明日は日曜日で仕事休という土曜の夜。
676 間違い電話 2009/06/28(日) 00:08:33 ID:A2t2ly3iO
今日も休みだったわけだが、朝からパチンコして五万円も負けてしまった。
明日の競馬の資金稼ぎと思ったのが間違いだったようだ。
給料日まで一週間か…また前借りするか……
などと考えながら、俺はテレビを観ながらくつろいでいた。
親から継いだ一軒家に独りで居る。
その親も亡くなって今は居ない。
家の電話が鳴った。出ると
「佐藤さんのお宅ですか?」
「いえ、違いますよ」
よくある間違い電話だった。
一分ほど経った頃、また電話が鳴る。
先ほどとは違う声で
「よしおだけど、たかし?」
「……番号間違ってますよ」
またかよと思いながら電話を切る。
そして、また電話が鳴った。
俺は少し苛立ちながら「はい?」と不機嫌な声で出た。
今度は女の声で
「あの~、田中さんのお宅じゃ?」
「なんかの嫌がらせ?いい加減にしてくれるかな」
《《 ガチャッ!! 》》
叩きつけるように電話を切る。
間髪いれず電話が鳴った。チッ、取ると言ってやった。
「いい加減にしやがれ、バカヤロー!しつこいと警察に言うぞ」
ドスの効いた声が返ってきた。
「警察?上等だ!うちから100万円も借りてて、逃げられると思ってんの?」
「……」
「今から行くから待ってろ。簀巻きにして東京湾に沈めてやるからよ」
「ぃ、いや、違うんで……す…」
《 ツーー…… 》
電話が切れた。
震える手で受話器を置く。
腹から力が抜けていく感じがして、膝がガクガクした。
立っていられなくなった。
全身から汗が吹き出し、寒さを感じてくる。
頭が真っ白で逃げるという考えも浮かんでこないでいた。
ただ電話を見つめたまま、フリーズしていたのだった。
それからしばらくしてチャイムが鳴った。
《ピンポーンピンポーンピンポーン》
ビクッ!その音に俺は我に還った。
ドアノブがガチャガチャガチャ
鍵は掛けてある。
ドアをドン、ドン、ドンと叩きながら、先ほどのドスの効いた声が聞こえてくる。
「居るんだろ?開けろコラ!」
早過ぎる。どうやら近くまで来て、携帯から電話してきてたようだ。
「おいお前、逃げられないように裏へ廻れ」
二人以上で来たのは確実になった。
「開けろや!」
《ドン!ドン!ドン!》
腰が抜けて立てない。
少しでも音から遠ざかりたくて、這って押し入れに逃げ込んだ。
《ドン!ドン!ドン!》
耳を塞いでいても聞こえてくる。
俺は震えながら
『ちがうちがうちがう』
何度も声に出して言う
『ちがうちがうちがう』
《トゥルルー》
ドキッ!!電話が鳴った。
《トゥルルートゥルルー》
出ないでいると、留守録に繋がる。
「もしもし、吉田だ」
「居るんだろ?悪かったな」
「今、人は間違い電話を何度も受けると、どのように心理変化していくか、迷惑がらずに何回まで冷静に対処出来るか、心理学上のデータ集めてるんだっ」
「そこで悪いと思ったが、鈴木にサンプルになってもらった訳だ。詳しくは月曜に学校で話すよ。じゃ」
切れた。
《ドン!ドン!ドン!……》
「おい、かまわねーから窓割れ」
た・す・け・て……
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俺、鈴木でもない……
(了)