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天井板一枚の向こう rw+2,268

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私が小学四年生か五年生の頃、今から二十年以上も前の話だ。

夏休みに祖父母の家へ遊びに行った。古くて広い日本家屋で、子どもの私にとっては迷路のような家だった。

ある日、昼寝から目を覚ますと家の中が妙に静まり返っていた。どの部屋を覗いても誰もいない。どうやら私一人だけが家に残されているらしかった。

昼寝をしていた部屋に戻ったとき、天井から吊り下がっている大きな梯子が目に入った。収納式の階段のような造りで、普段は天井板にぴったりと収まっている。

下ろせば天井裏に上がれるのではないか。そう思い、椅子に乗って金具を外した。階段は思った以上に軽く、すぐに降りてきた。

階段を登り、天井板を押すと拍子抜けするほど簡単に開いた。初めて入る天井裏は薄暗く、小さな窓から差し込む光の中で埃がゆっくり舞っていた。古びた箱や戸棚のようなものが点在している。

最初はそれらを漁っていたが、すぐに飽きてしまい、天井裏の奥へ進んだ。箱のある区画を抜けると、梁の上に渡された板が途切れ、足元は薄い天井板だけになった。ところどころに隙間があり、下の部屋の明かりが細く漏れている。

板は今にも割れそうだったので、梁を伝って移動した。隙間から下を覗こうとしたが、狭くてよく見えない。戸棚のところまで戻り、箸を一本持ってきて隙間に差し込んだ。少しずつ隙間が広がり、下の部屋が見えた。

見下ろした部屋は、普段知っているはずの部屋なのに、家具の配置や大きさがどこかおかしく、ひどく小さく歪んで見えた。その違和感が面白く、梁を渡りながらいくつもの部屋を覗いて回った。

だが次第に、自分がどの部屋の上にいるのかわからなくなった。暗闇の中で方向感覚が狂い、急に怖くなった。ぼんやりと明るい方へ戻ろうとしたとき、天井裏の壁に小さな扉があるのに気づいた。

天井裏に扉があるのが不自然で、少し迷ったが開けてみた。向こう側も同じような天井裏が続いていた。ただ、その下から漏れてくる光は弱く、妙に薄暗い。

また箸を使って隙間を広げ、下を覗いた。広い部屋だった。だが家具は何もなく、畳の上には紙が無数に散らばっていた。人の顔のような絵や、読めない文字が書かれた紙が床一面に落ちている。畳そのものにも、白い文字のようなものが書き散らされていた。

もっとよく見ようと体の位置を変え、もう一度覗いた。今度は何も見えなかった。角度のせいかと思い、無造作に箸を突っ込んだ。

その瞬間、箸の先が柔らかいものに沈み込んだ。

直後、下からドンッと大きな音が響いた。続けて、ドタドタと激しく動き回る振動が天井板越しに伝わってきた。シュッシュッと畳を擦るような音が重なり、私の足元の天井板が下から叩かれた。叩く場所は次々に移動し、まるで何かを探しているようだった。

叫び声は聞こえなかった。

恐怖で頭が真っ白になり、私は梁を伝って階段まで走り、転げ落ちるように降りた。天井板を閉め、階段を押し込むと、そのままその場にしゃがみ込んだ。

しばらく耳を澄ませていたが、あの物音はいつの間にか消えていた。

ほどなく祖父母と両親、妹が帰ってきた。私は何も言えなかった。誰かに知られるのが、なぜかひどく怖かった。

それから何度か祖父母の家を訪れたが、あの部屋を見つけることはできなかった。天井裏に上がることも、もう二度としなかった。

数年前、祖父母は亡くなり、家は取り壊された。今では更地になっているという。

あの天井裏の小さな扉が、最初からそこにあったのかどうか、今では思い出せない。ただ一つだけ、今もはっきり覚えている。

あのとき、私が覗く前から、下に何かがいたのかどうか。それだけが、ずっとわからないままだ。

(了)

[出典:http://toro.2ch.sc/test/read.cgi/occult/1456148213/]

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