返り、村人たちは一様に安堵の表情を浮かべたという。
だが、それからが恐怖の始まりだった。
若者の死後、村では奇妙な病が子供たちを次々と襲い始めた。顔に性病のような発疹が現れ、その後、命を落とす。どの子も苦しむ暇もないほどの速さで命を奪われていった。村人たちはすぐに、これが若者の怨霊による祟りだと悟った。
神主に相談すると、彼は若者を鎮めるため、神に祈りを捧げる儀式を提案した。その神が《カラコロシ》だった。祈りが捧げられた数日後から、村の子供たちは同じ夢を見始めたという。
夢の中で現れた《カラコロシ》は、まるで母親のような温かさで子供たちを包み込んだ。それ以来、病も恐怖も消え去り、若者の祟りは終息したとされた。だが、《カラコロシ》にも別の問題があった。
《カラコロシ》には歪んだ愛情の話が伝わっている。一説では、かつて人間だった頃に、弟を死なせた過去があり、それ以来、特に小さな女の子や兄を持つ男の子を好むようになったという。
若者の怨霊を鎮めた後、村では奇妙な失踪事件が相次ぐようになった。子供が一晩姿を消し、翌朝戻ってくる。どの子も「楽しかった」と語るため、村人たちは深刻に受け止めなかった。
しかし、ある日、五人の子供が戻ってこなかった。兄を持つ男の子二人、そして三人の女の子が忽然と消えたのだ。村中が総力を挙げて捜索したが、手がかりすら見つからなかった。
それでも、不思議とその事件以降、新たな被害は止んだ。やがて村人たちは事件を忘れるようになり、五人の親たちも捜索を断念するしかなかった。
それから数十年が経ち、村の男が仕事で遠方を訪れた際、偶然にも失踪した五人を見つけた。だが、彼らにはかつての記憶はなく、精神疾患を患った大人として暮らしていた。五人が何を体験したのか、どこで過ごしたのかは、今も分からない。
これが《カラコロシ》にまつわる言い伝えの全貌だ。
だが、この話を持ち出したのには理由がある。つい先日、また犠牲者が出た。それも友人の弟だ。
名前は篠井優太郎。友人は警察に通報したが、今のところ何の手がかりもない。
もし彼を見かけた者がいたら、どうか知らせてほしい。友人の弟が無事であることを、ただ祈るばかりだ。
[出典:347 本当にあった怖い名無し 2013/12/08(日) 09:55:06.39 ID:6zOpgANx0]