ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

中編 r+ 洒落にならない怖い話

見たい?見たい? r+3,257-3,522

更新日:

Sponsord Link

高校二年の夏、俺と川村、大塚、笹原の四人は、ふとした思いつきでキャンプに出かけた。

笹原の親戚が教えてくれた川辺を目指していたはずなのに、道を間違え、辿り着いたのは全く別の川原だった。だがそこは石がごろごろと転がり、雑草も少なく、妙に居心地が良いように思えた。あの時点で引き返していれば良かったのかもしれない。

夕方、川村と笹原が戻ってきて「向こう岸に変な祠がある」と言った。俺と大塚が確認すると、確かに奇妙な祠が見えた。丸い円柱形で、屋根も同じように丸く、鳥居もない。根元には枯れていない花が供えられていた。つい最近、誰かが訪れた跡……にもかかわらず、そこには人の気配が全くなかった。俺たちは何も気にせず、夕食の準備に戻った。

火を囲み、笑い声が川面に溶けて消え、夜は深まっていった。片付けをしていた時だった。「てぇぇ……」という、長く引きずるような声が耳をかすめた。最初は川村の悪ふざけかと思ったが、奴は首を振った。二度目の声はさらに明瞭で、今度は全員が聞いた。背筋が冷えるのを感じた瞬間、笹原が「あそこに誰かいる」と叫んだ。

対岸の祠のそばに、着物を着た小さな影が立っていた。十歳くらいの女の子だろうか。顔を両手で覆い、「てぇぇ……」とつぶやいていた。川村は苛立ちを隠さず「親はどこだ」と言いながら歩み寄った。そして子供に声をかけた。「こんなところで何してるんだ、早く帰れ」

女の子は顔を隠したまま、くぐもった声で笑った。「見たい?見たい?」 川村の眉間に皺が寄った。「ふざけんな、帰れって!」と叫び、手を掴んで顔から手を外そうとした。次の瞬間、川村は耳を裂く悲鳴を上げて倒れ、地面に痙攣する魚のように身をよじらせた。

俺たちは慌てて川村をテントへ運び込んだ。だが外では、女の子が「見たい?見たい?」と繰り返し笑い、その背後から低く「てぇぇ……」という声が絶え間なく響いていた。携帯で助けを呼ぼうとしたが、圏外で電波は入らない。息が詰まるような絶望感に、俺は一人で助けを呼びに行くと決めた。

川辺を離れ、暗闇を必死に走った。だが走った先にも、女の子が立っていた。手を顔にかざしながら、「見たい?見たい?」と囁き、指の隙間から何かを覗かせようとする。俺は視線を逸らし、息が潰れそうになりながらただ走り続けた。

ようやく街道の灯りが見えた瞬間、足首を冷たい何かに掴まれ、地面に叩きつけられた。動けない。背後で女の子の声が繰り返される。「見たい?見たい?」 その声が耳の奥にねじ込まれ、目の前がぐにゃりと歪んだ。

意識が闇に沈もうとした時、トラックのヘッドライトが俺を照らした。運転手が駆け寄り、俺は震える声で助けを求めた。そこで意識が途切れた。

目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。川村も無事に運ばれてきたと聞き、胸をなで下ろした。だが、川村に「何を見たのか」と問いただしても、彼は首を振るだけだった。「思い出せない」と。

後日、祠のことを調べたが、何も分からなかった。地元の資料にも、そんな祠の記録はない。あの夜の出来事は、四人の中でしか共有されていない。川村の痙攣、女の子の声、そして「見たい?」という問いかけ……あれは一体何を見せようとしたのか。

俺たちは未だに答えを知らない。けれど、今でも夢の中であの声が響くことがある。「見たい?見たい?」 目を覚ました時、無意識に両手で顔を覆っている自分に気付く。その瞬間、胸の奥で何かがざわつく。あの時、もしも川村のように顔を見てしまっていたら、俺は今ここにいなかったのかもしれない。

[出典:255 1/7 sage New! 2012/05/03(木) 01:44:34.64 ID:HPNJqzKn0]

Sponsored Link

Sponsored Link

-中編, r+, 洒落にならない怖い話
-

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2025 All Rights Reserved.