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彼女のアニキが暴走族を辞めたワケ【ゆっくり朗読】5597-0101

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七年前に付き合ってた彼女のお兄さんの話。

彼女と付き合うまで知らなかったんだが、

彼女のお兄さんは中学~高二までK市では有名な暴走族だった。

が、高ニの夏から、突然暴走族をやめて品行方正になった。

「なにがあったの?」と彼女に聞いても、にやにやしながら「兄貴に聞いてみなよ」と教えてくれない。

ある日、彼女の家に遊びに行ったらお兄さんがいたので、思い切って聞いてみた。

「なんでツッパリをやめたかって?うーん、おまえなら教えてもいいか……

俺さ、高ニになってから学校には全然行かないで、毎日ゾッキーやってたんだよ。

本気でヤクザになろうと思ってたからさ、鑑別所・少年院上等ってな感じで。

で、夏休みのある日、夜中の三時ぐらいに家に帰ってきたら、居間に誰かいるんだよ。

おふくろかと思ってチラッと見たらよ……死んだオヤジなんだよ」

彼女のお父さんは、彼女が小学校低学年、お兄さんが中学の時に亡くなっている。

 

「でさ……そん時、俺はトップク(特攻服)着てたんだけどさ、

『親父?』と思った瞬間、金縛りにあっちゃったんだよ。

声出したくても声出ないし、逃げたくても指一本動かないんだ。

親父は居間の食卓に座ってさ、だまーってタバコ吸ってんだよ。

で、ゆっくりとこっち振り向いてさ……たった一言。

『いい加減にしろ』

……それだけ。それだけ言うと、親父はタバコの煙と一緒に消えてった。

俺、金縛りが解けたと同時に尻もちついちゃって、そのまま朝を迎えたんだ。

朝、お袋が起きてきて、『あんた、そんなところで何やってんの?』って言うから、

『今まで心配かけてきてごめん。もう、族やめる』って、その場で宣言したよ。

次の日、仲間のところ行って、『親父の霊に説教されたから、やめる』って言ったら、他の奴らにすんげー大笑いされたけどな。

でも、マジで怖かったんだ。今思い出しても、鳥肌が立つくらい怖かった」

 

その話を半信半疑で聞いたのち、彼女の部屋に入ると、彼女がこんな話をしてきた。

「兄貴がお父さんのオバケ見る前に、私、お仏壇で毎日お願いしてたんだよね。

『お兄ちゃんが暴走族をやめますように。真面目になりますように』って。

その頃私、いじめられててさぁ。原因は兄貴。

K市のヤンキーなら誰でも知ってるような、大不良の妹だからって。

もう、悲しくて悲しくて、これも兄貴のせいだ、いや、兄貴を育てたお父さんのせいだって恨んでたの。

だから、兄貴の話聞いた時、ざまぁみろって思った」

……結局、その二年後くらいに俺は彼女と別れて、彼女は違う男と結婚した。

でも別れたばかりの頃は、彼女の親父さんが現れるんじゃないかと、夜中はすごく怖かったっけなぁ。

(了)

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