八年前、友人二人と泊まった中国地方の民宿の話。
581 :本当にあった怖い名無し:2016/10/14(金) 20:52:48.40 ID:YJypNS3M0.net
二階建ての木造で、海沿いにあったと思う。
その時は一週間ばあちゃんの家に泊まってた。
泊まりの三日目、海水浴に行ったんだけど、夕方になってひどい雨が降ってきた。
俺たちが遊んでた浜が、ばあちゃん家からかなり遠くて、俺らの原付じゃ帰るのは厳しいってんで、近所の民宿に泊まることになった。
で、民宿に着いたら、結構な歳の婆さんと中年のおっさんが出てきた。
一泊したい旨を伝えると、快く部屋を準備してくれた。
とりあえず飯食って風呂入って、疲れてたんでさっさと寝た。
深夜の二時くらいだった。
目が覚めたら友人の泉がいなかった。
手洗いにでも行ったのかと思ってしばらくぼーっとしてたが、二十分しても帰ってこない。
不審に思って松宮を起こして、泉を探しに行くことにした。
十中八九、廊下で寝ぼけて行き倒れてると思ったし。
二階から光が薄く漏れてるのに気づいた。
階段をゆっくり上がって行くと、婆さんとおっさんの声がしていた。
泉の声もした。
婆さんとおっさんはなんて言ってるのかわからなかった。
泉の声は震えていた。
「わかりません」
「知りません」
「違います」
「助けて」
俺と松宮は顔を見合わせた。
で、障子を開けた。
婆さんとおっさんが、虚ろな顔でこっちを見てた。
婆さんは包丁を持ってた。
泉は泣きながら走ってきた。
婆さんとおっさんは生気がないって感じで、めちゃくちゃ怖かった。
俺の方見てんのに、俺の後ろを見てるみたいな。
婆さんが何か言った。
その瞬間、後ろから引っ張られる感じがして、俺と松宮は階段から転げ落ちていた。
いつのまにか泉も転げ落ちていた。
階段の上には、婆さんとおっさんと、なんかすげえ細長くてぐにゃぐにゃの黒い影がいた。
ナメクジを極限まで黒くしたみたいなやつ。
やべえと思った。
雨は止んでたから、民宿に携帯もPSPも全部ほっぽったまんま原付に飛び乗って帰った。
泉は足がガクガクで、何回か原付でこけそうになってた。
しばらく走ると、とりあえずポプラがあったから、原付を停めて駆け込んで、しばらく時間をつぶした。
ばあちゃん家に帰り着いたのは夜が明けてからだった。
泉に、婆さんとおっさんに何を言われていたのか聞いたけど、
「うなずいちゃいけないってことしか覚えていない。あとめちゃくちゃおっさんの口と、押入れん中が臭かった。ニワトリさばいたときみたいな臭いだった」
としかわからなかった。
民宿は多分まだある。
婆さんは生きてんのか死んでんのかわからない……
(了)