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池へ渡すもの nc+
2026/08/14 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
Wの実家のある地区には、毎年八月の終わりに「役」を果たす家が一軒だけ決まる。 役目ではなく、役を果たす。そう言うのだと、Wは笑いながら話していた。 東と北と西を山に囲まれた小さな集落で、各家の代表が公 ...
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数の合わない送り nc+
2026/08/13 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
盆が近づくと、私は海の匂いを思い出す。 潮の生臭さと、夕方に混じる線香の匂いが、なぜか一緒に記憶に残っている。 祖母は「みえる人」だったらしい。 らしい、という言い方しかできないのは、祖母自身がそれを ...
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跡だけが先に来る nc+
2026/08/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
祖母はいわゆる「みえる人」だったらしい。 らしい、というのは、祖母自身がそう言い切ったことは一度もなかったからだ。 私は祖母に育てられた。昼間は洗濯物の匂いと、縁側に落ちる光の中で過ごし、夜になると布 ...
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横を通る影 nc+
2026/08/11 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
その木は、横を通り過ぎた瞬間にだけ、首を吊った人影が見えるという。 正面から見ても、じっと凝視しても何もいない。ただ、何の気なしに横切ったとき、視界の端にだけ、ぶら下がる形が引っかかるのだそうだ。二度 ...
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田んぼの奥で出された酒 nc+
2026/08/10 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
祖母は酒を飲まない人だった。 嫌いというほどでもないが、せいぜい冬の夜に梅酒を少し、寝る前に舐める程度で、酔うことはまずなかった。 だからなのか、祖母は酔っ払いが嫌いだった。 理由ははっきりしている。 ...
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🚨完成したはずの物語 nc+
2026/08/09 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
最初に気づいたのは、自分の書いた文章が、保存されていなかったことだった。 下書きフォルダにもない。クラウドにも履歴がない。確かに書いたはずの一段落が、最初から存在しなかったかのように消えている。妙だと ...
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🚨実体が存在しないため nc+
2026/08/08 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
大学のサーバールームでアルバイトをしている僕は、学内の古いデジタルアーカイブを新しいシステムへ移行する作業を任されていた。 作業の大半は自動化されたスクリプトが処理する。僕の役目は、稀に吐き出されるエ ...
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🚨薄い人たち nc+
2026/08/07 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
寺田は、都市部に点在する大規模データセンターを巡回する保守点検員だった。 一年の大半を地下フロアで過ごす。太陽光の届かない通路、空調の唸り、規則正しく並ぶラック。そのどれもが日常であり、異常はログの数 ...
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🚨接続不良 nc+
2026/08/06 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
桐谷は物流センターの設備管理を担当している。 首都圏に点在する三つの巨大倉庫を巡回し、空調、照明、防犯設備の保守を一人で請け負う契約社員だった。夜間作業が多いが、現場に人がいない分、仕事は静かで合理的 ...
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🚨受領済み工具 nc+
2026/08/05 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
排水区画の落とし物・受領記録 都市の地下深くに張り巡らされた巨大な雨水調整池。設備管理員の佐山は、昼も夜も、澱んだ水とコンクリートの壁に囲まれて働いていた。地下四階より下では湿度が九十パーセントを切る ...
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🚨澱みの底の蒐集者 nc+
2026/08/04 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
かつて深海サルベージの現場で「鉄の肺」と渾名された男、瀬戸口がその職を辞したのは、十年前のある潜水作業が原因だった。 沈没した観測船の回収。現場は俗に「海溝の墓場」と呼ばれる海域で、潮流は読めず、常に ...
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🚨重複エラー nc+
2026/08/03 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
聴取記録:K印刷工場労災事故に関する参考人供述 ※本記録は当該事故発生の二日前に退職した元従業員S氏への非公式な聞き取りを書き起こしたものである。公式報告書には未収録。 (録音再生開始) 辞めた理由で ...
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🚨最終試験の朝 nc+
2026/08/02 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
研修医の俺が当直明けで病院を出たのは、冬至も近い十二月の早朝、午前六時だった。 三十六時間連続の勤務。救急搬送が立て続けに入り、処置室とナースステーションを何度も往復した。心肺停止の患者が一人いた。蘇 ...
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🚨助手席は満席だった nc+
2026/08/01 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
録音記録:案件番号904-B ――対象者:K(元長距離輸送業) ――それで、その対策というのは。 ああ。夜の国道を一人で走るのって、想像以上に神経を使うんです。特に女性だと。道の駅で仮眠していると、窓 ...
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🚨閉館点呼 nc+
2026/07/31 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
僕が図書館の夜間警備を始めたのは、大学院を中退して三年目のことだった。 研究職への未練はすでに薄れていたし、人付き合いの少ない仕事を探していた。市立図書館の求人を見つけたとき、条件は悪くないと思った。 ...
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🚨入れた理由 nc+
2026/07/30 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
最上階のアーカイブ室には、窓がなかった。 正確に言えば、あるはずの壁面に、外光の痕跡が一切残っていなかった。 私が都心の設計事務所でインターンをしていた頃、仲間二人と無断で侵入したその部屋は、建物の最 ...
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出られない升目 nc+
2026/07/29 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
小学生のころ、同級生二人と一緒に、町外れの離れに忍び込んだ。 理由は単純で、二階が「宝部屋」だという噂があったからだ。 ガンプラや古い玩具が山ほど積まれているらしい。鍵も塀もない家で、誰もいない時間帯 ...
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🚨真ん中だけ、書かない nc+
2026/07/28 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
北国の漁港だった。 観光地としての役割はとうに終わり、錆びたクレーンと廃業した缶詰工場の煙突だけが、防波堤の向こうに突き出している。集落の奥、坂を登りきった先に、小さな診療所があった。週に三日だけ開く ...
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春の穴 nc+
2026/07/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
小学六年生の立春の日のことだ。 その日は、暦の言葉とは裏腹に、指先がかじかむほど冷たい風が吹いていた。歌では南国と呼ばれる土地でも、冬はちゃんと冬の顔をする。校門を出てから家までの道は、畑と古い家がだ ...
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🚨街灯の中央 nc+
2026/07/26 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
その話は、ある占い師が酒の席で「昔、実際にあったらしい」とだけ前置きして語ったものだという。 真偽は分からない。ただ、聞いた者の多くが、後になって同じ場所を思い出すたび、説明できない違和感を覚えたそう ...
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泣きぼくろ nc+
2026/07/25 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
私の祖母はいわゆる「みえる人」だったらしい。 少なくとも、祖母自身はそう信じて疑わなかった。私は祖母に育てられたようなもので、幼い頃から怖い話や不思議な話を、昔話の延長のように聞かされてきた。その多く ...
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正しい選択 nc+
2026/07/24 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
母が最初に違和感を覚えたのは、息子の声が少しだけ低くなったことだった。 小学校六年の春。団地の中庭で遊んでいた頃と比べて、話し方が妙に落ち着いている。言葉を選ぶというより、相手の反応を待ってから続きを ...
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息子に怖い話をしただけだった nc+
2026/07/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
夜の寝かしつけは、いつも同じだった。 絵本を一冊読んで、電気を消して、それでも眠れない日は適当な作り話をする。息子は小学生で、怖い話が好きだった。怖いと言いながら、最後まで聞きたがる。だからその日も、 ...
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それは人に見えた nc+
2026/07/22 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
彼女が大学生だった頃に付き合っていた男の話を、別れてから何年も経ってから聞いた。 彼のことを、彼女は最後まで「目が悪かった人」と呼んでいた。視力の話ではない。検査をすれば両目とも一・五は出る。眼鏡もコ ...
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呼ばれた。 nc+
2026/07/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
最初は、音だけだった。 意味はなかった。ただ、空気が少し震れて、その震れが自分の輪郭に触れた気がした。 次に、繰り返された。 同じ音。少しだけ抑揚がついて、今度は確かにこちらを指していた。 それが、自 ...
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昼に帰ってくる村 nc+
若い頃の顧問が一人で中国山地を歩いたときの話だ。 昔は村や集落が点在していたが、今では地図から消えた名前ばかりになった山域で、彼は廃村の痕跡を写真に残すつもりだった。古い地図と新しい地図を突き合わせ、 ...
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縁側の席 nc+
田舎で聞いた話だ。 在宅介護の仕事をしている友人がいる。担当区域は山に近い集落で、一人暮らしの高齢者の家を巡回している。中でも山際ぎりぎりに建つ一軒家に住む爺さんは、長く無口な人として知られていた。挨 ...
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焼けない魚 nc+
山に入ったのは、ただの渓流釣りのつもりだった。 職場の同僚で、休日になると一人で山に分け入る男がいる。人付き合いが悪いわけではないが、釣りの話になると急に口数が増える。誰も知らない沢を見つけるのが楽し ...
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客一名 nc+
廃線の駅に泊まったのは、予定ではなかった。 学生の頃、バイクで一人旅をするのが好きだった。地図に印を付けず、走っていて気になった道にそのまま入る。夕方になれば林道脇や河原にテントを張り、朝になれば何事 ...
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何度目の十月二日 nc+
2026/07/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
時空の歪みタイムリープに成功したけど質問ある? そう書き込んだ瞬間のことは、よく覚えていない。 焦っていた、という感覚だけが残っている。手が震えていたのか、キーボードを叩く音がやけに大きく感じられた気もする。 ...
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一合と三本 nc+
2026/07/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
祖母はいわゆる「みえる人」だった。 子どもの頃、私はその祖母から、夜ごと聞かされる怖い話や不思議な話を子守唄代わりに育った。その中でも、今もはっきり覚えている話がある。 商売人冥利につきる話だと、祖母 ...
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手が足りた日 nc+
2026/07/14 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
私の祖母はいわゆる見える人だったらしい。 そう自分で名乗ったことは一度もないが、おばあちゃん子だった私は、折に触れて祖母の口から、怖い話とも不思議な話ともつかない出来事を聞かされて育った。これは、その ...
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座ってはいけない場所 nc+
山に分け入って歩いているうちに、思っていた以上に足が重くなった。 天気は悪くない。風もない。だが距離の感覚だけが狂っていて、いつの間にか、ここまで来ていたのかと何度も立ち止まった。 少し開けた場所に、 ...
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一時三十分 nc+
2026/07/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
その日は、特別なことは何もなかった。 部活もなく、補習もなく、夜は家でだらだらテレビを見て、十一時前にはベッドに入った。ただそれだけの一日だった。 当時、俺の部屋には二段ベッドが置いてあって、下が俺、 ...
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聞くだけの存在 nc+
2026/07/11 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
昔、中学生くらいの頃の話だ。 その頃、私は夜が苦手だった。暗いのが怖いというより、静かになるのが嫌だった。家が古く、夜になると音が途端に減る。遠くを走る車の音も消え、風が止まると、世界から自分だけが切 ...
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踝から先 nc+
学生の頃、妹と向かい合って話をしていた。 他愛のない会話だった。試験がどうとか、友達がどうとか、そんな内容だったと思う。 途中で、妹が急に黙った。 声を止めたというより、思考そのものが止まったような顔 ...
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あっちの方 nc+
山で獲物を追うことは、山の内側に踏み込むことと同義だったと、あの猟師は後年になってから口にしたそうだ。 話を聞いた老人によれば、それは昭和の初め頃、まだ銃よりも勘と経験が物を言った時代のことだという。 ...
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確かにうまかった nc+
大学生だった頃、私は一人で泊まりがけの登山に出かけた。 人と予定を合わせるのが面倒だったし、知らない山を一人で歩くことに、妙な解放感を覚える年頃だった。 初めて入る山域だったため、地図を何度も確認しな ...
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声を覚える nc+
その山は、会社の所有地だった。 境界杭も測量図も揃っている。立ち入り禁止の札も立っている。だが、地元では昔から「あの山は人のものじゃない」と言われていた。誰が言い始めたのかは分からない。ただ、木を伐る ...
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描かれたのは誰か nc+
2026/07/06 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
青空文庫ある国に、腕は比類なく、気性だけが歪んだ絵師がいた。 殿の御用を務める身でありながら、媚びもへつらいもせず、命じられた題に対しても一切の妥協を許さなかった。その態度は、忠誠というより挑発に近かった。 ...
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わたしじゃない nc+
山に入ったのは、命日が近かったからだ。 理由を聞かれればそう答えるしかないが、実際には自分でもよくわかっていなかった。家にいれば、遺影と線香と、触れることのできない過去だけが静かに増えていく。外に出れ ...
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使われない四〇二号室 iwa+
2026/07/05 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
志那羽岩子間取り図には、確かに載っている——怪談『使われない四〇二号室』 ——出版予定 原稿 一部公開 間取り図には、確かに載っている。契約書にも記載がある。だが、そのドアは、どこにもない。 廊下の壁は、四〇一 ...
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トンキュー nc+
夜中に目が覚めた理由を、いまだに説明できない。 登山の帰り、山中のロッジに泊まった夜のことだ。標高はそれほど高くなかったが、周囲は完全に山に囲まれていて、街灯もなく、夜になると建物の外は闇そのものにな ...
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山にいるあいだだけ nc+
母は山が好きだった。 登山というほど本格的なものではなく、地図に名前が載るか載らないかの低い山や、地元の人が散歩がてら登る程度の場所を、季節ごとに選んで歩く。そのたびに私は連れ出された。幼いころの話だ ...
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一緒に下りてきただけ nc+
親父がこの話をしたのは、酒が入った席でも、誰かに聞かせるためでもなかった。 夜中、居間で古い地図を広げていたとき、独り言のようにぽつりと漏れた。 「……あれは幻覚じゃない」 それだけ言って、しばらく黙 ...
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見えなかったものの周囲 nc+
自分が十歳の時の話だ。 県庁所在地に近い場所で生まれ育ったが、母方の実家は同じ県とは思えないほど山深いところにあった。冬休みや夏休みになると、決まって数日そこへ預けられた。山に囲まれ、家の裏はすぐ雑木 ...
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名前だけが先に有罪になった nc+
旧姓の私の名前は、何度見ても妙に角が立っている。 画数が多いわけでも、読みにくいわけでもない。ただ、並びが強すぎると占い師は言った。 最初にそれを聞いたのは、駅前で声をかけてきた印鑑売りだった。最初は ...
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その日は、鍵がかかっていなかった nc+
屋上に行ったのは、逃げた結果だった。 小学生の頃、私はいじめに遭っていた。理由は覚えていない。覚えていないということだけは、今でもはっきりしている。理由がないまま、教室にいることが苦痛になり、ある日、 ...
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見返しただけ nc+
2026/06/28 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
五年勤めた木材加工工場が移転することになったのは、特別な事情があったわけではない。 老朽化とコストの問題で、より広い敷地を安く借りられる場所が見つかった。それだけの理由だった。 移転先は、かつて大きな ...
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出迎えたもの nc+
2026/06/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
実家で飼っている猫の話だ。 その猫は、私が当時アルバイトしていた職場で捕獲された。野良として処分される寸前だったところを、引き取った。名前はマコト。雄で、生後半年ほどだった。 マコトは極端に人見知りを ...