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禍魂(マガタマ)r+3392

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俺が中学生の頃、祖父から聞いた話だ。その話自体は、さらに遡って曽祖父から伝わったものらしい。

地元には、神主もいない古びた神社がある。誰も住むことなくひっそりと佇むその神社に祀られているのは、いわゆる《祟り神》。地域には昔から、この神社にまつわる言い伝えが多く残されていた。

大半の話は「粗末に扱うと災害が起こる」というような内容だが、その中でも戦国時代にまつわる奇妙な出来事が語り継がれている。

当時、この地を治めていた領主の放蕩息子が「祟りなど迷信だ」と高笑いしながら神社のご神体を持ち出し、酔った勢いで小便をかけたという。それからしばらくは何事もなかったが、数年後、異変が訪れる。

詳細は曖昧だが、記録に残された語り口によれば――
・村中で説明のつかない怪異が多発。
・村人たちが次々に失踪。
・領主自身は原因不明の病に倒れ、顔が腫れ上がり失明する。
・領主の他の息子たちは戦場や病気で命を落とし、肝心の放蕩息子は発狂して山へ消えた。
・村人たちが神を鎮めるための祭祀を試みるも成果なく、やがて村全体が人々に見捨てられ廃村となる。

この話は、具体的な記録も残されておらず、単なる噂話としてしか伝わっていない。その後の村には新しい住人たちが移り住み、過去の出来事は徐々に風化していった。

明治時代に入って間もない頃。

神社には神主がいないため、地域の有力者たちが清掃や管理を行い、時折他所から神主を招いて儀式を執り行うという形が続いていた。この頃から村人たちは「触らぬ神に祟りなし」と考え、ご神体には誰も手を触れないのが不文律となっていた。

長らく平穏が続いていたが、ある年、事態が動き出す。村の若者たちが集まって話をしているとき、誰かが戦国時代の祟りの話を持ち出した。

「祟りなんて迷信だ。今や文明開化の時代。そんな古臭い話に囚われるのはおかしい」

そう豪語する者が現れたことで、議論は過熱し、「ご神体を見に行こう」という話に発展。肝試しのような軽いノリだったと祖父は語るが、その時集まった十人ほどの若者たちが夜中に神社へ向かうことになった。

若者たちは神社の境内に入り、拝殿の扉をこじ開けた。中には古びた祭壇があり、その奥に桐の箱が厳重に封印されていた。どうやらご神体はその中に納められているらしい。

最初は尻込みしていた一行だが、「迷信だ」と最初に言い出した者が意を決して箱を開けた。中には勾玉が三つ。思った以上に何の変哲もない石だったことで緊張が解け、逆に高揚した若者たちは、そのまま拝殿で酒盛りを始める。

翌朝、拝殿の中で飲み明かしたことが村に知れ渡り、こっぴどく叱られるものの、特に変わったことも起こらなかったため、村人たちはそれ以上深く追及しなかった。だが、これが事の始まりだった。

三年後、村で不可解な出来事が起き始める。

村外れでは鹿や猿が串刺しにされ、夜には不気味な声が響き、家々に小石が投げ込まれる。犬は何もない空を見て狂ったように吠え、人影が深夜に列を成して歩く様子が目撃された。

最初は実害のない奇妙な出来事ばかりだったが、やがて村人の失踪や自殺が相次ぎ、遂には襲撃を受けて変わり果てた姿で発見される事件が続発するようになる。

村人たちは「三年前のご神体への無礼が原因ではないか」と噂し始め、地域の神事を代行してきた○○神社の神主に相談することに決めた。

村の地主が首謀者の若者たちを連れて○○神社を訪れると、神主が事態を詳しく聞き取った。その際、神主は首をかしげた。

「それは妙だ。山の神社のご神体は銅鏡のはずだ。桐の箱や勾玉の話は聞いたことがない」

神主の話では、○○神社は山の神社の神事を代行してきた経緯があり、神事に使われていたご神体は祭壇に置かれた平らな箱に収められた銅鏡だという。戦国時代に領主の息子が粗相をしたのも、この銅鏡に対してだと伝わっているらしい。

その場にいた地主も驚きを隠せなかった。若者たちが開けたのは桐の箱であり、銅鏡の存在は知らなかったという。

さらに神主は、山の神社が桐の箱に収められた勾玉を封印してきた理由について仮説を述べた。

「その勾玉には『何か』が封じられていたのではないか。この何かは悪霊や祟り神とは異質な存在で、山の神社の神様はこれを封じ込める役割を担っていたのではないだろうか」

神主は一度桐の箱を確認する必要があるとし、二日後に地主の家で再集合することになった。

二日後、村の駐在が地主を訪ねてきた。

村で続発している怪現象は近隣の村や陸軍の駐屯地にまで広がっており、被害者が出ているとの報告だった。このままでは責任を追及されかねないと、早急な対処を迫られる。

やがて○○神社の神主が到着し、皆で山の神社へ向かうことに。神社に到着すると、神主が調査結果を語った。

「この地には古くから『何か』が潜んでいた。それは人をさらって力を増し、神々の力を借りても退治できず、封印することしかできなかった。それが桐の箱に封じられていたのではないか」

また、戦国時代の祟りは神社の神様によるものだったが、今回の怪現象は封印が解かれた『何か』によるものだという。そして、その『何か』は勾玉と一心同体となっているため、遠くに離れることができず、近辺に潜んでいる可能性が高いと結論付けた。

儀式を執り行う準備が整い、桐の箱が開けられた。中の勾玉は力を失った状態だったが、神主は異様な気配を感じ取った。

村人たちが集まり、神主は結界を張りながら儀式を始めた。最初は平穏だったが、やがて神社の外で不気味な気配が漂い始める。獣の臭い、笑い声、大勢の足音、壁を引っ掻く音などが夜通し続いた。

「神様が依代の銅鏡に降臨している間は拝殿の中が安全だ。外には出るな」

夜明けまで儀式は続き、やがて怪現象は収まり、村人たちは無事に家へ戻ることができた。しかし、神社の周囲には無数の足跡や倒木、大きな引っ掻き傷が残されており、昨晩の出来事が現実であったことを物語っていた。


後に神主が語ったところによると、この村は過去に一度廃村になり、伝承や風習が途絶えたことで、神社の本来の役割や『何か』の存在を知る者がいなくなったのだという。

それでも儀式により『何か』の力は再び封じられた。しかし祖父がこの話を語った理由は、2年前にその神社が盗難被害に遭い、桐の箱ごと勾玉が盗まれたからだった。

そして、あの時の封印が解かれた三年目が近づいている。

祖父は言う。「場所がわからない以上、どうにもならない。それが一番の問題だ」と。

(了)

[出典:127 :本当にあった怖い名無し:2009/04/28(火) 21:01:36 ID:y/qzGtBo0]

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