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【意味がわかると怖い話】間違い電話 r+4,058

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都内の住宅街に、かつて住んでいた三十代の男がいた。

話をしてくれたのは、彼のかつての同僚だったという男だ。
静かに酒を飲みながら、ふとこぼしたのがこの話だった。

土曜の夜だった。
翌日が休みとあって、気が緩んでいたのだろう。
その男、朝からパチンコに行き、五万円ほどスッてしまったらしい。
金が惜しいというよりは、「競馬の資金稼ぎ」のつもりだったのが仇となったらしい。
給料日まで一週間──打ちひしがれた気分で、居間のソファに寝転がり、テレビの音をぼんやりと聞いていた。

住んでいたのは古びた一軒家。両親から譲り受けたもので、今はひとりきりの生活だった。
壁紙の縁が黒ずんで、廊下の床板が湿って鳴るような家。
日が落ちると、家の空気はしっとりと重くなる。

二十二時を回った頃だった。
電話が鳴った。家電だった。
画面に映っていたバラエティ番組を無言で睨みながら、受話器を取る。

「佐藤さんのお宅ですか?」

女の声。知らない。

「違いますけど」
ガチャ。切る。

一分も経たないうちに、また鳴る。
今度は男の声で

「よしおだけど、たかし?」

「間違ってますよ」

少し苛立ちを感じつつも、もう一度電話を置く。
が、また鳴る。三度目だ。今度は妙に粘っこい声だった。

「あの~、田中さんのお宅じゃ?」

その瞬間、背中に嫌な汗が浮いたという。
何かがおかしいと、直感が警鐘を鳴らす。
イタズラか、それとも……。

「いい加減にしてくれます?」
そう言い放ち、受話器を乱暴に戻す。
叩きつけるように。

それでも鳴る。止まらない。
次に出たときには、怒鳴ってやろうと決めていた。

「いい加減にしろ、バカヤロー! しつこいと警察呼ぶぞ!」

すると、受話器の向こうで太い声が低く笑った。

「警察?上等だ。うちから百万円も借りて逃げられると思ってんのか?」

「え? な、何の話……」
「今から行くから待ってろ。簀巻きにして東京湾に沈めてやるよ」

そのまま切れた。
受話器を持ったまま、しばらく指が震えていた。
手から冷や汗が滴っていたらしい。
急に、体の芯から力が抜けて、その場にへたりこんだ。

何がどうなっているのか、理解できなかった。
だが、これがただの悪戯ではないという予感だけは、嫌に確信をもって胸に沈んでいたという。

数分後、チャイムが鳴った。

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン……

執拗に、無慈悲に。

玄関のドアノブがガチャガチャと暴れ始めた。
鍵は掛かっていたが、金属が軋む音が異常なほど耳についた。
ドアを叩く音。拳骨のような鈍い打撃音。
そして、あの声。

「開けろコラ、いるんだろ?」

一人ではない。
「おい、お前、裏に回れ」
背後の窓まで包囲されている。

這うようにして和室の押し入れへ逃げ込んだという。
布団の陰に身を沈め、耳を塞いだ。

それでも、音は届く。

ドン、ドン、ドン!

手の平で耳を押さえ、うわ言のように呟く。

「ちがう……ちがう……ちがう……」

するとまた、電話が鳴った。
この家の、古い黒電話から。

《トゥルルー……トゥルルー……》

留守電が起動し、スピーカー越しに声が漏れた。

「もしもし、吉田だ」
「居るんだろ? 悪かったな」
「今、人は間違い電話を何度も受けると、どんな心理変化を起こすか、迷惑がらずに何回まで冷静に対応できるか、実験してたんだよ」
「そこで、悪いけど鈴木に協力してもらったってわけ。詳しくは月曜、学校で話すわ」
「じゃ」

音声が途切れる。
そして……

「おい、もういい。窓、割れ」

ガシャン!!

ガラスが砕け散る音。
悲鳴すら上げられなかったという。
そのまま意識が飛んだのか、記憶が抜けている。

この話をした男は、それっきり彼と連絡が取れなくなったらしい。
電話も、家も、そのまま残されていたそうだ。

ただ一つ、おかしなことがある。
彼のフルネームは「田村達也」。
“鈴木”では、なかった。

──そして、あの家の電話線は五年前に止められていたのだという。

[出典:676 間違い電話 2009/06/28(日) 00:08:33 ID:A2t2ly3iO]

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