2DKのアパートに妹と暮らしていた頃の話だ。
引っ越して数週間。ある雨の夜、私は一人で帰宅した。妹はまだ戻っていなかった。
玄関を開けると左手にトイレ、正面には風呂の扉と電気スイッチがある間取り。濡れた靴下が気持ち悪くて玄関で脱ぎ、ついでに丸めて風呂のほうに投げたら、偶然スイッチに当たって風呂場の電気がついた。その瞬間、目に飛び込んできたのは、風呂場の中から出てきた裸の男だった。
とっさの出来事に声が出ない。「なんで?」と頭が混乱する私。そして男も、電気をつけたのが玄関にいる私だと気づいたらしく、一瞬動きを止めた。その沈黙は永遠にも思えた。だが、男がこちらに一歩踏み出した瞬間、私は本能的にドアを開けて外に逃げた。
3階の階段を駆け下りる間、後ろから裸の足音が迫ってくる。心臓が喉元まで上がるような恐怖を感じた。逃げ込んだ店で助けを求め、店員が警察を呼んでくれた。警察と一緒に家に戻ったとき、男の姿はすでになかった。
不可解だったのは、玄関の鍵にこじ開けた痕跡がなかったことだ。確かに鍵をかけていたはず。警察に相談すると、犯人はなんと前の住人だったと判明した。古い賃貸物件で鍵を交換しておらず、前住人は返却したはずのマスターキーを使って侵入していたのだという。
その男には前科があり、短期間だけ古い物件を借りる→合鍵を利用して侵入するという手口を繰り返していたそうだ。私たちは家にいるときは必ずチェーンロックをかけていたため、幸いにも被害に遭わなかったが、不在時に侵入されていた事実を知り、背筋が凍った。
警察によると、2DKや1LDKは新婚や子連れの家庭が多く、泣き寝入りするケースもあるのではないかとのこと。安全と思っていた賃貸生活が、こんなにも脆いとは思わなかった。
その日以来、風呂やトイレの扉はほんの少しでも開けておく癖がついた。自分を守るために。
コメント:
727: 怖すぎ。雨が降ってなかったら、靴下投げなかったら、スイッチに当たらなかったら…本当に想像するだけでゾッとするね。妹さんが帰ってなくて良かった。
728: ひええ鳥肌立った!とりあえず妹さんも、あなたも無事で良かったわ。うちも個人管理の古い物件だから、大家が頼まれなきゃ鍵を交換しないのよね。長年やってる大家さんって意識甘いとこある…。
730: 本当に靴下がスイッチに当たらなかったらと思うと…どうなってたか想像もしたくない。それ以来、私もトイレや風呂のドアを少し開けておくようになったよ。古い物件は怖いね。
731: 鍵交換しない物件って怖い。もし犯行が発覚しても、真っ先に前住人や合鍵を持ってる大家が疑われるはず。それでも泣き寝入りを確信して犯行に及ぶって…寒気がするね。
[出典:721 :おさかなくわえた名無しさん : 2016/07/08(金) 01:23:17.54 ID:GUa4NLeo.net]