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夜更けの訪問者:消えた母と残された声 r+4402

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これは、ある女性から聞いた話をもとにしている。

彼女はかつてキャンギャルやイベントコンパニオンをしていたが、華やかな仕事に嫌気が差し、今では毎日すっぴんで過ごしているという。

その友人の一人もまた華やかな仕事をしていたが、ある日、不気味な事件が起こった。その友人が住むマンションの部屋(1Kの三階)に空き巣が入ったのだ。しかし奇妙なことに、壊された窓の鍵を除けば、取られたものは何もなかった。警察も首をかしげ、友人も不安だったが、忙しさから引っ越しは先延ばしにし、不動産屋が鍵を交換するだけで済ませてしまった。

ところがそれから3か月後、空き巣の犯人が突然自首してきた。事情を聞いた警察からの連絡で、さらに異様な事実が明らかになる。犯人は友人の部屋に盗聴器を仕掛けていたのだ。驚いた友人はその後の手続きを済ませ、犯人の親族から届いた謝罪の手紙を受け取った。警察からも説明があり、その内容に友人は背筋が凍りついたという。

犯人は向かいのマンションの住人で、ベランダに干された服から若い女性の一人暮らしだと断定し、物盗りではなく純粋に盗聴が目的だった。しかし、盗聴器を通じて聞こえてきたのは、その友人の声だけではなかったのだという。夜になると時折、部屋にはいないはずの赤ん坊の泣き声が聞こえるようになったそうだ。その泣き声は日を追うごとに強まり、しだいに定期的に女性の囁き声までもが混じり始めた。だが友人は当然のことながら赤ん坊など飼っておらず、また子どもがいる気配もなかった。

ある日から、盗聴器に近づくかのように「赤ん坊を抱く女性の声」がささやくように聞こえた。それが何か呪いのように思えて、やがて犯人の夢にまで現れるようになった。夢の中で、髪を乱した女が赤ん坊を抱え、部屋の隅でじっとこちらを見つめている。目が合った瞬間、背中に凍えるような冷気が走った。夢から覚めると、いてもたってもいられなくなった犯人は、震える手で自ら警察に駆け込んだ。

友人が警察からの説明を聞き、不動産屋にその件を問い詰めると、前の住人は赤ん坊を連れたシングルマザーだったことが分かった。そして、その住人はある日、家財道具を残したまま忽然と行方を絶っていたという。

この話を聞いた彼女は、「それってもしかして守護霊なのかな?」と友人に冗談を言ったが、友人は怯え切った表情で首を振り、しばらく彼女の家に泊まった後、すぐに新しい部屋へと引っ越していった。

その友人は今、何事もなかったかのように再びレースクイーンとして元気に働いているという。嘘のような本当の話、舞台は総武線沿線のちょっと洒落たマンションだったという。

別の話だが、同じように怪奇現象に見舞われた女性がいた。

彼女の話もまた、恐怖の片鱗を感じさせるものであった。

10年以上前、当時仲良くしていた職場の同僚が引っ越してから2日後に無言電話が頻発するようになり、送り主不明の手紙もドアポストに投げ込まれるようになった。手紙の内容は彼女の私生活をまるで見ているかのように詳細に綴られていたため、彼女はストーキング被害を疑い、相談を持ちかけてきた。

3日後には電話の内容も変わり、彼女の部屋での行動や友人の名前を挙げ、ますます不気味さを増していった。そこで盗聴バスターの専門業者を呼び、彼女の1LDKの部屋を隅々まで調べると、寝室、リビング、浴室の電気コンセントの内側から盗聴器が3つ発見された。

業者の手際は見事で、事前に言葉を交わすことなくホワイトボードに筆談し、ジェスチャーだけで指示を伝え合っていた。プロの慎重な対応により盗聴器はすぐに撤去せず、そのままの状態で警察に通報した。なぜなら、不動産屋の担当者が疑わしかったからだ。

その不動産屋は引っ越しの際、彼女が他の物件を希望していたにも関わらず、特定の物件を強く推し進めてきた。しかもその物件に限り、家賃の値引き交渉までも積極的に行うほどだったので、あまりに不自然だった。警察はこの情報から不動産屋の担当者に疑いを向け、調査を進めた結果、その担当者が盗聴器を設置し、ストーキング行為をしていた事実が発覚した。

だが、奇妙なことに彼の供述にはさらに不可解な点が含まれていた。その盗聴記録の中には、毎晩1時半頃に「ただいま……帰ったよ」という男の声が録音されていたという。彼女の部屋にはもちろんそんな男がいるわけもなく、彼女自身も知らない声だったため、恐怖を感じた彼女は引っ越し先でお祓いを受けることにした。

その後、美しい彼女は無事に結婚し、二児の母となり穏やかな日々を送っているが、旦那の「ただいまー、帰ったよー」という挨拶を聞くたびにふと首をかしげているという。それはかつて盗聴記録で聞かされた声にどこか似ていたからだ。

旦那は大手企業のエリートで、温和で家族思いの良き夫だが、彼女がその声を聞くたび「あの声って、こういう声だったのか……」とつい考えてしまうという。

それが一体何を意味するのか、彼女にもわからない。

(了)

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