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これからトンネルに入ります、日よけを下ろしてください r+3342

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これは、石川県に住む男性が幼い頃の帰省中に体験した話だ。

夜行列車に乗り、岐阜のどこかのトンネルに差し掛かる時、必ず車内アナウンスが響いた。「これからトンネルに入ります。日よけを下ろしてください」。理由は語られない。ただ、誰もが無言のうちに従い、窓を覆うのが習わしのようだった。

子供心に不思議だったその風景。親に問いただしてみると、母親が軽く笑いながら「オバケが出るからよ」と言う。冗談めいていたが、その言葉に妙な現実味を感じた。最初のうちは怖くて、トンネルの間中、窓から目を背けるしかなかった。だが年々、その緊張感にも慣れ、ある年のこと――男の子らしく勇気を出して、日よけをこっそり持ち上げてみた。

視線の先には、無数の手形があった。窓いっぱいに白い跡が、ベタリ、ベタリと浮かんでいる。はっきりと人の手の形をしているそれが、どういうわけか生き物のように見えた。動いているわけでもないのに、目が釘付けになる。さらには、ガラスの向こう側にぼんやり浮かぶ人の顔らしきものまで――それは、表情を失ったのっぺらぼうの顔だった。

手のひらが窓越しに重なり、彼の方に押し寄せてくるような錯覚を覚えたその瞬間、身体が硬直した。気づけば親にしがみつき、窓を見ないようにして震えていた。

その後も何度か同じ路線を通ったが、結局もう二度と窓を覗くことはできなかった。

中学生になり、一人で田舎へ旅する機会が訪れた。

その頃には、幼い頃の「オバケ」の記憶も笑い話になりかけていた。けれどもふと、あのトンネルのことが気になり、どの区間だったかを思い出しながら進んでみた。しかし、当時のアナウンスはどこにも流れず、誰も日よけを閉める様子もない。ただ、いくつかのトンネルを通り過ぎただけで、例の場所にはたどり着けなかった。

帰宅後、親に尋ねてみると、「ああ、それはね、昔の機関車時代の名残だよ。煙が車内に入らないように窓を閉める決まりがあったんだ」と笑う。

だが、それでは説明がつかないことが多すぎる。彼が乗った列車はすでに機関車ではなかったし、兄もあの「手形」を見た記憶があると言っていた。ならば、あれは何だったのか?

もしかしたら幻覚だったのか、それとも夢か――そう思おうとした。けれど、兄がぽつりと言った。「あのトンネル、今は使われてないって話だぞ」。その一言で背筋が凍った。

あのトンネルがどこだったのか、今でも分からない。ただ、もう二度と確かめようとは思わないのだという。


読者のコメント

北陸トンネルかな?

場所は福井県敦賀市だが岐阜県のすぐ近く(最短距離で15kmくらい)ではある。

『北陸トンネル火災事故』、1972年11月6日午前1時13分頃発生、死者30人、負傷者714人。旧国鉄北陸本線北陸トンネル内を走行中の大阪発青森行き急行「きたぐに」の食堂車喫煙室椅子下から火災が発生。乗務員は国鉄の規則通りにトンネル内で停車させて消火にあたったが、それが原因で多数の死傷者を出したと後の調査および裁判で断じられた。以後、「火災発生時にはトンネル内では絶対に止まるな」と規則が改められた。

ところで、

北陸本線経由の夜行列車で岐阜の付近を通って石川県へ行くなら、岐阜付近の通過時刻は夜中になるんじゃないか?急行「きたぐに」はまさにそうだった。

夜中にアナウンスがあって、車内の誰もが疑いもせず窓の日よけを閉めるわけ?そのそも小さい子供が起きている?

高山線経由の夜行なら急行「のりくら」(名古屋-富山間。1984年、夜行廃止)というのがあったが、石川まで直通ではなかった。

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