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イタコの言葉 r+2236

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これは青森県津軽地方に住む方から聞いた話だ。

津軽地方には、恐山のイタコと同じく「イタコ」がいるという。恐山で知られるイタコは、少なからずテレビ番組などで取り上げられ、「インチキじゃないのか」と思われることも多い。

だが、この土地のイタコはそんな派手なものではない。視力を失った女性が特殊な感覚を研ぎ澄ませ、精霊の声や亡き人の魂と向き合う者として、地域の年配者にだけ知られる存在である。

その友人の祖母も、数少ない津軽イタコの一人だった。普通の占い師のように近所の人たちの相談に応じ、失くし物を見つけるなどの助言をすることが多かったが、時には魂を降ろし、故人の声を伝えることもあった。

数年前、ある津軽の市で、市議会議員が惨殺された。事件は全国ニュースにもなり、殺人犯がいまだに捕まっていないことが連日報じられていた。

そのニュースを観ていた友人がふと、「おばあちゃん、こういう人の霊を呼び出して犯人を探ることってできないの?」と、軽い気持ちで尋ねた。いつも不思議な力を見てきたせいか、友人にはそれがまるで出来ることのように思えたのだ。

だが、おばあちゃんは少し考え込んだような顔をしてから、ゆっくりと首を振り、「いつも身に着けていたものがないと、その人の霊は呼び出しにくいんだよ」とだけ言った。その瞬間、話はそこで終わると思われた。

だが、少し間をおいて、おばあちゃんはさらに神妙な声で言った。

「…たとえ縁のある物があっても、この人の霊は呼び出せないよ」

不思議に思った友人が「どうして?」と聞くと、祖母は目を閉じ、しばらくの沈黙の後、言葉を慎重に選ぶようにして答えた。

「この市議会議員は…多くの人に恨まれて死んだから、魂が地獄に堕ちてしまっている。そんな魂は、現世に戻れないんだよ」

驚愕し、言葉を失う友人の耳に、おばあちゃんの低い声が響く。

「この人は貸金業もしていたそうだね。たくさんの人を追い詰めて、恨みを買っていたんだろう。一人だけの恨みじゃない、何十人もの恨みが渦巻いている。実際に手を下した犯人が一人だとしても、こんな強い怨念に取り囲まれている限り、犯人を示す証拠も出てこないし、誰も証言なんかしないだろうね。多くの怨念が殺したのと同じだから、きっとこの事件は永遠に解決しないんだよ」

その話を聞き、友人は凍りつくような恐怖に包まれたそうだ。亡者の魂すら手が届かぬ場所へ堕ちていく――人々の憎しみが積もり積もって、魂が地獄に縛られるなど、誰が想像できただろうか。

※なお、津軽弁では少しわかりづらいとのことで、会話は標準語に再構成した。

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