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ワラビが笑った/笑うわらび(エホバの証人伝説)rw+5,310-0710

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信仰に入って間もない頃、私は王国会館で、奇妙な話をいくつも聞いた。

最初に聞いたのは、「笑うワラビ」の話だった。

野外奉仕の帰り、何人かの姉妹が神社の境内でワラビを見つけた。長老は足を止めずに言った。

「ここは悪霊の影響があるかもしれません。移動しましょう」

皆は従った。

ただ、若い姉妹が二人だけ残った。

昼間なのに、境内は冷えていたという。

風はないのに木の葉が揺れ、その音に混じって、低い笑い声がした。

二人は顔を見合わせた。

誰もいなかった。

笑い声はワラビの根元から聞こえた気もしたが、気のせいだと思い、そのまま摘んで帰った。

その夜。

台所に置いたワラビから、また笑い声がした。

今度は聞き間違えようがなかった。

濡れた喉の奥で、誰かが息を殺して笑っていた。

二人は怖がる代わりに、冗談を言った。

「サタンが来たなら、肩でも揉んでもらいましょうか」

直後、乾いた音がした。

一人はその場で倒れた。

もう一人は病院へ運ばれ、長く意識を失った。

その後、助かった方の姉妹が、この話を私に聞かせてくれた。

彼女は笑いながら話した。

けれど、笑うたびに視線だけが私の肩越しへ動いた。

その頃の私は、似た話をいくつも聞いていた。

信仰を始めてから毎晩金縛りに遭うようになり、長老に言われて仏壇を処分したら、その夜から止んだという姉妹。

王国会館を爆破しようと天井裏へ忍び込んだ男が、二メートルを超すみ使いと目を合わせ、道具を置いて逃げたという話。

窓の外を鬼の列が通るのを、子どもだけが見たという会館。

敷地の中へ一歩入った鬼が、湯気のように消えたという。

話す者は、決まって笑っていた。

冗談のように。

証しのように。

だが、誰も私の目を見なかった。

ある晩、集会の帰りに、兄弟が空を指さした。

「見えるかい」

私には何も見えなかった。

隣にいた幼い男の子が言った。

「羽のある人が、たくさん飛んでる」

母親が笑った。

「呼んでみたら?」

男の子は空へ手を振った。

「おーい」

その直後、国道からトラックが歩道へ乗り上げた。

私はその夜、部屋の電気を消せなかった。

目を閉じると、あの姉妹の視線を思い出した。

私の後ろに、何かが立っているような気がした。

それから私は、会館で怪談を聞くたびに、話の内容よりも、語る人の目を見るようになった。

悪霊の話をする時。

み使いの話をする時。

奇跡の話をする時。

皆、同じ場所を見る。

聞き手の後ろ。

少しだけ上の方。

まるで、そこにいるものへ、今も話してよいか確かめているようだった。

冬の夜、集会の帰り道で雪が降っていた。

歩道には私の足跡しかなかった。

後ろから、小さな笑い声がした。

立ち止まると、声も止まった。

振り返っても誰もいない。

歩き出すと、また笑った。

湿った喉の奥を震わせるような、あの笑い方だった。

家に着くと、玄関の隅に白い買い物袋が置かれていた。

家族のものではなかった。

袋の中には、濡れたワラビが詰まっていた。

外は雪だった。

ワラビの季節ではない。

私は袋を捨てようとした。

その時、奥で何かが身じろぎした。

葉と葉が擦れた。

そして、声がした。

「見えるかい」

私は振り返らなかった。

その夜、祈らなかった。

翌朝、袋は消えていた。

代わりに、私の枕元に、濡れた足跡が二つ並んでいた。

つま先は、私の方を向いていた。

[出典:1 :風吹けば名無し:2016/07/08(金) 15:07:56.03 ID:FMF9cF+Zp.net]

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