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過疎の村 r+7,746

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うちのかみさんが昔、旅行代理店でバスの添乗員の仕事をやっていたときの話。

徳島県の山奥、木屋平村。かつて妻が旅行代理店で添乗員をしていた頃、会社の慰安旅行でその村へ行ったという。

村には店らしい店もなく、広がるのは深い森と清流ばかり。娯楽に乏しいため、若いOLたちは物足りなさを感じながらも、バーベキューをしたり、山道を歩いたりと三日間を過ごした。

最終日の午後、山道を歩いていると、遠くから馬蹄の音が聞こえてきた。鎧兜に身を包んだ村人たちが、まるで時代絵巻のように馬に乗り、山道を練り歩いている。あまりに本格的な装束に、OLたちは驚きつつも、歓声を上げて写真を撮りまくった。

しかし、帰りのバスの中で異変が起こる。突然、一人のOLが苦しみ始め、口から泡を吹いて倒れたのだ。急遽、バスを止め、救急車を呼ぶ。付き添いの上司とともに病院へ運ばれた。

その後、バスの車内には重苦しい沈黙が広がった。異様なほどの静けさの中、誰もがある一点を避けるように視線を逸らしていた。倒れたOLが座っていた座席だ。そこから発せられる得体の知れない気配に、他の乗客は隣や前の席を離れ、誰一人近寄ろうとしない。

妻は沈んだ空気を払拭しようと明るく話しかけたが、OLたちは小さく肩を震わせるばかりだった。中には泣き出す者までいた。

次のパーキングエリアに着くと、乗客たちは我先にとバスを降りた。運転手もトイレへ行き、車内には妻だけが残された。

ふと、気配の漂う座席へ目を向けると、座席の下に何かが落ちている。拾い上げると、それはポラロイド写真だった。

そこには、倒れたOLが鎧兜の男とともに微笑んでいる姿が写っていた。しかし、よく見ると……

男の表情は笑顔ではなかった。目はカッと見開かれ、憎悪に満ちた顔でOLを睨みつけていた。そして、彼の腕は宙を薙いでいる。

妻の指が写真の隅に触れた瞬間、恐ろしいことに気がついた。

そこには、抜き放たれた刃があった。閃光のように振り下ろされる太刀の切っ先が、OLの首元に深々と食い込んでいる。

妻は叫びそうになるのをこらえ、写真を握りしめてバスを飛び降りた。ゴミ箱の蓋を乱暴に開け、震える手でその写真を押し込む。

その後、妻はすぐに仕事を辞めた。そして、あの写真のことを誰にも話さなかった。

ただ一度、俺に打ち明けるまでは。

後日、気になって木屋平村の歴史を調べてみた。だが、村には鎧兜をまとう祭りも、そうした風習もまったく存在しないという。

では、あの鎧武者たちは、一体何だったのか。

……今となっては、確かめようがない。

[出典:18 :風吹けば名無し:2015/07/14(火) 04:20:58.90 ID:J5URYVlJa.net]

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