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短編 山にまつわる怖い話

某峠に走りにいった【ゆっくり朗読】2777-0103

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去年の、冬ももう間近なある夜に起こった話です。

360 :あなたのうしろに名無しさんが…:04/04/05 16:08

この話は、今まで誰にもしていません。

自分なりに裏付けを取ろうと思って、地元の怪談話や伝承なんかも調べてみたんですが、特にこれといった話はありませんでした。

私は大学三年生で、いわゆる走り屋をやってます。

その日は11月にしては暖かかったと記憶しています。

そろそろ凍結も怖いし、今年の走り収めにするかといつもの某峠に走りにいきました。

私は勉強の気分転換に走りに行くことが多いため、走るのは夜中から明け方にかけての時間帯で、他の走り屋連中に遭うことは滅多にありません。

その日ももうみんなとっくに上がってしまったようで、山は静まり返っていました。

最初の一本目は、路面と車の状態を確かめるためにゆっくりと流します。

夜になってもそれほど冷え込まなかったため、路面に凍結は無く、霧も出ていません。

なかなかコンディションがよかったので、一本目の往復を終えると、結構なペースで走り始めました。

三本走ってちょっと休憩を入れて、もう二本走りました。

勿論走っている間にすれ違う車は無く、休憩している間も、車の音や光はおろか、木々の音すらもしないほどの闇と静けさが広がっています。

二本目を走り切った時点で一旦は帰ろうかと思ったのですが、最後にもう一本走って終わりにしようと思い、車をターンさせ、往路を走りました。

車は快調で、ペースは限界に近いところまで上がっていたと思います。

往路の終点に近づいたので速度を落とし、車の向きを変えました。

唐突ですが私の車には、エンジンのコンディションを知るために、後付で色々な計器を取り付けています。

それらの計器はただ数値を表示するだけでなく、最大三分間に亘って数値の推移を記録できるようになっており、後からアクセルの踏み具合などを確認できます。

車を停止させ記録スイッチを押した後、私はアクセルを吹かし、ホイールスピンさせながら復路を走り始めました。

3速に入れるまでは息つく暇もありません。

迫るコーナーに備えてアクセルを抜き、いつもの癖でバックミラーを確認した時でした。

ルームミラーに後続車のライトが映っています。

へぇ、追いついてくる奴がいたんだ。ちょっと意外に思ったのを覚えています。

頼むから追突だけは勘弁してくれよ、と思いつつハードにブレーキングをしてコーナーに突っ込んでいきます。

後ろのライトは、差を詰めるでもなく遠ざかるでもなく、私の車について来ます。車種は分かりません。

二、三個コーナーを抜けても位置関係はそのままです。

この時点で、私はちょっと冷静さを失ったのかもしれません。

私の車は、トップスピードは出ない代わりに加減速の性能に優れており、ランエボやインプレッサといった高性能車にも峠では引けをとらないよう改造もしてあります。

しかし後ろのライトは遠ざからない…

この時点でちょっと相手に興味を覚えた私は、次の二・三のコーナーでミラーに注意を向けつつ走りました。

やはりつかず離れず、一定の距離は変わりません。

遊ばれている?いや、でもこのスピードで?

ミラーに注意を向けた挙句ちょっと考え込んでしまったせいでしょう、いつもなら速度を落として通過するバンプに、殆ど減速しないで突っ込んでしまいました。

しまったと思いつつ必死でステアリングを押さえ込み、ミラーに目をやります。

下手に下回りでも打って、相手が自走不能にでもなったら気分が悪いですから。

ミラーの中には、何事も無かったように二つのライトが映り続けていました。

この瞬間、背中に冷水をぶっ掛けられたような恐怖感というか、衝撃が私を襲いました。

大きいバンプに突っ込んで、私の車は激しく揺すられました。

私の車のライトも大きく上下し、木々や地面を照らしました。

なのに、私の後にバンプを通過したはずの後ろの車のライトは、なぜ、微動だにせず私のミラーに映り続けたのか…

考えてみれば、コーナーが連続する峠道で、なぜあのライトはミラーに映り続けたのだろう?

私がミラーから視線を外している間も、ずっと映っていたのか?

そういえば、開けてある窓からは自分の車の排気音しか聞こえない?

このペースで走る車が、ノーマルのマフラーを?

そこからはもうよく覚えていません。

とにかくもう後ろは振り返らずにがむしゃらに飛ばしました。

タイヤが鳴こうがロックしようがお構いなし。タイムを計ったらさぞ速かったことでしょう。

気がついたら山は下りており、アパートの近くまで戻ってきていました。

明るくなってから車を見てみました。

昨夜の走りが夢ではなかったとでもいうように、タイヤには溶けたカスがついており、サイドウォールまで接地した跡が残っていました。

あれだけこじって走れば当然でしょうか。

さて、この後の私には、別段変わったことはありません。

知り合い経由で同じところを走っている連中に聞いてみても、誰も遭遇したことは無いようですし、走り屋の霊が出たなんて噂もないようです。

ただ、ひとつだけ、理解できないことがあるんです。

最後に復路を走る前にセットした走行データのことです。

さすがにしばらくは怖かったので再生する気にならなかったんですが、春休みに一月ばかり旅行に出るためバッテリーを外しておこうと思い、リセットされる前に見てみることにしたんです。

再生をスタートすると、タコメーターの針が跳ね上がりました。車を発進させた時でしょう。

レブカウンターがレッドゾーンを示して点滅し、針が下がる。

これを何回か繰り返した後のことでした。

突然、全てのメーターの針が、フッと下がったんです。

まるで、アイドリング状態で停止しているかのように。

そして、データは最後までその状態でした。

経過時間と道順、そしてあの日の行動と照らし合わせて考えるに、データがアイドリング状態を示し始めたのは、どうやら私がミラーの光に気づいたあたりのようです。

私は、本当にあの時、走っていたのでしょうか?

それとも、何かに導かれて、別の場所を走ったのでしょうか…

峠はもうすっかりシーズンインし、走り屋連中も毎晩のように出没しているようです。

でも、私はしばらくは走れそうにありません。

今度帰ってこられる保障はどこにもありませんから。

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