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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2026

息子に怖い話をしただけだった nc+

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夜の寝かしつけは、いつも同じだった。

絵本を一冊読んで、電気を消して、それでも眠れない日は適当な作り話をする。息子は小学生で、怖い話が好きだった。怖いと言いながら、最後まで聞きたがる。だからその日も、軽い気持ちで応じた。

「ちょっと怖い話して」

即興で考えた。
大した話じゃない。夜になると起き出すものがいる、というありがちなやつだ。

「朝になるとさ、みんな起きるだろ。学校行ったり仕事したりするよな。でも夜になると、今度はオバケが起きるんだ。で、遊びに出る」

布団の中で息子がもぞっと動いた。
続きを促す気配だった。

「今日はどこの家に行こうかなーって、夜の街を歩いてる。明かりがついてる家を見つけるとさ、ここにしようって決める」

「……どこの家?」

「んー、このへんだな。あ、表札がある。○○って書いてある」

息子が小さく息を吸った。

「え、それって……」

「おじゃましまーすって、ドアを開ける。まず一階から見て回る。お、この部屋には犬がいるぞ」

「はなちゃんだ……」

声が少し震えた。
この調子なら、そのまま眠るだろうと思っていた。

「次の部屋はなんだろうな。誰かいそうだぞ」

「じじとばばかな……」

家の中をなぞるように、オバケは進んでいく。
あくまで遊びだ。怖くなりすぎる前に終わらせるつもりだった。

「よし、一階は見終わった。次は二階に行くぞー」

そのあたりで、息子は目を閉じた。
完全に話の中に入り込んでいるのがわかった。視点がもう、オバケの側にある。

階段を上る音を言葉でなぞり、二階の廊下に出る。

「ここは子供が遊ぶ部屋だな。おもちゃがいっぱいだ」

そのときだった。

「あれ?」

息子が目を閉じたまま言った。

「クローゼットの中に、赤い服の子がいるね」

一瞬、何を言われたのかわからなかった。
次の瞬間、背中に冷たいものが走った。

この話は、家の中を想像させるためのものだ。
見えていいのは、知っているものだけのはずだった。

「……もう寝ようか」

無理に声を作って、話を終わらせた。
電気を消して、布団を整えて、息子はそのまま眠った。

その夜は、それで終わった。
きっと想像が膨らみすぎただけだ。そう思うことにした。

それからしばらくして気づいた。

息子が、二階の遊ぶ部屋で一人で喋っていることがある。
誰もいないはずの時間に、誰かと会話をしているみたいに。

聞き耳を立てる勇気は、まだない。

[出典:115 :本当にあった怖い名無し:2018/07/08(日) 09:51:21.63 ID:G7Udal9I0.net]

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