中編 洒落にならない怖い話

顔を覆う少女【ゆっくり朗読】2800

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高校2年の頃の実体験を書きます。

255 1/7 sage New! 2012/05/03(木) 01:44:34.64 ID:HPNJqzKn0

夏休み中のある日、俺と、友人の川村、大塚、笹原は唐突にキャンプに行こうと思いつき、以前渓流釣り好きの笹原の親戚から聞いたキャンプに最適そうな山の中の河原の場所を聞き出し、そこへと向かった。

しかしどうも途中で道を間違えてしまったらしく、笹原の親戚が言うのとは別の河原に到着してしまった。

ただし、そこも十分キャンプできそうな立地で、対岸は森だがこちら側は小石が沢山あり雑草も殆ど無い開けた場所でジメジメ感もなく非常に快適そうだった。

夕方までにはある程度準備が出来、その辺をぶらぶらしていた川村と笹原が「おい、なんかちょっと先の対岸に変な祠みたいなのがあるぞ」と言いながら戻ってきた。俺と大塚が2人に連れられてその場所に行ってみると、たしかに対岸に石造りの小さな祠があるのだが、何か変だ。

普通祠って手前に鳥居とかがあると思うのだがそういうものは何も無いし、通常祠といえば四角形で横か正面から見ると三角の屋根だと思うのだが、それは円柱形で屋根は丸く、かなり奇妙な形をしていて、遠目には祠に見えたのだが近くで見るとなんか違うもののようにも見える。

そして更に注視してみると、祠の根元にまだ萎れていない花が供えられていて、どうも最近誰か来たような痕跡がある。

祠はかなり苔むしていて相当な年代物のようで、掃除とかされている様子もないのに変だなとは思ったが、誰もそれ以上興味を示す事も無く、とりあえず晩飯の準備をしようという事でキャンプ場所に戻る事にした。

晩飯を食い終わりそろそろあたりが暗くなり始めた頃

晩飯の後片付けをしているとどこかから「てぇぇ…」と声が聞こえてきた。

俺の隣にいた川村に「お前なんか言った?」というと川村は「いや?なにも言ってないけど」と言い、少しはなれたところにいた大塚と笹原にも同じように聞いてみたのだが、どちらも何も言っていないという。

変だな?気のせいかな?などと考えていると、またどこからか「てぇぇ…」とという声が聞こえてきた。

今度は川村、大塚、笹原にも聞こえたらしく、大塚が「今の何?」と聞いてきた直後、笹原が「おい、あそこに誰かいるぞ」とちょうど祠のあった辺りのこちら側の岸を指差した。

そこには着物を着た10歳から12歳くらい?の女の子らしき人影がおり、両手で顔を覆い時々「てぇぇ…」と喋っている。

すると川村が「なんだあれ気持ちわりーな、親はどこだよ」と言いながら女の子に近付き「こんな所で何しているんだ?そろそろ暗くなるから親のところに帰った方が良いぞというと、女の子は両手で顔を隠したまま川村に「見たい?見たい?」とケラケラ笑いながら聞いてきた。

川村はちょっとムカついたのか「ふざけてないで親のところに帰れよ!」とちょっと強い口調で言いながら女の子の手を掴んで顔から離した瞬間、

俺たちは川村の陰になって見えなかったのだが、女の子の顔を見たらしい川村が突然叫び声をあげその場に倒れ痙攣し始めた。

そして女の子はまた両手で自分の顔を覆い、今度は俺たちのところへ歩いてきてまたケラケラと笑いながら「見たい?見たい?」と言っている。

俺と大塚と笹原はかなり混乱したが、それよりも川村がヤバそうで川村のところに向かい「おい川村大丈夫か?声聞こえるか?」と呼びかけたのだが、川村は呼びかけても反応が無く、まだ僅かに痙攣している。

笹原が「おいなんか川村やべーよ、それにあの子供なんだよ!わけわかんねーよ!」というと、女の子に掴みかかろうとしたので、俺はさっきの事もあって笹原も川村のようになったらやばいと考え、

笹原に「やめろって、それより川村だ、あいつをまずテントに運び込もう」と説得し3人でまだ意識の戻らない川村をテントに運び込んだ。

その間も女の子は俺たちのほうを向き「見たい?見たい?」とケラケラ笑いながら質問し続けていた。

テントの中に運び込んだ頃には川村は痙攣こそしなくなっていたが、まだ意識は戻らず呼びかけにも答えない、仕方なく3人でこれからどうするべきかを考えたのだが、もう既にかなり暗くなってきているので川村を連れて夜の山道を歩くのは危険と判断し、携帯で警察に電話をして助けてもらう事にした。

その間、女の子はテントのすぐ横にやってきて、今度はまた最初の頃のように「てぇぇ…」と声を発している。

女の子の方も気になるし怖いが、それよりも全く意識を取り戻さない川村が心配だった俺たちは、警察に連絡しようと携帯を取り出したのだが、昼間確認したときには通じていたはずなのに、今見てみると圏外になっている、大塚と笹原も同じで、川村の携帯も確認してみたのだがやはり圏外だ。

かなりやばい状況になってしまった。

川村がこんな状態では下手に出歩けないし、何より外にはなんかやばそうな女の子がいる。かといって川村をこのままにはしておけない。

外からはまだ「てぇぇ…」という声がすぐ近くから聞こえてくる。
どうやら俺たちを諦める気は、やつには無いらしい。

すると大塚がかなり落ち着いた口調で外の女の子に対して「お前何なんだ?川村に何したんだ?」
「俺たち何かお前の気に触るような事をしたのか?そうなら謝るから許してくれよ」と説得するように呼びかけたのだが、まるでそんな事は意に介さないのかまた「見たい?見たい?」とケラケラ笑いながら質問してくるだけだった。

このままこうしていても埒があかない、そう考えた俺が「俺が走るの結構早いのみんな知ってるよな?このままこうしていても何も進展しない、たしか結構広めの道から林道に入ってここに来るまで30分くらいだったよな。なら長めに見積もっても2kmないはずだ、夜道とはいえ走れば7~8分、長くても10分もあれば舗装された道路に出るはず、そこまで出れば携帯が繋がるだろうし、繋がらなくても通った車に助けを求めれるはず、だから行って来る」と提案した。

大塚も笹原も危険だからやめろと最初は反対したのだが、このままだと川村がどうなるかわからないし、今は夜の8時過ぎ、これから日の出まではゆうに7~8時間ある、それまで薄いテントのビニール1枚隔てて正体不明の相手に対して篭城するなど明らかに無茶だし、俺自身そんな状態に精神的に耐えられそうに無い。

そのことは大塚も笹原も解っていたのだろう、1時間以内に戻ってくる、戻ってこない場合には笹原と大塚で探しに行くという条件付で納得してくれた。

外からは相変わらず「てぇぇ…」という声が聞こえてくる。

かなり怖くて足がすくんだが、俺は勇気を振り絞って外に出た。

するとすぐ横から「見たい?見たい?」と声が聞こえてきて、ビビりまくった俺が声のする方向に懐中電灯を向けると、懐中電灯に照らされて俺の真横1mもないくらいの近くにやつがいる。

そして、ケラケラと笑いながら顔から手を離そうとした。

俺は大慌てでやつから視線を逸らし、そのまま来た道を懐中電灯の明かりを頼りに全力疾走した。

舗装されていない道路なので走りにくいと思ったが、車も通れるくらいの林道で轍もあり、結構踏み固められているらしくそれほど走りにくくも無い、これなら予想よりも早く道路に出れるかもしれない、そんな事を考えながら走っていると、突然道の先のほうに人影が見えた。

「え?」と俺が懐中電灯で照らすと、それは例の女の子だった……

「そんなばかな、ありえない!」、もう500mくらいは走ったはずだし追いつける訳がないのだが、現実に目の前に女の子は存在している。

そしてまたケラケラと笑いながら俺に「見たい?見たい?」と言いながら顔から手を離そうとしている。俺は視線をそらすと女の子を見ないように避けながらまた走り出した。ついてこようがこまいが、道路にさえ出てしまえばこっちのものだ、という自信があったからだ。

それからどれくらい走っただろうか、少し先のほうに車のヘッドライトが通り過ぎていくのが見えた、もうすぐ道路に出れるようだ。少しほっとした直後、何かに足をつかまれ俺は転んでしまった。

わけが解らず足元を見てみると、ありえないことだが何も無い、何も無いはずなのだが、明らかに俺の足は何かにしっかりと掴まれている感触がある。

しかもその「見えない手」はかなり力が強く、振りほどこうにも解けない。

俺が何とか脱出しようともがいていると、少し遠くから「てぇぇ…」と聞き覚えのあるあの声がしてきた。

「やばい、この状況でやつに来られるのはかなりやばい…」何とか振りほどこうともがくのだが、たちの悪い事に見えないだけでなくその手はこっちからは触る事もできず、何度か手のあるだろう場所を蹴ったのだが全てスカってしまった。

そんな事をしているうちに女の子は既に俺の背後にまで来たらしく、真後ろから「見たい?見たい?」という声が聞こえてくる。

俺はもう死に物狂いで無理矢理立ち上がり、足をつかまれたまま強引に歩き出した。

そして何度も何度も転びながら、少しずつ前へと進んでいたのだが、ふと顔をあげたときに女の子が顔から手を離し素顔を見せるところをほんの一瞬だが見てしまった。

その時、俺は今まで感じた事の無いような絶望感と恐怖心を感じ、意識が遠のきそうになった。

が、見たのが一瞬ですぐに目をそらしたのがよかったのか、かろうじて意識は残っており、そのまま這うように道路まで出てフラフラと立ち上がった。

が、それ以上もう一歩も歩けない、なんと説明すれば良いのか、眩暈がして頭の中がぐるんぐるん周っているといえば良いのか、そんな感覚と理屈では説明できない恐怖心で体がガタガタと震え、もう立っているのがやっとで一歩も足を前へ踏み出す事が出来ない。

無理に歩こうとすれば、足を掴まれていることもあり確実に倒れてしまうだろう。

そして倒れてしまったらもう二度と起き上がれない事も十分予想が出来た。

そこへ運の良い事にトラックが通りかかった。

俺は意識が遠のきそうになるのを必死でこらえ、全力で手を振り助けを呼んだ、するとトラックは少し俺から通り過ぎたところで停まってくれた。

その時、俺の背後から例の女の子の声がした。

「残念、残念」と。

俺はもう眩暈のせいで気持ち悪くなり立っていられずその場にへたり込み、トラックの運ちゃんにこの道の先に友達がいて助けを求めている事だけを告げると、そのまま意識を失ってしまった。

なのでその後どうなったのかは全くしらない、気が付くと俺は病院のベットに寝かされていた。

あとから聞いた話によると、このトラックの運ちゃんが警察と救急車を呼んでくれたらしく、その後無事に川村も大塚も笹原も救助され、意識の無い川村も俺と同じ病院に運び込まれたのだが、俺と同じくらいのタイミングで意識を取り戻したらしい。

ちなみに、助けてくれたトラックの運ちゃんも仕事帰りに見舞いに来てくれたので色々と事情を話したのだが、俺以外の人影は一切見なかったらしい。

そういう事なので、目撃者が俺たちだけだった事もあり、警察にも同じ事を話したのだが結局信じてもらえず、俺たちは親からかなり叱られた。

まあ、あんな話をしたら嘘を付いていると思われても仕方が無いので、しょうがないといえばしょうがないのだが……

以上が俺達が数年前の夏休みに体験した事の全てです。

一応、後日談的な事として

その後例の女の子の顔を見てしまった川村に何を見たのか聞いてみた事があったのだが、
川村いわく、はっきりと見たはずなのに何をみたのか思い出せないという、俺と同じような感覚と眩暈に襲われてそのまま意識を失ったらしい。

ちなみにそれは俺もほぼ同じで、女の子の顔をチラっとだが見たはずなのだが、その部分の記憶がまるですっぽりと抜け落ちたかのように覚えておらず、見たという記憶があるのに何を見たの蚊が思い出せないというかなり奇妙な状態になっていた。

祠のや着物の女の子の事に関しても、4人で夏休み中を使って色々と調べてみたのだが、結局何も解りませんでした。

そもそも地元の人達ですら、あそこに祠のようなものがある事を知らなかったということで、そうなると俺たちが見た祠に供えられた花はなんだったのか……

(了)

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