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短編 奇妙な話・不思議な話・怪異譚 n+2025

記録できない夢 ncrw+233-0118

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夢の話をすると笑われるのが嫌で、ずっと一人で抱えてきた。

子どもの頃から、何度も同じ夢を見る。夢の中では確かに「またこれだ」と分かるのに、目が覚めると内容だけが抜け落ちる。残るのは胸を締めつける喪失感と吐き気と、こめかみに釘を打たれたような痛みだった。

去年、一度だけ勇気を出して手帳に書いた。線を外さないよう、細かい字で。引き出しにしまい、仕事に出て、帰宅して見返すと、その一枚だけが綺麗に破り取られていた。紙屑はどこにもない。代わりにカレンダーに赤い丸をつけ、「不思議夢」と書いた。

翌朝、カレンダーは数年放置されたように茶色くくすんでいた。赤丸も文字も霞み、触れると指にざらつきが残った。

引っ越しのとき、重たい本棚をどけると、壁の真ん中に自分の字が並んでいた。
「元の時代に帰りたい帰りたい帰りたい殺さないで戻して!戻して!!戻して!!!」
最初は爪先で書いたような小さな文字で、途中から鉛筆を折る勢いの殴り書きに変わる。下段には、見たことのない国の文字が蛇のように連なっていた。書いた覚えはない。夜中にあれを動かしたなら、私は何者なのか。

記録を残そうと携帯で撮った。シャッター音の直後に電源が落ちた。そばにいた親戚が一人、同じように画面を失った気がすると言った。電源が戻っても、写真はどこにもなかった。

引っ越し前、雑巾で壁を拭いたら、驚くほど容易く消えた。消えた途端、夢の残滓まで拭き取られたように頭が軽くなった。

それでも、ある日の記憶だけが抜け落ちない。心療内科の待合室で、真っ白なフリルの服に人形を抱いた女が、どこの国とも分からぬ言葉で歌っていた。旋律は綺麗なのに、耳の奥がざわついた。視線がこちらに移り、女は笑った。

「懐かしいでしょう。あなたが、昔」

言葉はそこで歌に溶け、別の声が混じった。意味は取れない。ただ、名前を呼ばれた気がした。母親らしき人が慌てて頭を下げていたが、謝罪の行き先は分からなかった。

それ以来、夢は一度も見ていない。胸の奥の空洞は埋まらない。カレンダーに囲った赤丸の跡だけが、いまも指先に残っている気がする。

[出典:789 :本当にあった怖い名無し:2011/07/25(月) 23:19:52.27 ID:Fykhyl2UO]

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