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地獄の家 r+10,050

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小学校の頃、マサルという友達がいた。

よく遊んでいたし、良いやつだった。ある年の誕生日会に呼ばれ、リビングに通された。部屋は暗く、マサルは泣きそうな顔をしていた。

カーテンを開けたマサルの母親の後ろには、ベランダで干された濡れた布団があった。母親は笑いながら、マサルのおねしょの話を始めた。

それがどれだけ大変か、どれだけ恥ずかしいことか、延々と語り続けた。その誕生日会は、マサルの母親の自慢話と嘲笑の場となった。

翌日から、マサルは「オネション」と呼ばれるようになった。

またある日、マサルの家で遊んでいると、母親が怒鳴り込み、手には答案用紙を握っていた。ほぼ満点の答案だったが、一つだけ間違いがあったらしい。

俺の答案は半分が間違いだったから、怒鳴られることには慣れていたが、マサルは目の前で往復ビンタを食らった。母親はニタニタ笑いながら、「ケンイチ君はこんな間違いしないわよね?」と言った。

俺は黙って、自分の答案用紙を見せた。母親は勝ち誇ったように笑い、「お母さんはどういう教育をなさってるのかしら」と呟いた。

マサルはよく体育を休んだ。喘息持ちの俺が最後尾を走る姿すら、羨ましそうに見つめていた。学業では優秀だったが、だんだんと答案を白紙で提出し、校長室に呼び出されるようになった。

中学二年になる頃、マサルの友達は俺だけになっていた。夏場でも長袖を着ていたし、俺は何が起こっているのか気づいていた。何度も教師に訴えたが、マサルは何もないと言い張った。

ある日、マサルの母親が学校に乗り込み、俺のクラスまでやってきて、いきなり俺の首を絞めた。「嘘つき!嘘つき!」と叫ばれながら意識が遠のいていったが、問題にはならなかった。その日以来、マサルは俺にも声をかけなくなった。

やがて、マサルが起こした事件がテレビを賑わせた。テレビの中で母親は、「しかるべき罰を受けるべき」と言い放った。その言葉に俺は怒り狂い、テレビ局に連絡して、マサル側の弁護士の連絡先を聞き出した。そして証人として立つことを決意した。

法廷では、かつての校長やマサルの父親までもが証言した。そこで明らかになったのは、壮絶な虐待の数々だった。恒常的な暴力、性的虐待、公衆の面前での辱め――マサルの家は、まさに地獄だった。

母親の罪状が確定すると、彼女は表向き被害者に詫びるとして自殺した。しかし本当の理由は、時効を迎えた過去の犯罪歴が公に晒されることを恐れたからだろう。

マサルは事件後、病院に収容された。ベッドの上からほとんど動かず、筋肉が衰え、もはや立つことすらできない。時折、正気に見えるときがあるが、その瞬間、自傷行為を始めるのだった。「おんなじ!おんなじ!」と叫びながら。加害者となった自分を許せないのだ。

被害者の遺族からの手紙には、「許す」という言葉が綴られていた。しかし、何度それを伝えても、マサルは決して喜ばなかった。

彼は、生きている限り、償わなくてもよくなった罪を償い続けるのだろう。

地獄の家は崩壊した。しかし、地獄は彼の心の中に残り続けるのだった。

[出典:705: 本当にあった怖い名無し:2010/06/27(日) 12:59:29 ID:dSWMMDU50]

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