不可解な体験:儀一と「止まった時間」の謎
これは、幼い頃から現在に至るまで続いている不可解な体験についての話だ。思い出を整理するために書き留めるが、奇妙な現象やその後の出来事を振り返ると、今でも鳥肌が立つ。話は、自転車鬼ごっこから始まる。
昔、近所に有名な墓地があった。俺たち5人の仲間――俺、弟、儀一、茂吉、清助――は、公園内で自転車鬼ごっこをしていたが、儀一が「公園だけじゃつまらない」と提案し、墓地に場所を変えることになった。鬼は茂吉。俺と弟、清助は同じ方向に逃げたが、儀一は反対側へ。初めての場所に緊張していた弟を、俺は儀一の方へ逃がした。
その後、集合場所で待っていたが、弟と儀一が戻ってこない。家に帰ると弟が泣いていて、話を聞くと「儀一の様子がおかしい」と言う。弟の話では、儀一を追いかけていた途中、儀一が立ったまま動かなくなり、声をかけても反応がなかったという。
弟の話を聞いた俺と母は、儀一を探しにその場所へ向かった。1時間ほどして、弟の記憶を頼りにたどり着くと、薄暗く不気味な小道に儀一の自転車が放置されていた。近くを見ると、儀一が奇妙な体勢で固まっていた。片足を中途半端に上げ、全く動かない。まるで周囲だけ時間が止まったかのようだった。母が儀一の腕を引っ張ると、急に動き出し、「なんでみんないるの?」と混乱していた。
儀一の記憶は途切れており、「隠れようとしていたら急に母親に腕を引っ張られた」としか言わなかった。その後も、儀一の変わった様子や記憶の欠落が気になり続けた。
数年後、俺はライブの帰りに儀一と再会し、話の流れで再びあの場所を訪れることになった。深夜3時頃、儀一の記憶を頼りに墓地や神社の近くを探索。やがて暗い階段を下り、細い道を抜けた先にたどり着くと、儀一が「ここだ」と言う。その瞬間、儀一の顔がこわばり、俺の腕を引っ張って走り出した。
気付くと、朝になりかけていた。時計を見ると、すでに昼近くだった。奇妙なことに、時間が飛んだような感覚があった。儀一と俺は、明らかに「止まっていた」のだ。儀一は途中で体調を崩し、俺たちはなんとか近くのコンビニで水を買い、一休みした。
翌日、儀一に連絡を取ろうとしたが、電話にもメールにも応答がなく、気になって家を訪ねると、妹が「儀一の様子がおかしい」と教えてくれた。部屋に入ると、精気を失ったような儀一が座っていた。俺が「何があったのか」と聞くと、儀一は「これ以上聞かないでくれ」と拒否。その後、儀一とは疎遠になり、数週間後には完全に行方不明になった。
半年後、突然儀一から電話があった。儀一は「遠くの親戚の家で暮らしている」と言い、「あの時、本当に恐ろしいことがあった」と語り始めた。儀一によると、夢で見た不思議な洞窟が現実とリンクしていたらしい。
夢の中で、儀一は洞窟の奥へ進む。暗闇の中、足元の穴から風が吹き、不思議に光るキノコを見つける。その瞬間、黒い影が周囲を踊りながら回り出す。あの夜、儀一が「止まっていた」とき、その夢で見た影と同じものを見たと言う。
儀一はその後、親戚の家で暮らしながら、夢に出てきた影の正体や「止まった時間」の意味を考え続けていた。
俺自身、あの夜以来、奇妙な感覚に囚われることが増えた。そして最近、儀一が見たという夢を、俺も体験するようになった。黒い影が踊る夢。儀一の言葉や体験が徐々に自分の現実とリンクしていく感覚に、恐怖と興味が入り混じる。
儀一との連絡はその後一度きりで途絶え、彼がどうしているのかは分からない。俺は再びあの場所を訪れて確かめたい気持ちもあるが、同時に、二度と関わりたくない恐怖心もある。これは未解決のまま進行中の話であり、俺にとっては今も続く謎だ。
(了)
[出典:1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2006/03/16(木) 18:06:05.92 ID:DaR4HBqR0]