ネットで有名な怖い話・都市伝説・不思議な話 ランキング

怖いお話.net【厳選まとめ】

短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026

鍵の行き先 nc+

更新日:

Sponsord Link

高校の頃、暇な夜になると、行旅死亡人(こうりょしぼうにん)の告知サイトを眺めていた。

理由は特にない。怖い話を探していたわけでも、社会問題に関心があったわけでもない。ただ、眠れない深夜に、画面の向こうに並ぶ無名の死が、妙に現実感のない読み物として存在していた。それだけだった。

年齢、性別、発見場所、死亡推定日時。
そして、わずかな所持品の記述。

腐乱遺体、白骨化、身元不明。
どれも自分とは無関係な世界の出来事で、クリックすれば閉じられる距離にあった。

その日も、何となくページをめくっていた。
特定の地域を探していたわけではない。カーソルの動くまま、自治体名を辿っていっただけだ。

ふと、ある告知で指が止まった。

所持品の欄に書かれた名前。
それが、私の大叔父と同じ名前だった。

珍しい名前ではない。全国に何人もいるだろう。そう自分に言い聞かせた。それでも、胸の奥に小さな引っかかりが残った。年齢も一致している。発見場所は隣県。遠いが、ありえなくはない距離だった。

画面を閉じようとしたが、閉じられなかった。

その夜は、ほとんど眠れなかった。
確信はない。ただ、根拠のない不安だけが、じわじわと身体の内側に染み込んでくる。

朝になり、仕事に出る前の母に何気なく聞いてみた。

「そういえばさ、大叔父さんって最近どうしてるか知ってる?」

母は一瞬、動きを止めた。
それから、眉をひそめた。

「知らないわよ。もう何年も顔出さないし。葬式にも彼岸にも来ないし、ほんとに何してるんだか」

その言い方が、なぜか妙に現実的だった。
生きているとも、死んでいるとも断定しない言い方。

元々、その人はろくでもない人間だったらしい。薬に手を出し、他人の車を盗んでカーチェイスをしたこともある。家族の間では、いつ消えても不思議じゃない存在だった。

夏休みだった。時間はあった。
行ってみよう、と思ってしまった。

理由は説明できない。確認しなければ気が済まない、という衝動に近かった。もし違っていたら、それで終わりにできる。そう思っていた。

現地に着いて、すぐに分かった。

場所も、日時も、名前も、すべて一致していた。
ドンピシャだった。

行旅死亡人。
文字で見ていたときは、ただの制度上の呼び名だったそれが、急に生々しい現実として迫ってきた。

身元は、最終的にこちらで引き取ることになった。
診察券が所持品として残っていたが、転出届は出ているのに転入届が出されていなかったため、行政上の照合がうまくいかなかったらしい。

骨は、一族の墓に入れた。
ただし、その人だけ戒名がない。墓石にも名前が刻まれていない。

墓の前に立ったとき、妙な感覚があった。
確かにここにいるはずなのに、どこにも属していない。存在だけが宙に浮いているような感じ。

さらに、遺留品の中に、コインロッカーの鍵が一本あった。

どこのロッカーかは分からない。
番号も、駅名も、何も手がかりがなかった。

鍵だけが残り、中身は永遠に確認されない。

その鍵を見た瞬間、強い寒気がした。
まるで、その人の人生の続きが、まだどこかに閉じ込められているように感じたからだ。

それ以来、行旅死亡人のサイトは見ていない。

あのとき感じた、理由のないモヤモヤした不安を、もう一度味わいたくない。
知らなくていいことを、知ってしまった感覚。匿名だと思っていた死が、突然こちら側に踏み込んでくる感覚。

今でも、あのコインロッカーの中身が何だったのか、考えてしまうことがある。

金なのか、薬なのか、それとも、誰にも渡せなかった何かだったのか。

答えは出ない。
出ないまま、鍵だけが記憶に残っている。

死んだのに、終わっていない。
名前も、居場所も、完全には回収されていない。

行旅死亡人という言葉の意味が、本当の意味で分かったのは、そのときだった。

[出典:67 :本当にあった怖い名無し:2018/10/03(水) 21:38:14.88 ID:0JV3sm/b0.net]

📚 この怪談の続きは、Kindleで

伝聞怪談コンプリート合冊

サイト未公開の話を多数収録。Kindle Unlimitedなら追加料金なしで読み放題。

【合冊版】558ページ・100円のお得セットあり

伝聞怪談1 伝聞怪談2 既刊6冊

Sponsored Link

Sponsored Link

-短編, 奇妙な話・不思議な話・怪異譚, n+2026

Copyright© 怖いお話.net【厳選まとめ】 , 2026 All Rights Reserved.