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ワラズマの謎と《お指さま》の秘密 r+4673

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幼い頃の奇妙な邂逅

幼少期、田宮家(仮名)という遠い親戚の家に毎年のように泊まっていた。夏休みが来ると、田宮家の大きな日本家屋で数日を過ごすのが恒例だった。血の繋がりはないが、両親が親しい間柄だったため、俺は自然とそこに溶け込んでいた。

あれは俺が四歳の夏だった。昼過ぎに遊び疲れ、仏間の隣の部屋で昼寝をしていると、耳元で「ポタッ、ポタッ」という音がした。眠気を引きずりながら音の正体を気にしていると、何かが畳の上をズルズル動く気配を感じた。それでも体が重く、そのまま寝続けていた俺の頬に何かが触れた。

反射的に手で払いのけた先にいたのは、白くて大きな幼虫のようなものだった。虫好きだった俺は「大物だ!」と興奮し、素手で掴み上げた。しかし、先端に堅い部分があることに気づき、「なんだこれ?」と目を凝らしてみた。

それは虫ではなく、人間の指だった。白く細い指先は血の気がなく、爪は割れて黒ずんでいた。おそらく女性のものだろうが、その異様な姿に俺は思わず投げ捨てた。しかし、その指はただの指ではなかった。畳の上に倒れた指は、自ら立ち上がり、跳ねたり揺れたり、まるで踊るような動きを見せたのだ。

幼い俺は驚くどころか、そのコミカルな動きに笑いながら「ウッヒョーイ!」と手を叩いていた。指は俺の問いかけに応じるように動き、まるで会話しているかのようだった。「これは母ちゃんたちにも見せなければ!」と思い、指を掴んで家族の元へ向かったが、途中で指は手の中からスルリと消えた。

それでも俺は諦めなかった。「お指さま」と名付けたその指を捕まえ直そうと、部屋に戻った。案の定、お指さまは再び見つかった。しかし、今度は部屋の壁にキノコのように生えていたのだ。その奇妙な光景にも怯むことなく、俺は指を引っこ抜いた。だが、どうしてもその部屋から持ち出すことができない。手の中から逃げ出し、部屋に戻ってしまうのだ。

俺は粘った。何度も挑戦し、ついには壁の隙間を通して指を部屋の外に出すことに成功した。だが、指は廊下に出た途端に態度を豹変させた。いきなり俺の頬を引っ掻き、鋭い痛みが走った。肩にしがみついた指は、まるで慰めるようにもう片方の頬を撫でたが、その動きも不気味でしかなかった。

やがて母親と田宮家の人々が廊下に駆けつけた。それを見た瞬間、俺の意識はぷつりと途切れ、次に目を覚ましたのは自宅だった。それ以来、田宮家を訪れることはなかった。


大学生になって

月日が流れ、俺は大学生になっていた。サークルの後輩・栄子に一目惚れし、必死でアプローチしたが、彼女は俺を避け続けた。告白どころか、まともに会話をすることすら叶わなかった。その理由がわかったのは、サークルの旅行先での奇妙な出来事がきっかけだった。

歴史系の旅行サークルでの遠征中、俺たちは史跡を訪れていた。人気の少ない一角で鉢合わせた栄子と、何やら不穏な空気が漂っていた。その先に見たものは、地面を這う上半身だけの女だった。壊れたマネキンのように不完全な形のそれが、俺たちに近づいてくる。

恐怖で動けなくなった俺を、栄子は突き飛ばし、その女の目の前に倒れ込ませた。すると、女の動きが止まり、子供の頃に見た「お指さま」のように、跳ねたり揺れたりして地面に消えた。

意識を失い病院で目覚めた俺は、栄子から事実を告げられた。俺の頬についた「お指さま」の印は、俺を守る存在になっていたらしい。栄子が俺を避けたのも、その印が彼女の霊感に影響を及ぼしていたからだった。


お指さまの正体

「お指さま」は、田宮家にあった《ワラズマ》という部屋に封印されていたものの一部だった。《ワラズマ》とは、怨霊を神として祀り上げることで富と幸福を得るための部屋だ。しかし、中の霊は本来なら絶対に封印を破られてはならないものだった。

幼少期、俺が《ワラズマ》に入り込んでしまったことで、その霊が俺に印をつけ、俺を守る存在となった。だが、その代償として田宮家の繁栄は終わりを迎えたらしい。


都市に現れる指

最近、駅のホームで「お指さま」のような存在を見かけた。それは男性の太い指だったが、同じように地面を這っていた。田宮家とは関係のない都心での出来事に、俺は再び「お指さま」を巡る謎に巻き込まれたような気がした。

お指さまは、俺に何を伝えたいのだろうか。それとも、ただの偶然なのだろうか。

[出典:2012/01/14(土) 05:56:54.08 ID:UI2AIrGB0]

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