短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

解体されたおうち【ゆっくり朗読】3500

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お祓いに行く前に書いておきます。

195 :本当にあった怖い名無し:2015/06/08(月) 10:57:11.09 ID:5IIaiwLj0.net

今年の二月頃、向かいの家が解体されることになり、不動産屋からお知らせの手紙が投函されていました。

そこに、『解体に当たり、所蔵されている掛け軸や書物等多数あるのでご覧になりたい方はお越しください』とありました。

向かいの家は大手企業の重役を務めらた方がお住まいだったようですが、わが家が新築された時から空き家になっておりました。

興味本位で行くと、散らかった部屋の書斎らしきデスクに骨壺が置かれていて驚きました。

驚いた私に、不動産屋は中は何も無いと言っていましたが、察しがつきました。

おそらく、これだけの邸宅に住みながら引き取り手がいない、晩年の寂しさが伝わるような思いがしました。

遺品から家人が高尚なお方だったこと、奥様も教養の高いお方であったことが伝わりました。

そして手紙や写真……何もかも手つかずでした。

不動産屋は、掛け軸等の公開というよりは、勿体ないので遺品を近所の方に差し上げたいという事でした。

そして、私はその中でいくつも品を持ち帰りました。

持ち帰れそうな遺品を探す中、和服箪笥の中のようなお香の匂いが家中に広がっていました。

家の中を隈なく良い品を探しましたが、唯一寝室だけは窓を閉め切り中を拝見することは出来ずにいました。

その後、持ち帰った遺品の掛け軸を改めてみると、『南無阿弥陀仏』と書かれたものがあり、さすがに気味悪く、こっそりと娘に返させに行かせました。

実は遺品に価値のあるものもあり、気味が悪いのですぐにお金に変えてしまいましたが、その後から私は君が悪くて精神的に不安定になり、稀にみる不調をきたしました。

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その後、いよいよ解体が始まり家の取り壊しが始まりました。

わが家の窓からその様子を覗くと、私が足を踏み入れることなかった寝室のベッドが運ばれている時でした。

その夜、ふと家から出ると、あたり一面に向かいの家に漂っていたお香の匂いが、暗闇の中で、雨上りの土の匂いのように、はっきりと広がっていました。

家はちょうど半壊になっており、まるで最後の断末魔のようで、私は逃げるように家に戻りました。

ただ、売ることなくわが家に残している頂いた遺品も、変わらずあの家の匂いを放っていました。

そして、私は母にやろうと置いていた遺品を幾つか母にあげました。

その時に、母に向かいの家について色々と語りました。

死んだら、おしまい……大切な宝物も全部、あの世には持っていけないんだね……なんて事をです。

それからしばらくして母が亡くなりました。

母が亡くなったのは先日のことです。

ベッドで一人寂しく亡くなりました。

六月十二日、母の病院の受診予定でした。

その日は私は保険組合の健康診断に行かねばならず、付き添いを断り母をがっかりとさせました。

そして、六月十二日は娘の懇談の予定を入れられ、それは断りましたが、母に「なんで六月十二日ばかりに予定が入るんだろう?」とぼやきました。

それが母との最期の思い出です。

すっかり気味が悪くなったので、お祓いをお願いしましたら六月十二日にと言われ心臓が止まる思いでしたが、健康診断のために断りました。

何よりも、一番嫌なのが、娘の誕生日なのです。

ちなみに、息子の誕生日が納骨の日です。

因果因縁とはこの事なのでしょうか……

皆様なら、どう感じますか?

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1432787718/]

 

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