三年ほど前の話
75:本当にあった怖い名無し:2010/07/15(木) 23:41:34 ID:tHj9scAK0
高校を卒業して、工場に正社員として入社した俺は、当時三年目の若手社員だった。
その日はいつも通り仕事をしていたが、一人の上司(A)が変な物を持ってきた。
A「なぁK(俺)、これ何だと思う?」
そう言って出してきたのは、五センチ位の汚らしい人形だった。
手作り感が否めないその人形は、厚さ一センチくらいの汚らしい布製の人形だった。
俺「なんですかそれ? どこから持ってきたんですか?」
A「いや、ウェスあるじゃん。あれの中に入ってたんだよ」
ウェスとは、いらなくなった衣類を切り刻んで工場などに出されている、言わばボロ雑巾の様な感じで、何かを拭くときなどに使われる物だ。
そしてそのウェスの中にはたまに、お金やアクセサリなどが混入している時がある。(誰かが着用していた服なのでポケットの中とかに)
俺「何か気持ち悪いっすね、それ」
A「うん・・・まぁいつもの通り、この服着てた人の忘れ物だと思うけどな」
その日から、身の回りで変なことが起こり始めた。
翌週の夜勤の時、工場のラインが停止するとのことで、普段よりもシーンとした夜勤だった。
こういう工場の停止期間は、定常作業をやめて清掃や普段やらない整備作業をやるのだが、その日俺は床のペンキ塗りをやることになっていた。
薄暗い倉庫にペンキを取りに行った時、薄気味悪い倉庫の雰囲気がいつもより嫌な感じがして、俺はジトーっとした汗をかいた。
髪の長い(特に襟足)俺は襟足をゴムで縛っているのだが、誰かにグイッと引っ張られた。
俺「いだっ!!いだだ!!」
後から来た上司だった。
と言いたいところだが、誰もいない。
その瞬間、今まで体の中に潜んでいた恐怖心が、鳥肌と共にゾワァーっと吹き出てきた。
俺はペンキを床にぶちまけ、転びながら走って倉庫を出た。
俺「Aさん!!やばい!!誰か俺の!!」
A「なした? てか、顔にペンキ着けてw馬鹿じゃねーのwww」
ペンキ・・・こぼしたけど顔にかかってはいない。
詰め所に戻って鏡を見ると、三本の指の形が俺の左頬を滑らせたかのように汚れていた。
俺の顔にペンキを塗ったのを皮切りに、不可思議な現象は起こる一方だった。
・Aが一人で会社の風呂に入っていると窓が勝手に空いた
・夜勤で天井クレーンの方を見ると黒い影が落ちていった
・二人なら大丈夫だと思い倉庫に行くと二人とも誰かに押された
・そんなこと起こる訳がないと言った上司Bが倉庫に一人で行き、泣きそうな顔をして戻ってきたetc...
そんな現象に耐えながらも一ヶ月が過ぎようとしていた頃、Aがまた人形を見つけ持ってきた。
A「おーい、またあったぞ、この人形・・・」
俺「うわ・・・・てか、それ出てきてたらですよね、変なこと起こり始めたの・・・」
A「あぁ・・・でもこの人形前のより、表情があるっていうか、むかつく顔してるよな」
確かに、言われてみれば前よりも表情豊か、と言うか腹の立つニヤけた顔だった。
俺たちはその人形を燃やすことにした。
ちょうど、使っていたガス溶断機でその人形を完全に燃やした。
その時、何とも言えない臭いに、作業場が包まれた。(翌日来た、他作業者には怒られた)
それから少しの間人形は見つからず、平穏な日々を過ごしていたある日。
俺は朝からの勤務で、倉庫にて作業をしていると、いつもウェスを運んでくるおっちゃん(D)に会った。
少し世間話をし、ふとおっちゃんの乗ってきた車を見ると、後部座席におばちゃんが乗っていた。
俺「ねぇ、あの人誰です? いつも一人ですよね?」
D「あぁ、何か今日は、私も乗せてけって聞かないから、連れてきたんだよ」
俺「へぇ、手伝いもしないのに、変な人で」
俺は、言いかけた言葉を全部飲み込んだ。
そのおばちゃんは、俺と目が合った瞬間ニターッと笑い、確かに『ミ ツ ケ タ』と口を動かしていた。
D「まぁ気にしないでくれ。変な人なんだよ。いつも一人で人形とか作ってたりしてる人なんだ」
俺「あ・・・・あ、俺もう行きますね・・・別の仕事もあるんで・・・・それじゃ・・・」
俺は走って逃げた。
それから俺は、仕事で背中に焼けどを負ったり、いろいろ怪我が絶えなかったけど、最近は何も起こらなくなった。
なんせ、おっちゃんの話によると、あのおばちゃん、火事で死んだらしい。
人形を燃やしたのが何か関係あるとするのなら、因果応報?的なあれだろう。
そして上司のAさんも、火事で亡くなった。
きっと俺の代わり、いや、俺もその内死ぬ予定だったんだろう。
これで終わりにします。
お粗末さまで下。