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四毒より怖いもの iwa+
体を壊したのは、パンじゃなかった。 「これ体に悪いから絶対食べない」 そう言っていた人間が、逆に体調を崩していった話だ。 四毒。 小麦、砂糖、植物油、乳製品。 ここ数年で一気に広まった言葉だ。 抜いた ...
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最後のオナカマ iwa+
山形の内陸、雪に閉ざされる町に、最後のオナカマがいると言われていた。 「もうやめたはずだ」と皆が言う。だが、人が死ぬと、夜中にだけ灯りがともる家がある。呼ばれた家族しか、その戸を叩けない。 祖母が亡く ...
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土の匂いのする末子 iwa+
その家は、いつからか「陽の射さぬ家」と呼ばれていた。 三代続けて男子が生まれず、家の中には絹の擦れる音と、低く湿った女たちの声だけが満ちている。大工の名跡は残っているが、先代の残した借財が梁のように重 ...
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地下一階の階段 nc+
2026/02/18 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
三十年前の夜の記憶を辿るとき、まず私の鼻腔を突くのは、あの特有の消毒液の匂いだ。 それは単に清潔であることを示す記号ではなく、生と死が極めて事務的に、かつ無機質に処理されている場所特有の、鼻の奥がツン ...
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夜に名前を呼んだだけ《月うさぎ6》 iwa+
今日は、初恋の人のことを書きます。 たぶん、これがいちばん変かもしれません。 小学五年のとき、好きな人ができました。 同じクラスで、背が高くて、笑うと目が細くなる人でした。 放課後、よく家に来ていまし ...
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山形の民間霊能者「オナカマ」とは何か nc+
山形県の「オナカマ」は、主に村山・最上を中心に確認される、盲目女性を担い手とする口寄せ(死者の呼び寄せ)・加持祈祷・卜占などの「巫業(ふぎょう)」の担い手である。 ※PDF資料⇒山形県における「オナカ ...
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切ってはいけなかったもの ncw+
十歳の頃、私はある事情で二年間、山奥の祖父母の家に預けられた。 理由は聞かされなかった。ただ、ある日突然、最低限の着替えだけを詰めた鞄を持たされ、電車とバスを乗り継ぎ、最後は祖父の軽トラックに揺られて ...
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壺の中の借金《月うさぎ5》 iwa+
おばあちゃんのことを書きます。 あまり書きたくないです。 でも、たぶん、ここまでの話と関係があると思います。 先週、おばあちゃんが急に亡くなりました。 家で倒れて、そのままでした。 通夜も葬式も終わり ...
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壺の音がする家《月うさぎ4》 iwa+
今日は、家のことを書きます。 学校のことより、たぶんこっちのほうが本当は怖いです。 うちのおばあちゃんは、昔からある団体の信者です。 宗教って言うとすごく怒ります。 「これは愛の集まりなの」「救われる ...
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川辺の赤いお守り nc+
山は昼と夜で顔を変えるが、あの時歩いていたのは、昼間なら何の変哲もない低い尾根の裏側だった。 舗装もない獣道に、古い杉の葉が積もり、踏みしめるたびに乾いた音と湿った音が混じる。月は雲に隠れ、光は頼りな ...
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三度目の拍手 iwa+
2026/02/16 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
志那羽岩子これは、映像制作を生業にしている知人から聞いた話だ。 彼の同僚に、三十代半ばの編集担当者がいた。几帳面で、締切を破ったことがないことで知られていた男だ。普段は二人一組で現場に入るのだが、その案件だけは ...
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静止した午後 nc+
その場所には、特有の「重さ」があった。 重力というよりは、湿気を含んだ気圧が、皮膚の表面に絶えずへばりついているような感覚に近い。 私が通っていた大学は、関東平野の縁にある丘陵地帯を強引に切り拓いて建 ...
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図書室の丸い目《月うさぎ3》 iwa+
学校であったこと、ちゃんと書きます。 変だったらごめんなさい。 最近、少しだけ、頭の中の順番が入れ替わっている感じがします。 今日も放課後、図書室に残りました。 友達は部活で、私は帰る理由がなかったか ...
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コーポ・サツキ二〇三号室 nc+
2026/02/14 -中編, 不動産・物件の怖い話, n+2026
梅雨の走りのような、粘り気のある雨が降る午後だった。 埼玉県の外れ、国道から一本入った路地に建つ「コーポ・サツキ」は、名前の響きとは裏腹に、昭和の終わりに取り残されたような薄墨色のモルタル二階建てだ。 ...
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三十一人目の出席番号《月うさぎ2》 iwa+
担任のことを書きます。書かないほうがいいのかもしれません。でも、たぶん、書かないほうがよくない気がします。 うちの担任は国語の先生です。三十代くらいの女の先生で、静かな人です。怒鳴ったりはしません。声 ...
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チョコを食べなかった日のこと nc+
2026/02/14 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
その話の舞台は、姉がまだ独身で働いていた職場だ。 語ってくれたのは、私の姉……ではなく、姉の友人だった人物のことを姉から聞いた私であり、ここに書くことはすべて、私が姉から受け取った形の「伝聞」に過ぎな ...
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コーポ・サツキ二〇一号室 ncw+
2026/02/13 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
不動産管理の仕事をしていると、人の生活が発する匂いに敏感になる。 新築の建材が放つ刺激的な化学臭、長く住まわれた部屋の壁紙に染み付いた煮炊きの油の匂い、ペットの排泄物が床板の隙間で乾いた饐えた匂い。そ ...
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消えた中学生の投稿公開《月うさぎ1》 iwa+
志那羽岩子です。以下の投稿をした者です。 保存された行 iwa+ この話を公開するかどうか、正直に申し上げて長いあいだ迷っていました。というのも、これは私自身の体験ではなく、十数年前に個人が運営してい ...
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壁一枚ぶんの生活音 nc+
2026/02/12 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
今でも集合住宅の廊下特有の匂いを嗅ぐと、喉の奥がひりつく。 洗剤と湿気と、どこか甘い埃が混じった、昼と夜の境目の匂いだ。 某不動産管理会社に勤めている知人がいる。 酒の席でも仕事の話はあまりしない男だ ...
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保存された行 iwa+
2026/02/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
志那羽岩子まだスマートフォンが当たり前ではなかった頃の話です。 インターネットには、今よりもずっと個人の気配が濃く残っていました。検索すれば何でも出てくる時代ではなく、辿り着いた場所が「そこだけの空間」である感 ...
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「たぶん、みつけられました」 iwa+
2026/02/12 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
志那羽岩子, 月うさぎ夜に変なことがあって、どうしたらいいかわからないので書きます。 うそじゃないです。ほんとです。 こわいです。 私の部屋の押し入れで、夜になると音がします。 最初はネズミかなって思いました。前に台所で見 ...
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半分、置いてきた ncw+
早朝、標高が千五百を少し超える程度の、名もなき里山へ足を踏み入れた。 足元に広がる腐葉土は、昨晩の雨をたっぷり含み、長靴の底を吸い込むような重さを持っている。湿った土の匂いに、早春の冷気が混じり、鼻腔 ...
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上を見るな nc+
2026/02/10 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
警備の仕事に就いたのは二十代の終わりで、深い理由はなかった。 昼の世界から一歩引いた場所で、規則正しく歩き、点検し、異常がないことを確認する。それだけで食っていけるなら悪くない、と思ったのだ。 その工 ...
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山が先に見ていた nw+
十一月の山形は、空気の角が尖っている。 登山口へと続く細い県道を車で進むほどに、フロントガラスの向こうの色は抜け落ち、湿った灰色だけが残った。目的地は、名前を地図で探してもすぐに指が止まるような、地元 ...
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通過した直後に立っている ncw+
2026/02/08 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
その話は、彼が酒の席でぽつりと漏らしたものだという。 誰に向けたわけでもない。卓上の灰皿の縁を、意味もなく指でなぞりながら、思い出すともなく語り始めたらしい。 季節ははっきりしない。ただ、夕方だったこ ...
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山は、つながっている nc+
一度だけ、妙な山の話を聞いたことがある。 語ったのは酒の席で知り合った男で、地元から遠く離れた場所に住んでいると言っていた。年末年始に帰省した折、昔のことを思い出したのだという。 その話の始まりは、今 ...
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副操縦士の席 nw+
2026/02/06 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
四連休を利用して、普段は億劫で手を出しもしない遠出を企てた。 集まったのは、俺とA、B、Cの四人だった。全員が免許持ちで、交代でハンドルを握る予定だった。目的地は、いくつもの県を跨いだ先にある鄙びた温 ...
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多様性脳 nc+
2026/02/05 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
脳科学における性差神話の否定 湿度計の針は六十八パーセントを示しているが、体感では飽和に近い。地下二階にある資料保管室の空気は、常に澱んでいる。埃とカビ、それに微量だが確実に存在するホルマリンの刺激臭 ...
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笑いの研究は笑えない nc+
2026/02/04 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
その部屋は、常に微温い泥のような空気に満ちていた。 大学院の研究棟、地下二階にある第三実験室。防音壁に囲まれた閉鎖空間は、換気扇が低く唸る音と、無数に積まれたハードディスクの駆動音だけが支配している。 ...
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押さえていた ncw+
2026/02/03 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
あれは高校二年の九月だった。 雨上がりのアスファルトから立ち上がる土埃の匂いを嗅ぐと、今でも視界が一瞬だけ暗む。鼻の奥に残るのは、青臭い稲と腐った水の鉄錆みたいな臭気だ。思い出したくないのに、身体のほ ...
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最終アクセス:昭和六十三年 ncw+
2026/02/02 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
十一月の半ばを過ぎたというのに、生暖かい雨が降っていた。 アスファルトを叩く雨音は粘り気を帯びていて、靴底から伝わる感触もどこか頼りない。埼玉県の西部、かつて街道の宿場町として栄えたその地区は、今でも ...
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見えなかった小屋 ncw+
あの夜の湿った空気の粘度を、今でも皮膚が正確に覚えている。 学生時代の野外学習で訪れた、山中の野外活動センター。古い木造の二階建てで、私たちは二階の大部屋に五人で雑魚寝していた。九月に入ったばかりだと ...
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地図にない滝 nc+
湿気を含んだ風が、首筋にまとわりつく。 六月の山は、生き物の匂いで満ちている。腐葉土が発酵する甘さと、若葉の青臭さ。その奥に、獣の脂のような重たい気配が混じって、肺の奥まで入り込んでくる。 登山靴の紐 ...
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霧の断層 nc+
2026/01/30 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
深夜の県境を跨ぐ山道というのは、どうしてこうも生き物の内臓に似ているのだろう。 車のヘッドライトが切り裂く闇はどこまでも濃く、アスファルトは湿って黒光りしている。カーブを曲がるたびに、老朽化したセダン ...
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第六班の行軍 nc+
2026/01/29 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
七月半ばの湿度は、皮膚にまとわりつく透明な粘膜のようだった。 標高八百メートルとはいえ、埼玉の山間部は夜になっても熱気が引かない。風が止むと、木々の呼吸がそのまま生温かい溜息となって谷底へ沈殿していく ...
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裏返りきるまで ncw+
2026/01/28 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
今でも、湿った羊毛と線香が混じったような匂いを嗅ぐと、内臓がずるりと下がる感覚に襲われる。 恐怖というより、生理的な拒絶に近い。喉の奥が引き攣り、身体が勝手に距離を取ろうとする。 幼い頃の私は、生きて ...
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罪の器 rc+4,976
2026/01/28 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
一月の冷気は、古いコンクリートの建物の隙間から容赦なく忍び込んでくる。 会場となったのは、地元でも長く続いているという割烹居酒屋の二階だった。階段を上がるたびに、古びた木材が軋む音と、煮染められたよう ...
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🚨未確認区画《読者参加型リライトコンテンツ》 ncw+154-0128
2026/01/28 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
読者参加型リライトコンテンツこれは、以前とある大型施設で夜間点検を担当していた人物から聞いた話だ。 彼はもうその仕事を辞めて久しい。待遇や人間関係に問題があったわけではない。ただ、ある一夜を境に、閉館後の屋内空間に入れなくなった ...
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川に流す日 nc+
2026/01/27 -中編, 人形にまつわる怖い話, n+2026
その日本人形が我が家に持ち込まれたのは、湿度計の針が九十パーセントから動こうとしない、梅雨の最中だった。 本家から譲り受けたというその代物は、長年の湿気と線香の煙を吸い込んだような、独特の酸っぱい臭気 ...
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右肩の祠 nc+
これは、昭和の終わり、湿度の高い記憶の底にある話だ。 一人の少年と、その両親。どこにでもある家族のドライブが、取り返しのつかない「儀式」になってしまった記録である。 今から三十五年ほど昔のことになる。 ...
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シミュラクラ現象 nc+
2026/01/25 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
今でも、あの時期の部屋を思い出すと、喉の奥がぎゅっと縮む感覚が蘇る。 安アパートの四階、北向きのワンルーム。梅雨が長引いていて、薄いカーテン越しの空はいつも灰色で、湿った光だけが床のフローリングに広が ...
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受話器の底で nw+
2026/01/24 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
三十年前、私はまだ十二歳だった。地主の家々が斜面に張り付くように点在する、あの盆地のような村の空気を、私は肌で憎んでいた。 晩秋の湿った土の匂い。祭りのたびに焚かれる薪の煙。そこに混じる、削れた古木の ...
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植木鉢の眼 nc+
2026/01/23 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
この話を打ち明けると、必ず周囲が黙り込む。 夜の空気には湿気が多く、肌に薄い膜を張るようにまとわりついていた。 ここは九州某県、海岸線からさほど離れていないため、潮の匂いと古びた店の黴の匂いが混ざり合 ...
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🚨看板の位置 nc+
2026/01/23 -短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, 後味の悪い話, ヒトコワ・ほんとに怖いのは人間, ほんとにあった怖い話, n+2026, オリジナル作品
その話は、音楽関係の知人から又聞きしたものだ。 本人は、もう誰にも詳しく話していないらしい。ただ、当時の空気だけは妙に正確に覚えている、と言っていたそうだ。 始まりは、ごく普通の長文メールだったという ...
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結び目の山 nc+
泥濘む記憶 今でも、雨の降る前の湿った土の匂いを嗅ぐと、不意に視界が歪むような錯覚に襲われる。 半世紀という歳月が過ぎても、私の身体の深層には、あの「庄原」の夜が黒い澱のように沈殿しているのだ。 五〇 ...
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山界の境界線 nc+
都会の喧騒を離れ、鬱蒼とした木々に囲まれた山道に足を踏み入れるとき、人は無意識のうちに境界線を跨いでいるのだという。そこは人の理(ことわり)が通用しない場所。神域か、あるいは魔境か。 私の手元には、山 ...
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泥の指跡 nc+
2026/01/20 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026, オリジナル作品
その人物――仮にAと呼ぶが――が打ち明けたのは、晩秋の夜に祖父の空き家へ泊まった時のことだった。 Aによれば、家に入った瞬間から「匂いが層になってまとわりつく」のだという。 人の体温が抜けた後の家は冷 ...
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不可視の加害者 nc+
2026/01/19 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
あれは小学五年生の夏だったか。 肌にまとわりつくような湿度と、油照りの太陽がアスファルトを焼く、典型的な盆地の午後だった。 私の住む町には、子供たちの間で「裏公園」と呼ばれる少し広い緑地があった。表通 ...
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第一デパートの個室 nc+
2026/01/18 -中編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026
すき焼きの匂いを嗅ぐと、今でも奥歯の奥が浮くような不快感を覚える。 醤油と砂糖が焦げる甘ったるい香りに、牛脂の重たい獣臭さが混じり合うあの匂い。それは私にとって、食欲をそそるものではなく、ある種の儀式 ...
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入らなかった理由 nc+
これは、大学時代の友人から聞いた話だ。 十年ほど前の夏、彼は実家に帰省していた。特に予定もなく、思いつきで釣りに行こうと思い立ち、地図を眺めていて目に留まったダム湖へ向かったという。地元でも釣り場とし ...