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短編 洒落にならない怖い話

呪われた姉妹【ゆっくり朗読】3500

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小四の時の話。

万里ちゃんのお姉さんは中学生で、首に腫瘍ができるとかいう小四にはよくわからない難しい病気で入退院を繰り返していた。

家に遊びにいくとたまにお姉さんもいて、『こんにちは』くらいは話したことがあった。

髪が長くて、いつもなんだか顔色が悪く、喉の少し下がぼっこりと膨らんでいたのを覚えている。

そのうち、万里ちゃんがクラスでいじめられるというか、特別視されて孤立していくようになった。

二人組を作るとあぶれてしまう、みたいな。

悪い噂で、万里ちゃんもそのうちお姉さんみたいに首に気持ち悪いコブができてくるらしいよ~とか。

万里ちゃんのお父さんもお母さんも首に気持ち悪いコブがあるらしいよ~気持ち悪いね!とか……

万里ちゃんと仲の良かった私はお母さんにも会ったことがあったし、そんなことないのは知っていたけど、お姉さんの様子は確かに小四の私にはちょっと怖い、気味の悪い感じだったので、周りに合わせて少し万里ちゃんからひいていた。

ある日、万里ちゃんから、新しいゲームを買ったからうちに来ない?と誘われた。

万里ちゃんと遊ぶのはひさしぶりだったが、お姉さんのこととかクラスの子に見られたらどうしようとか考えて、う~ん……とためらったが、万里ちゃんのことが嫌いなわけではないので行くことにした。

万里ちゃんと新しいゲームをしておやつを食べて……楽しくあそんだ。

トイレに行きたくなり、

「万里ちゃん、おトイレかしてね!」

万里ちゃんの部屋は2階にあり、トイレは1階の玄関前。

何度か借りたことがあったから知っていた。

用をたして万里ちゃんの部屋に戻ろうとしたとき、玄関の前にお姉さんがいた。

「あ……こんにちは……」

お姉さんはいつものようにすこし顔色が悪く、けどいつも通りに「こんにちは」って。

部屋に戻ろうと、すると珍しくお姉さんが私の名前を呼んだ。

「ひろみちゃん」

「はい」

「万里といつも遊んでくれて、ありがとうね。万里は大事な妹だから……」

「あ……はい」

そんな会話をして部屋に戻った。

戻ると万里ちゃんがゲームですごい点数を出していて、お姉さんのこととかすっかり忘れてゲームに夢中になった。

門限まで遊んで家に帰り、夕飯を食べ、寝る支度をしていたとき、家の電話が鳴り、母が出た。

「あら、こんばんわ、今日はひろみがお邪魔したそうで…」

万里ちゃんのお母さんらしい。

「ええ……ええ……えっ!!まぁ、まぁそんな、まさか……」

母の声で何かがあったことが伺えた。

「…そうですか……御愁傷様でございます……」

御愁傷様……?

誰か亡くなったときに使う言葉だよね?

お姉さん病気だったから、亡くなったのかな……

なんて適当に想像して母を見てた。

電話を切って母が教えてくれた。

「ひろみ、よく聞いてね……あのね、万里ちゃんが、亡くなったって」

え?万里ちゃんが?

「さっき事故で……病院に運ばれたけど間に合わなかったって……」

「えっ、嘘、だって今日遊んだよ?何で事故……」

「はるみちゃん(お姉さん)の具合が悪くて、お母さんは一日病院で付き添ってたんだって……」

後から聞いた情報も交えて書きます。

お父さんは仕事で遅くなるし、お母さんはお姉さんに付き添わなくてはならず、お母さんは万里ちゃんに電話をして、夕飯はコンビニに買いに行くように話したそう。

万里ちゃんは一人で待つ寂しさからか、今日私と遊んだことをすごく楽しかったんだよ~!とお母さんに何度も言っていたそう。

電話を切ってお母さんに言われた通り自転車でコンビニに行く途中、事故に遭った。

救急車でお姉さんの入院している、お母さんのいる病院に運ばれたけど、もう救急車のなかで息がなかったとか。

ショックで私も母も号泣してしまった。

さっきまで楽しくあそんだ万里ちゃん……もう死んじゃったなんて……

と、その晩はうとうとはするものの眠れないままでいた。

今日万里ちゃんと遊んだときに話したこととか、一緒に食べたおやつのこととかいろいろ考えていて……気がついたんだ。

お姉さん、入院していた……?

お姉さん、確か家に居たよね……話したよね……

あのあと、具合が悪くなったのかな……と、考えた。

なんだか怖くて寒気がして、一晩眠れず、私は翌朝熱を出して学校をやすんだ。

万里ちゃんのお通夜はその次の日の夕方だった。

私は熱も下がり、母とお通夜に参列した。涙が止まらなかった。

学校で万里ちゃんの陰口を言っていた子も先生もみんな泣いていた。

万里ちゃんのお母さんは泣きながらも私を見つけるとそばまで来て、

「ひろみちゃん、ありがとう。万里ね、すごく楽しかったって電話で言ってたのよ。最後に楽しい思い出をくれてありがとうね……」

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その次の日、万里ちゃんはお骨になってしまった。

1週間くらいして、また万里ちゃんのお母さんから電話があった。

今度はお姉さんが、息を引き取ったと……

母と万里ちゃんのお姉さんの葬儀に参列した。

うちの母も、立て続けに娘を二人失った万里ちゃんのお母さんを思い、できる限り手伝おう、と葬儀の受付とかを手伝っていた。

その後しばらくたって、万里ちゃんのお母さんからまた電話があった。

離婚をして、実家に帰るため、家を処分するんだとか。

その前にお世話になったうちの母と私に挨拶をしたい、と。

家に行くと、玄関やリビングはもうすっかり片付いていた。

お母さんといろいろ話した。

お姉さんは万里ちゃんが事故に遭う数日前から入院し、もう長くはないと医者に言われていたんだとか。

「もしかして一人で逝くのが嫌だったはるみが、万里を先に逝かせたのかしら…」

と万里ちゃんのお母さんが言った。

ゾッとした。

そういえばあの日、この家で、入院していたはずのお姉さんに会ったのだ。

「大事な妹だから」

大事な妹だから、連れていったのだろうか……

万里ちゃんのお母さんは、もういらないからとあの日遊んだ新しいゲームとその他のソフトを貰ってくれないか、と私に言った。

うちの母も、もらってあげたら供養になるよ、貰いなさい、と。

言われるがままもらうことになった。

家に帰り、ゲームソフトを眺めていた。

四角いプラスチックのカゴに入った8本のゲームソフト。

万里ちゃんと遊んだ新しいゲームソフトもあった。

遊んだことのないやつも2つあった。

どんなゲームだろう、と後ろを見たりして開けてみる。

すると4つに折り畳んだ紙が出てきた。

広げてみると、そこにはこんなことが書いてあった。

以下、原文ママ

お姉ちゃんばっかりずるい、お母さんはお姉ちゃんばっかり。

私はいなくてもいい子なんだね。いなくなっちゃおうかな。

お姉ちゃんのせいで学校でも友達がいない。ひろみちゃんだけが友達。

お姉ちゃんのせい。お姉ちゃんのせい。

お姉ちゃんなんて病気で早く死んじゃえばいい。早く死んじゃえ!バカはるみ!

その紙の間にもうひとつ、紙が入っていた。

白い紙を人型に切り、顔に『はるみ』、身体中に赤いペンで

『しねしねしねしねしねしねしね』

思わず悲鳴をあげた私にビックリして母が来て、それを見た。

母の目に涙が溢れて、私にこう言った。

「万里ちゃんは、寂しかったんだね……お母さんは病気のお姉さんにかかりきりで…… あんたはいいことしたんだよ、寂しかった万里ちゃんと遊んであげて、仲良くしたんだから…」

その手紙は万里ちゃんのお母さんにはつらいものだろうから、内緒にすることと、母も私もこの手紙を燃やして忘れよう、ということになった。

そして、見たくもなくなったそのゲームソフトをしまい、何年も経った去年、私は大学に通うため独り暮らしをすることになった。

部屋を片付けて荷造りをしていると、あのゲームソフトが出てきた。

あんなことがあったなぁ……と思いだし、処分する前に万里ちゃんを思いだそう、とゲームソフトを見始めた。

懐かしいなぁ……

いろいろ見ていると、あの時開けなかった、遊んだことのないもうひとつのソフトが目についた。

何気なく手に取り、開けてみた。

白い4つ折りの紙が出てきた。

デジャブのような感覚に陥り、私は紙を開いた。

以下、原文ママ

最近ひろみのやつが私に冷たくなった。

ひろみだけが私の友達だとおもっていたのに。

ひろみとはずっと友達だと思っていたのに。

どうしたらまたひろみと友達になれるだろう。

今度でる新しいゲームソフトを買ったらまた遊んでくれるかな。

それにしてもひろみのやつ、ムカつく。他の子と仲良くしてんじゃねーよ!

あいつもお母さんと同じ。私がいなくてもいいんだ。悲しい。

折り畳んだ人型に切り抜いた紙も出てきた。

恐る恐る開いてみる。

顔のところに『ひろみ』

体のところには……

『二十歳の誕生日に、しね!』

私は来月、二十歳になる……

(了)

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