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七階のモニター rw+4,533-0220

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午前一時、私は七階建ての貸しビルで夜間警備の見回りを終え、警備室に戻った。

エレベーターは一台だけ。各階のエレベーター前には監視カメラがあり、集中モニターで常時確認できる。非常階段は外にあるが、各階の扉は内側から施錠されていて外からは開かない。

その夜は小高さんと二人勤務だった。

「四階の映像、暗くないか?」

言われてモニターを見ると、四階だけが黒く潰れていた。照明切れというより、映像そのものが塗りつぶされている。

「俺、見てくる」

小高さんが出ていく。私は日誌を書き始めた。

しばらくして、ふと視線を戻すと、四階だけでなく一階と七階の映像も黒くなっていた。三か所同時に。

カメラの不具合だと思い、私も四階へ向かった。エレベーターは途中停止せずに上がる。四階の照明は点いていた。廊下も異常はない。だが小高さんがいない。

非常扉は内側からしか開かない。鍵もかかっている。

一階に戻ると、小高さんが警備室にいた。

「四階、異常なし。カメラだな」

「さっき行ったんですよ。いませんでしたよ」

「型番見るから脚立持ってきてくれ」

私はエレベーターに乗ったが、扉が閉まる直前で手を差し込み、降りた。カメラは高い位置だ。脚立がいる。

警備室に戻ると、小高さんはいない。

脚立を持ったまま、違和感が形を持った。

さっき四階に行ったとき、なぜエレベーターで会わなかった?

このビルのエレベーターは一台だけだ。

外から非常階段で入ることもできない。

警備室の外で足音が止まった。

ガチャ。

ドンドン。

扉が震える。

「小高さんですか」

返事はない。

ドンドン。

「小高さんですか」

答えない。

私は鍵をかけ、体で扉を押さえた。モニターを見る。一階、四階、七階が黒い。

ドンドン。

衝撃が続く。

天井近くの明かり取りの窓に目が向いた。机に乗れば外に出られるかもしれない。

扉の揺れが一瞬止まった隙に、机に飛び乗り、窓を押し上げた。

すぐ目の前に顔があった。

女だった。

窓の高さは天井近い。地面からは到底届かない位置だ。それでも顔は至近距離にあった。両目の焦点が揃っていない。首が少し、傾いているというより、折れているように見えた。

視界が暗くなった。

目を覚ますと、警備室のソファだった。昼勤の二人が立っている。

私は机の上で倒れていたらしい。扉は閉まっていた。

「小高は?」

その一言で、夜の記憶が戻った。

モニターを巻き戻してもらう。

一時ちょうど、私が見回りから戻る。四階の映像は正常だ。小高さんが警備室から出る。エレベーターで四階へ。

四階の扉が開く。

小高さんの背後、画面の端に何かが映る。

白いもの。

次の瞬間、はっきりする。女だ。背中に重なるように立っている。いや、触れている。腕が肩にかかっている。

小高さんは気付いていない。

エレベーターに戻る。女も一緒に入る。

だが次に映ったのは一階ではない。七階だ。

七階のエレベーター前で、小高さんはふらついている。背に女を負ったまま、非常扉の方へ向かう。

扉を開ける。

外に出る。

女を背負ったまま。

同時刻、四階には私が映っている。小高さんを探している。

時間が重なっている。

やがて一階の非常扉の奥から、小高さんが歩いてくる。背後には何もいない。

警備室の前で扉を叩く。

何度も。

助けを求めるように。

だが七階で外に出たはずだ。

非常階段を上がると、二階のせり出した部分に小高さんが倒れていた。

七階の手すりに指紋があった。

それだけだった。

私は警備を辞めた。

あのビルは今も営業している。監視カメラは最新型に交換されたらしい。

だが映像の記録媒体は、交換前のものも一定期間保管されていると聞いた。

あの夜、一時から数分間。

四階、一階、七階の映像が黒く潰れている時間帯がある。

原因は機器の不具合と報告されている。

私はあの黒い画面の中に、何が立っていたのか、確かめていない。

確かめない方がいいと、今も思っている。

(了)

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