二十五歳のときの出来事。不思議な体験で、怖いというよりも奇妙な要素が多い実話。
あの日、出勤前に池袋駅東口を出て、西武デパート沿いに歩いていた。道中にあった灰皿の前でタバコを吸っていると(今はもうその灰皿はない)、突然、中年の男性が近づいてきて、ライターを貸してほしいと言われた。
ライターを貸すと、自然な流れで世間話を始めることになり、タバコは吸い終わっていたが、しばらくその場で会話をしていた。そろそろ立ち去ろうと挨拶をすると、男性がメモのような紙を渡してきた。そして、一言。
「妹さんは今年、帰省させない方がいいよ」
突然の言葉に戸惑いながらも、その場を後にした。妹の話なんて一言もしていないのに、何か気味が悪いなと思いながら仕事へ向かった。
数日後、男性から渡されたメモのことを思い出した。メモはA4の紙で、表と裏に暗号のような言葉や数式がびっしり書かれていた。その中には「一月一日に都内のある神社に行くこと」と、自分の家族に関することが記されていた。
どうにも気になる内容だったが、あの中年男性には二度と会えなかった。出勤時に毎日同じ場所でタバコを吸ってみたものの、それ以降姿を見かけることはなかったのだ。
気持ち悪さが拭えず、友人に相談した。メモの解読を試みたが、結局ほとんど理解できなかった。それでも家族に関する記述や、神社の指示がどうしても引っかかり、元日に実際に神社へ行ってみることにした。友人も同行してくれることになったが、彼の提案で少し距離を取りながらカメラで撮影することになった。「何かあったときの証拠になるから」とのことだ。
そして、一月一日。友人が後方でカメラを回す中、私は指定された神社をウロウロしていた。最初は何も起きなかったが、不意に見知らぬ女性に声をかけられた。
女性が言うにはこうだ。
「君の代わりが何人かいて、その人が先に達成したから君は失敗した」
さらに、「もうメモのことは気にしなくていい」とも言われた。
何のことか全く分からず、頭の中は疑問符だらけだった。それでも、一連の出来事が気になりすぎて、友人と帰宅後に撮影した映像を確認することにした。
映像には、私が一人で誰かと話している様子が映っていた。だが、驚くべきことに、声をかけてきた女性の姿はどこにも映っていない。それだけではない。私の背後には、全身真っ黒でくねくねと揺れる人型の物体が四体、はっきりと映り込んでいたのだ。
友人も映像を見るまで気づいていなかったらしく、彼自身の肉眼でも、私が「一人でしゃべっている」ようにしか見えていなかったという。
メモ、女性の言葉、カメラに映らなかった女性、そして黒い「くねくねした存在」。あの日何が起きたのか、いまだに全く分からない。ただ、これが実話であることは間違いない。
(了)
[出典:263 :本当にあった怖い名無し:2016/03/22(火) 04:24:13.51 ID:tMJJ75Zr0.net]