友人の父親の家では、男衆が定められた年齢に達すると行われる代々に伝わる習俗的な通過儀礼があります。
その家にとっての決まった土地を、白装束で念仏のような決まり言葉をずっと唱えながら巡るのだそうです。
大変過酷な場所を一人で行かなくてはいけないらしく、習俗とはいえ荒行の域といっても過言ではないと思います。
そして、通過儀礼とはいえど、これを生き残った者のみが何かから許されて、その後の人生を続けていくような……
ここまでは家系にまつわる話ですが、オカルトめいてくるのは、友人の父親がソレを行わなかった事によって起こります。
彼はまだ若いし、地方から都市部へ出てくることが多かった時代背景も手伝って、その土地を離れていたこともあり、「馬鹿らしい」と、その年齢に達しても戻らなかったんだそうです。
まあ、よくある話ですよね。
ここから、友人に言わせると「堕ちて行く人生」だと。
まず、左目が何の病気でもないのに失明。
当時結婚したばかりだったのに、技術系の職も失い途方にくれる、子供も生まれる。
救いを求めても、家からは断たれたも同然の扱いを受けているため頼れず、精神のほうも病んできます。
障害手帳も所持してました。
自分が友人と知り合ったときには、いわゆる生活保護世帯になっていました。
日中は家に寄り付かず、夜中になるとどこで飲んでくるのか泥酔して、喚きながら部屋に戻ってくるのだそうで、家族からも疎まれている状態でした。
今は一家離散状態のようです。
父親の家系の血を一番濃く引いたと取れる容姿の特徴は、いわゆる陶器のように抜ける白い肌の美形で、とんでもない霊感の持ち主の友人は、女性なので大丈夫だと思います。
男兄弟がいらしたはずなので、彼がどうなったのか……音信不通だそうです。
(了)