これは、ある男性が少年時代に体験した奇妙な出来事を語った話だ。
話の舞台は、彼の家の近くにある大きな池。その池は周囲が遊歩道になっており、池側にはフェンスが設置され、普通は中に入れないようになっていた。しかし、それでもフェンスを越えて池に足を入れ、釣りを楽しむ人々が時折現れたという。
ある日、彼は暇を持て余しながら池のそばで時間を過ごしていた。池では、四人の釣り人がフェンスを越え、水辺で釣りをしていた。それぞれ距離を置いており、互いに面識がないようだった。彼は「こんな場所で釣りをしても、大した魚は釣れないだろうに」と、ぼんやりと釣り人たちを眺めていた。
しばらくして、突然池に大きな石が投げ込まれたかのような「ドボンッ」という大きな音が響いた。その音に驚き、釣り人たちも周囲を見回したが、池のそばには彼しかおらず、釣り人たちの怒りの視線が彼に向けられた。その時、彼は釣り人が一人減っていることに気付く。しかし、彼も、残った釣り人たちも「釣れなくてイライラして帰り際に石を投げたのだろう」と、それ以上深く考えることはなかった。
さらに時間が経ち、再び「ドボンッ」という音が響くと、もう一人の釣り人がいなくなっていた。今度は残った二人の釣り人にも明らかに動揺が広がり、一人は急いでフェンスを越えて遊歩道に戻ろうとした。
その間、彼は最後に残った釣り人を見ていた。その釣り人の竿が突然大きく引っ張られ、「ついに魚が釣れたのか」と期待を抱いた。だが、次の瞬間、竿の反応が消え、糸を引き上げると餌が綺麗なまま残っていた。不思議そうな顔をする釣り人を見ていた彼は、突然また「ドボンッ」という音を聞いた。気が付くと、釣り人は跡形もなく消え、釣り竿だけがぽつんと残されていた。
それは、まるでバラエティ番組で床が突然開いて人が落ちるかのような光景だったという。理解が追いつかないまま、彼は遊歩道に戻った釣り人にその出来事を説明した。後日、大人たちによる捜索が行われたものの、池からは何も見つからなかった。その出来事は「子供の白昼夢」と片付けられたが、釣り人は彼の言葉を信じていた。
後になって、近所の老人たちが「昔にも似たようなことがあった」と話しているのを耳にした。どうやらこの池では、古くから人が突然消えるという奇妙な噂があったらしい。「カッパのようなものの仕業ではないか」と言う者もいた。
あれから十数年の間は何事もなく平穏だった。だが、最近になって近所の子供が池で遊んでいた際、友達が消えたと言い出した。それを聞いた彼の胸に、あの日の奇妙な記憶が再び蘇り、不安が静かに広がっているという。
(了)
[出典:32 本当にあった怖い名無し 2012/07/11(水) 02:47:00.76 ID:Isw82vRT0]