ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 r+ 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

白い文字の前にあったもの rw+1,851

更新日:

Sponsord Link

十九年前、クラスの女の子・加代子が突然いなくなった。

優等生で、俺とも普通に話す間柄だった。衝動的に家出をするような性格じゃない。だからその日、学校が終わるなり、俺たちは自然と彼女を探し始めた。

話を聞いて回るうちに、近所に住む幼なじみの先輩も、同じ頃から姿を消していることがわかった。大人たちは「駆け落ちだろう」「若気の至りだ」と軽く言ったが、どちらの友人も首を横に振った。加代子は何かあれば必ず家に連絡する。先輩も、人を巻き込むような人間じゃない。

五日目の夜、加代子の家で一枚のメモが見つかった。

「追いかけられている」

短い一文だった。筆跡は間違いなく加代子のものだった。それを見た瞬間、空気が変わった。警察も消防団も本格的に動き出し、俺たちはただ不安で立ち尽くしていた。

だが、加代子の母親だけが首をかしげた。

メモは台所のテーブルの真ん中に置かれていた。母親はその数日、ほとんど寝ずにそのテーブルに座り続けていたという。トイレと仮眠以外、席を外していない。そんな場所に、いつの間にかメモが現れていた。

「加代子が戻ってきたなら、声をかけるはずなのに」

母親はそう言って、家中を探した。押し入れ、屋根裏、床下。どこにもいなかった。

それから数日後、休み明けの授業中だった。

先生が黒板に文字を書き、「ここを書き写して」と言った、その直後だった。白いチョークの文字の下から、赤い字が浮かび上がるように現れた。

「もう一度警察に行きます。だめならメモします。加代子」

教室が静まり返った。誰も動かなかった。赤い文字は、明らかに白い文字より先に書かれていた。先生はしばらく見つめてから、「加代子の字だな」とだけ言い、授業を続けた。

それ以降、その話題は誰も口にしなかった。

数日後、警察が二人を保護したという知らせが入った。生きていた。それだけで、周囲は安心したようだった。家出だったのかと聞いても、二人は曖昧に笑うだけで、詳しいことは話さなかった。

俺は放課後、加代子の家に立ち寄ったが、「疲れて寝ている」と言われ、会えなかった。

帰り道、自転車を押して歩いていると、前カゴに紙切れが入っているのに気づいた。

見覚えのある字だった。いくつかの場所の名前が、点々と書かれている。加代子のメモだった。

家を出るとき、カゴは空だった。お菓子を入れようか迷ったくらいだ。紙切れがあれば、絶対に気づいている。

それでも、そのメモを誰にも見せなかった。なぜか、見せてはいけない気がした。

後日、加代子にそれとなく聞いても、「家出だよ」としか言わなかった。先輩も同じ答えだった。二人の話は細かいところで食い違っていたが、誰も追及しなかった。

あの黒板の文字についても、誰一人として説明しなかった。

同窓会でも、その話題は一度も出ない。まるで、最初から存在しなかった出来事のように。

最近、行方不明の女子高生が神社で発見されたというニュースを見たとき、不意に思い出した。

加代子は言っていた。
「あのメモは、確かに自分が書いた」

だが、いつ、どこで、どうやって書いたのか。
黒板の下に。
誰も触れていない自転車のカゴに。

その答えを、俺は今でも聞いていない。

(了)

[出典:826 :本当にあった怖い名無し:2013/09/29(日) 19:45:45.79 ID:8IMslosU0]

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, r+, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2026 All Rights Reserved.