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音のない海 nc+
2026/03/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
祖父母の家は海に近かった。 家を出て五分ほど歩き、古いトンネルを抜けると海沿いの道に出る。そこからさらにもう一つトンネルを抜けた先に、ちょっとした砂浜があった。観光地というほどではないが、民宿がいくつ ...
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外堀 nc+
2026/03/22 -短編, ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間, n+2026
あの年の初夏の匂いは、雨上がりのアスファルトに、印刷所から持ち帰った新刊のインク臭が混じった、あの甘ったるい湿気だった。 帰宅して靴を脱ぐと、床板がわずかに軋み、室内の空気が一拍遅れて身体にまとわりつ ...
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母の再婚相手 nc+
2026/03/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
今でも、宅配便の段ボールが擦れる音を聞くと、喉の奥に金属の味が戻ってくる。 梅雨の終わり、部屋にこもった湿気とインクの匂いが混ざり合い、息を吸うたびに肺の内側がじっとりと重くなっていた頃の感覚だ。 当 ...
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更新者不明 ncw+
2026/03/20 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
冬の昼下がりだった。 外はよく晴れているのに、部屋の中だけが薄く灰色で、カーテンの隙間から差し込む光がモニターに反射し、文字がにじんで見えた。暖房は入れている。だが、指先だけが冷たかった。 職探しをし ...
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百円コーナー nc+
今でも、紙の匂いを嗅ぐと喉の奥がひやりとする。 インクと埃が混ざった、古本屋特有の匂いだ。夕方の散歩で、私はその店の軒先に立った。西日がガラスに反射し、棚の背表紙が鈍く光っていた。 十年ほど前、私は同 ...
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🚨オオカミ少女は実在したのか? インドと鹿児島、ふたつの《獣の姉妹》が暴く百年の嘘 nc+
「人間は愛で人間になる」? 小学生の頃に泣いたあの話、実はほぼ捏造だった件 1920年、インドのジャングルでオオカミと暮らす2人の少女が保護された。四つ足で走り、生肉を貪り、闇夜に目を光らせる「オオカ ...
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塀の向こうの猫 ncw+
2026/03/18 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
上手く説明できる自信は、正直ない。ただ、あれは確かに見た。 今から二十年ほど前のことだ。当時住んでいた家の近所で、古い家屋の解体工事が行われていた。建物そのものはすでに壊され、更地になっていたが、なぜ ...
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誰が欲しがった ncw+
2026/03/17 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
夜中の作業というものは、時間の感覚を鈍らせる。 針がどこを指しているのか分からなくなり、疲労と集中が同じ重さで混ざり合う。 あの夜も、たぶんそういう状態だった。 スパコミ前日の夜、私は友人Aの部屋に泊 ...
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空いている場所 ncw+
二年前のことだ。昼食をどうするか考えているうちに、急にモスバーガーが食べたくなった。 理由はない。ただ、あの緑の看板と、包み紙を開くときの湿った音が頭に浮かんだ瞬間、他の選択肢がすべて消えた。 自転車 ...
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在庫が塞いでいた部屋 nc+
2026/03/15 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
同人誌にまつわる、妙に後味の悪い話。 昔、同人界隈ではそこそこ名の知れた、いわゆる壁大手だった人がいた。当時は商業もやらず、完全に趣味で18禁オンリー。イベントのたびに刷る部数も多く、在庫の量が尋常じ ...
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焚き火 nc+
2026/03/14 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
焚き火を囲んでいたら、来た。 長野県の、スキーバスが転落した湖のほとり。 事故から何年も経っていて、場所も対岸側だったから、 「まあ大丈夫だろう」と、バーベキューをした。 片付けが終わって、残り火の周 ...
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撃っても残らなかったもの ncw+
囲炉裏のそばで爺ちゃんがこの話を切り出すと、部屋の空気がわずかに湿る。 火の爆ぜる音が遅れて耳に届き、天井の梁の影がゆっくり伸びる。その間、聞く側は無意識に息を整える。いつからか、それが癖になっていた ...
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通っているもの ncw+
祖父が若い頃、山で仕事をしていたという話を、私は何度も聞かされてきた。 酒の席でも、正月の炬燵でも、話は決まってそこから始まる。語り口も、山に入る時刻も、守るべき決まりも、ほとんど変わらない。ただし、 ...
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最初に見えた人 nc+
2026/03/11 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
湿り気を含んだ初夏の風が窓から入り、カーテンがわずかに揺れていた。 深夜に近く、部屋には時計の秒針の音だけが残っていた。 その女性――仮にAさんとする――の話し方に、誇張はなかった。ただ、言葉の切れ目 ...
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🚨少し遅れている iwa+
2026/03/11 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
志那羽岩子午前二時ちょうどに、毎晩、非通知の電話が鳴った。 出ても、相手は何も言わない。 最初の二晩は、それだけだった。 三日目の夜、受話器の向こうで水の音がした。 細く、切れずに落ちつづける音だった。 そのあ ...
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背中の重み ncw+
2026/03/10 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
その店は、地下へ続く階段の踊り場に立った時点で、すでに空気が重かった。 酸化した油と、安煙草の煙が混ざり合い、澱のように沈殿している。換気が機能していないというより、ここでは匂いが逃げるという発想自体 ...
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白いワンピースの母娘 nc+
俺が大学二年の夏、大分に戻っていた頃の話だ。 福岡の大学に通っていたが、長期休みになると決まって地元へ帰った。理由は単純で、地元には時間を同じ速度で持て余している連中がいたからだ。 昼間はコンビニの駐 ...
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場所がわからなくなっただけ ncw+
2026/03/08 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
二年ほど前、私は地方の学校に通っていて、敷地内にある古い女子寮で暮らしていた。 鉄筋造りではあったが、築年数はそれなりで、夜になると配管が鳴き、壁の奥を水が流れる音が時間差で響いた。人の気配が消えた後 ...
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川の持ち主が戻る日 nc+
2026/03/07 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
インドネシア人の友達、Sから聞いた話だ。 彼の実家の近くには、大きな川が流れている。 地図で見ればそれなりの規模だが、実際に近づくと拍子抜けするほど穏やかで、 岸のあたりは浅く、流れも緩やかだという。 ...
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🚨認知バイアスの正体、脳じゃなかった説 nc+
2026/03/07 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 都市伝説, n+2026, オリジナル作品
「バイアス」って言葉は、今ではただの心理学用語みたいに扱われてる。 人間には考えの癖がある。物事を都合よく見る。損を嫌がる。先に信じた説明に引っ張られる。そういう話だ。 でも、昔からネットの一部では、 ...
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忘れたはずの色 nc+
2026/03/06 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
幼稚園に入る前くらいまで、私には人の顔が見えていなかった。 そう言い切りたいが、本当はもう少し曖昧だ。 見えていなかったのか、見ていなかったのか、自分でも区別がつかない。 少なくとも、今のように「顔」 ...
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瘤 nc+
盆栽サークルで知り合ったあの爺さんが、湯呑みを両手で包み込みながら語った声の湿り気が、妙に耳から離れない。 爺さんが山に入りたてだった頃の話だという。 銃の重みも、獣の気配も、まだ身体に馴染みきらない ...
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おはようございます nc+
2026/03/04 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
会社の先輩と、同じ地元だと知ったのは入社してしばらく経ってからだった。 意気投合して飲みに行き、地元の怖い話をしようという流れになった。 話題になったのは「青い○○の家」だった。一家心中した家で、坊さ ...
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押し出された男 nc+
2026/03/04 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
先日、車で人を轢きそうになった。 正確に言うと、「人が飛び出してきた」のではない。 押し出された。 その違いに気づいたのは、すべてが終わってからだ。 その日は、特別なことは何もなかった。 仕事帰り、夜 ...
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帰りたくなる nc+
2026/03/03 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
もう2~3年以上前になるかしら。 以前行き付けだったゲーセンは、なぜだか知らないが必ず10時に閉店してた。 元々寂れた店じゃあなかったし、大学の近くだったせいか夜でも客は常にいた。 それでも親爺はわざ ...
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夜にだけ長くなるトンネル nc+
2026/03/03 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
Aの家は、I山の中腹にある。 俺の家はそのふもとだ。地図で見れば直線で五キロほどしか離れていない。だが実際に行くには、山をぐるりと回る道を使うしかなく、十キロ以上かかる。 泊まりに行く前日、Aに地図を ...
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座席の境界 nc+
2026/03/03 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
その日は、ただ疲れていただけだった。 珍しく電車に乗った。 いつもは車移動か、せいぜい徒歩圏内で済ませる生活だが、その日はどうしても電車を使う必要があった。 時間帯は夕方。帰宅ラッシュの少し手前で、車 ...
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おんぶの位置 nc+
2026/03/03 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
火葬場で拾骨をしているときだった。 骨壺の前に立った瞬間、急に肩が重くなった。痛みはない。ただ、何かがのしかかっている。ちょうど、人を一人おぶったときの重さに近い。 最初は気のせいだと思った。立ちっぱ ...
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You opened it. nc+
2026/03/02 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
1990年10月。ミシガンの大学に留学していた頃の話だ。 あの頃、学生はとにかくレポートを書かされた。ラボには五十台ほどのコンピューターが並び、夜になるとほぼ満席になる。ブラウザは《Mosaic》。検 ...
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砂嵐の予告 nc+
2026/03/02 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
中学生の頃、眠りに落ちる直前に、必ず見る映像があった。 夢と呼ぶには浅すぎて、現実と呼ぶには輪郭が曖昧な時間帯。目は閉じているのに意識はまだ起きていて、体だけが先に沈んでいく。思考がほどけ、言葉が形を ...
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ベランダの外 nc+
2026/03/01 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
住んでいる場所の「音」に、人はすぐ慣れる。 車の走行音、遠くの踏切、夜中のサイレン。 最初は気になるのに、いつの間にか生活の一部になる。 それが、どれだけ異常な音でも。 俺が住んでいた学生アパートは、 ...
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入ってはいけないサークル ncw+
2026/02/28 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
高校時代の担任は、普段ほとんど自分のことを話さない人だった。 淡々としていて、余計な雑談をしない。生徒との距離も一定で、踏み込みすぎず、突き放しすぎず、どこか線を引いたまま教壇に立っている。感情の起伏 ...
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🚨無印現場監督・清助くん物語【昭和レトロ/現場にまつわる怖い話】nc+
ポケットの中の川砂 ポケットの中にはいつも川砂が入っていた。 現場を歩くたびに靴の隙間から砂が入り込み、いつのまにかポケットに溜まる。夜、タコ部屋のような寮に戻って作業ズボンを脱ごうとすると、ジャラジ ...
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空車の助手席 nc+
2026/02/27 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
ポケモンGOが出た頃、俺は東京に住んでいた。 あの夏の東京は、夜の街に「目的」を増殖させた。終電が過ぎても人が歩いている理由ができて、深夜の路地の息づかいが少しだけ明るくなったような気がした。 俺もそ ...
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血の盆 ncw+
2026/02/26 -中編, 山にまつわる怖い話, n+2026
ネットで有名な怖い話その村の夏は、いつも腐った水の匂いがした。 盆地に溜まった湿気が逃げ場を失い、夜になっても空気は重く皮膚に絡みつく。八月に入ると風は止み、呼吸をするたび肺の奥に濁ったものが沈殿していく感覚があった。十 ...
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婚姻届の名前 ncw+
2026/02/25 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
深夜二時を回った部屋の空気は、水を張ったまま忘れられた水槽のように重く澱んでいた。 換気扇が古びたベアリングを擦る低い唸りを続け、その単調な振動だけが耳の奥に貼り付いて離れない。テーブルの上には婚姻届 ...
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記入者は誰ですか? iwa+
放課後の教室に、わたしはひとりで残っていました。 たぶん、ひとりだったと思います。 みんなはもう帰ったはずです。 でも、さっきから変な感じがしています。教室がいつもより少し広いというか、音があまり響か ...
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もじもじ社 nc+
2026/02/25 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
ショートショート新しい就職先に選んだのは、「もじもじ社」という会社だった。 ビルの入口にはその四文字だけが貼られている。業務内容は一切説明されなかった。ただ面接で一つだけ言われた。 「目立たない方が向いています。」 ...
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K村の神隠し nc+
2026/02/24 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
「神隠し」って言葉は、いまどき軽く使われがちだ。 迷子になった子ども、山で消えた登山者、都会で連絡が途絶えた人。 でも田舎の村でその言葉が出るときは、冗談じゃ済まない。 それは「説明の付かない空白」を ...
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弁当箱が空になるまで ncw+
2026/02/23 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
子どもの頃、祖母の畑仕事についていくのは退屈だった。 大人が黙々と土をいじる時間は、子どもにとっては途方もなく長い。太陽は容赦なく照りつけ、蝉の声は頭の中まで入り込んでくる。やることがない。だから俺は ...
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返事をしないこと iwa+
2026/02/22 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
志那羽岩子知人が体験した話として聞いた。四年ほど前だという。 その知人は、建物の裏側を見るのが好きだった。豪華なエントランスよりも、客が通らない通路の方に興味を持つ。どこがどう繋がっているのか、それを把握してい ...
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祖母の手が消えた ncw+
2026/02/22 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
俺が四、五歳のころ、親に預けられると決まって祖母の家だった。 祖母はよく笑う人で、笑うたびに目尻に刻まれる皺が、そこにいるだけで大丈夫だと教えてくれるようだった。子どもにとっての祖母は、場所そのものだ ...
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ここに にいます iwa+
2026/02/21 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
志那羽岩子同期入社の建築士——几帳面で読書家の女が、珍しく私の席まで来て言った。 「変な部屋を見つけたの」 事故物件ではない。事件の記録もない。ただ、いられない。誰も長くいられない。そう言う。 彼女と夫は三か月 ...
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花火のない夏祭り nc+
2026/02/21 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
夏祭りの記憶は、ふつう甘ったるい。 焼きとうもろこしと汗、子どもの手を引く大人の熱、遠くで鳴る太鼓の腹の底を揺らす音。でも俺のそれは、どうしても「空」を見上げられない。 あの年、親戚一同で花火大会に行 ...
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押し入れの奥はまっすぐ《月うさぎ9》iwa+
たぶん、もう分かってきました。 怖いって思ってたのは、最初だけでした。 押し入れの音も、丸も、影も、全部。 いまは、少し違います。 押し入れの中で動いてるのは、何か悪いものじゃないです。 たぶん、ずっ ...
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死脈に咲く哄笑 nc+
2026/02/20 -中編, 家系にまつわる怖い話, n+2026
消毒液と腐った果実が混ざり合ったような、病院特有の重たい空気が、病室の低い天井に澱んでいた。 窓の外は鉛色の曇天で、湿気を含んだ風が時折、ガラスを微かに震わせている。 祖父の最期を看取るために集まった ...
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思っただけ《月うさぎ8》 iwa+
眠れません。 最近、夜が長いです。長いっていうか、終わらない感じです。 目を閉じると声がします。耳じゃなくて、頭の奥のほうです。 最初は夢だと思いました。 でも、起きてても聞こえます。ちゃんと。 声は ...
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✨️本当のあなたに還れ iwa+
駅前の雑居ビルの五階に、その団体の事務所はある。 表札には「再起支援コミュニティ《灯》」とある。宗教法人ではない。セミナー団体でもない。表向きは「人生の再設計を支援する市民グループ」だ。 最初は無料相 ...
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峠の記録データ nc+
2026/02/19 -中編, 山にまつわる怖い話, n+2026
ネットで有名な怖い話冬の入り口に差し掛かった、十一月の半ばだった。 暖冬の予報通り、その夜は季節外れの生温い風が吹いていた。アスファルトに染み付いた油と、枯れ葉の腐臭が混じり合った独特の匂いが、鼻腔の奥にへばりつく。私は ...
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障子の呼吸《月うさぎ7》 iwa+
なんか、最近、自分が変なんです。 変、って言い方も変で、本当はずっと前からだったのかもしれないけど、気づいたのが最近というだけで。頭の中が、薄い膜みたいなもので包まれている感じがします。外の音も、家族 ...