短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

記憶統失【ゆっくり朗読】3244

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正月に小学校の同窓会があった。そこであったちょっと変な話。

2015/01/03(土)16:32:17 ID:cKb

私は小学校の頃いたずら好きで、人を驚かせたり物を隠したり壊したりするクソガキだった。

先生にもしょっちゅう怒られてたし、クラスメイトにもさけられてたりする問題児だった。

そんな中、いつも私に話しかけてくる子がいた。麻実子だ。

麻実子はクラスの中心にいるような女の子で、いわゆるみんな仲良し!なタイプで優等生だった。

仲間はずれ良くない!ぼっちには話しかける!というような偽善的な態度が嫌で、私は彼女をあまり好きではなかった。

そんなこんなで小学校を卒業し、中・高校と進むにつれ、私は普通のおとなしめのタイプに変わった。

麻実子とは小学校卒業後、一度もクラスが同じになることはなく、話をすることもなかった。

そして、十数年ぶりに同窓会があった。

久しぶりに会った旧友と話すうちに、小学校時代の思い出話になった。

私「いやー懐かしいねー、小学校時代いたずらばかりしててさー、黒歴史だわー(笑)」
みんな「あー、麻実子ねー、あの子ひどかったよねー」

私「?麻実子がどうかした?」

みんな「え?」

なんか会話が噛み合わない気がする……?

みんなに詳しく聞くと、小学校時代いたずらをしていたのは麻実子ということになっていた。

男子の上履きに画びょうを入れたのも、トイレの個室にいる子に水をかけたのも、男子に足を引っ掛けてガラスに飛び込ませてしまったのも、すべて麻実子がしたことになっていた。

不思議なのが、私を直接叱った担任の記憶も麻実子を叱ったことになっていた。

私がガラスに突っ込ませた男子の記憶すらも。

麻実子は同窓会には出席していなかった。

中学二年頃から不登校になって引きこもりになっているらしい。

みんなの中心にいた麻実子のことをみんなが

「あの子はおかしかった」

「昔から嫌いだった」

「小学校時代からぼっちだった」

と悪口三昧。

みんなの話を聞きながら、私の記憶がおかしいのか、みんなの記憶がおかしいのか本気で分からなくなった。

小学校卒業して麻実子が変わってしまったのか、私の記憶がおかしいのか、オカルト板でよくある異次元に飛んでしまったのか。

人の記憶なんてあいまいだけど、ここまで改変されていると何が真実なのかわからなくなってしまった。

ちなみに私の小学校の時の立ち位置は、基本的にどこのグループにも属さないぼっちだけど、話すと意外と面白い子、というポジションになっていた。

今も微妙に混乱中……こんなことってあるんでしょうか?

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いろいろ思い出していたら変なことに気付いた。

男子に足を引っ掛けてガラスに飛び込ませてしまった件で、その男子は腕をガラスで切ってしまいケガをした。

担任は一時間以上私を叱り続け、怒り心頭に「親に電話する!!」と宣言し、私を帰宅させた。

ガクブルしながら家に帰ると、両親はいつもと変わらない態度だった。

まだ担任から連絡が来ていないのだろうと思い、暗い顔をしながら夕飯を食べ、風呂に入り、就寝した。

結局その日、担任から連絡がくることはなかった。

次の日、登校すると担任が「おはよう」といつもと変わらぬ態度で話しかけてきた。

ケガをした男子も腕に包帯を巻いて登校していた。

昨日の事故の事を口にしないのは、生徒が気持ちを引きずらないように気を使っているのだろうと思ったし、私自身も下手に口を出しやぶ蛇になることを恐れ、事故に関して何も言うことはなかった。

両親や担任から何か言われることはその後もなく、しばらくたつと大人同士で話がついてしまったのだろうと考えるようになった。

そのうち、そんなことも忘れてしまっていたのだが、ケガをした男子が同窓会で話したことによると、どうやら麻実子の両親から謝罪と治療費をもらったらしい。

男子の腕にはケガの跡が残っていたし、事故そのものはあったのは間違いないのだが……

本当に自分の記憶に自信がなくなってしまいました。

(了)

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